2015年06月19日

そこへ、全員を連れて行け。

十年前の僕が、こんなことを言ってたそうです。

 「批評家であるより視聴者であれ」

うちの後輩が何故だかその原稿(NHK講演会)を持ってて気恥ずかしくなりました。
いいこと言うたるぜ、という若さが目立ちますねえ。

意図は「お茶の間の感覚を忘れて、専門家しか分からない話をするな」
ということです。専門知識を捨てて馬鹿になれ、と言ってる訳じゃない。
十年ぶりぐらいにこの言葉を更新するとしました。


そこへ、全員を連れて行け。




あなたの意図する、高みやボトムや、感動や爆笑が、
「全員」に味わえるようにしてあげなさい。

全員が同じ所で笑い、
全員が同じ所で泣き、
全員が同じ所で同じようにハラハラドキドキし、
全員が同じ所ではらわた煮えくり返り、
全員が同じ所でやられた!となること。

それが映画やドラマを見る楽しみです。

色々なお客さんがいます。
客商売をしたことのある人なら知ってるはずです。
ほんとうに色んな所に目くじらを立て、
納得いかなければ烈火のごとく怒られます。

何故怒るのか、答えは簡単です。
あなたのゴールへ、あなたが連れて行けなかったからです。
あなたのゴールへ、あなたが強引に連れてったからです。

全てのお客さんを、一人も途中で取りこぼす事なく、
全く同じ深い感情へ連れて行きましょう。


片寄ったやり方じゃ一部の人しか連れて行けません。
急いでも遅くてもだめです。
全員の手を引いて、全員の顔をちゃんと見て。

それは、お遊戯のような幼稚な事をせよ、
ということではありません。
中学生のIQに合わせることでもありません。

あなたの信じる娯楽のレベルを下げては行けません。
あなたが降りるのではなく、
みんながあなたの所へ行けるようにするのです。上下じゃないんです。

普通の人が普通に楽しめる。
普通の人が夢中で楽しめる。
片寄った人もいつの間にかそこへ引きずり込む。
いつ見ても同じように引き込む。
どんな時代に見ても引き込む。
ちょっと見るだけだと思ってても最後まで見てしまう。

しかも全く新しい。


それが王道です。



そこへ、全員を連れて行け。


それが出来るのはあなただけです。
だからあなたは尊敬されるのです。

さあ、次はどこへみんなを連れて行く?
それはつくった?
そしてどうやって?


そこへ、全員を連れて行け。





あ、今の俺が100%出来てるとは思えないけど、次回こそは100%目指します。
十年経ったら、いいこと言うたるぜという若さが気になるだろうな。
posted by おおおかとしひこ at 04:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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