2015年06月19日

映画と漫画の違いは何か

漫画の実写化における、深い溝について考える。


リアルな人間のリアルな社会を前提とする実写は、
漫画的ではない。

漫画的とはどういうことだろう。
人間単体、人間関係、社会、その社会の常識に、
漫画特有のデフォルメが入っていることである。

漫画特有のデフォルメとは、
分析的なことは言えないが、とにかく漫画的なやつだ。
例えば。
無免許医が何故か医師会相手に喧嘩する、実は正義の味方
風属性を持つ者と火属性を持つ者と…
四天王を倒すまでボスにたどり着けない
変身する(仮面を被るのではなく、別人になってしまう)
七つの何かを集めたとき奇跡がおこる
男と男の無言の熱い友情
女子集団全員の仲良し
マジックアイテム
ある条件で無敵全能になる
うちのボスがラスボスだった
父が最強でその遺伝子が覚醒
イケメン転校生が何故か平凡な私が好き
などなど。

これは一種のファンタジーだという言い方もあるかも知れない。
それはリアル世界にはないだろ、
というラインがどこかにあると思う。

たとえば変身なら、
仮面を被るヒーロー(月光仮面やマスクオブゾロ)は、
とても漫画的だがギリギリ実写、
しかし肉体が変わってしまう仮面ライダーは漫画側。
マイフェアレディのように、
上流階級の教育で内面を改造するのは、
漫画チックなリアルか、リアルに入り込んだ漫画か、
人によって意見が分かれるか。
幽霊はどうだ。
リアルか、漫画か。
リアル派が押されている気がする。
脳内現象(統合失調症)としてリアル派が分派したかもだ。
運命は。
リアルにあるものか、完全な漫画か。


お話というのは、
どこか現実にファンタジーを持つことかも知れない。

それがリアル社会をベースにすれば実写になる。
(社会がまだ科学に暗ければ、幽霊や怨霊はファンタジーではなくリアルジャンルだろう)

リアル社会から遠いけど、
それをフィクションと認められる漫画的世界でのみ、
その漫画内でそれはリアルになる。


伝説の剛刀風林火山。
青銅剣ならリアル(日本だと弥生前期か、ヨーロッパならケルトの出土か)かも知れないが、
オリハルコンや木刀だと、漫画だろう。
しかし学ラン不良に似せた忍者ワールド内では、
リアリティーが成立している。
しかも数万年も戦ってるんだぜ!すげえ!

その違いだと思う。

民明書房は、中学生当時はリアルだと思っていた。
中学生のリアル観なんて、漫画的リアリティーの範囲内で事足りる。


人生をリアルに経験すればするほど、
漫画的なリアリティーはどこにもないことが分かってくる。
一見掃除のおじさんにしか見えない人が実は社長なんて会社はどこにもないし、
入社と同時にバリバリ活躍してスターになるやつはいない。
不倫とか修羅場ぐらいはあるだろうけれど。



映画と漫画の違いは何か。
ベースとなるリアリティーが、
リアルベースか、漫画チックベースかだろう。

何故実写化が成功しないかというと、
そのリアリティーの開きを埋められないから、
うまく変換できないからだと言える。


例えばマトリックスは極めて漫画チックな実写だった。
漫画的な映像表現に騙されずに見てみれば、
カンフーをダウンロードするだけで全能になる感じとか、
敵がパワーアップしていく感じとか、
盟友を奪還しにいく感じとか、
随所に漫画的なリアリティーが盛り込まれていて、
実写のリアリティーではないことが分かるだろう。


実写映画は、ひとつだけどんな嘘をついてもいい。
それは漫画チックなものでも構わない。
その代わり、
人間の内面、人間関係、社会、などは、
全てリアルベースでなければならない。

全てリアルベースではないもの、
複数の漫画チックなものがあるのが、
漫画の定義なのかも知れない。


映画と漫画の違いは何か。
我々がそれに接するときの、
ベースとなるリアリティーの違いだ。

ベースとなる感覚の違いだから、
表面上には現れない。
だから判定が難しい。
それらを上手く言葉に出来ないから、
他人と共有できず、議論も難しく、
従って実写化の際には、作り手の感覚に頼らざるを得なくなる。
実写化の失敗の多くの原因は、
作り手の感覚が鈍かったか、
船頭多くして船山に登ったか
(部分の感覚だけを闘わせて、全体にちぐはぐになった)
のどちらかだと思う。


逆にリアルな実写を漫画化してみるといい。
バードマンを漫画にしてみな。
「もっと漫画的なダイナミズムが欲しい」ってなるぜ?
実写と漫画の違いは、そのベースの感覚の差だと、僕は思う。

(言葉にしづらいので、堂々巡りっぽくてすいません)
posted by おおおかとしひこ at 07:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック