先日の編集で、これはいい例だと思ったのでメモ。
あなたの年表をつくる例題。
あなたという人生を、年表で記すことにしよう。
○○年に何があったか、まず出来るだけ詳しく書き出してくれたまえ。
最低でも年齢の数だけ行数をつくること。
職業履歴書的なことでもいいし、
人生の重大事件でもいいし、
深く傷ついたことでもいいし、
ハッピーなことでもいい。
○○事件、なんて知らない人が分からない書き方ではなく、
○○で○○して○○、みたいに短くまとめよう。
一年ひとつだけでなく、
重要な出来事や濃い年なら、何個もピックアップしていい。
たとえば僕の激動の大学時代ならこんな感じ。
1988(高三)大学入試失敗、一浪
FC版「ウィザードリィ」死ぬほどやる
K嬢とS嬢に大失恋。
1989(大一)京大工学部数理学科合格。
1990(大二)映画サークル「雪だるまプロダクション」に入る。
1991手伝い作品「welcome to the real world」でひと夏潰す。K嬢に失恋。
1992(大三)「Windy box」監督。
「プリティーウーマン」に衝撃を受ける。
1993(大四)Y嬢に大失恋。しばらく映画が撮れなくなる。
ついでに院試失敗、院浪。
1994(大五)コマ撮り実験映画「桜トンネル」を撮影。未編集。
1995(院1)「果てなき夏の物語」監督。
40日の過酷な撮影で52キロまで落ちる。
花火撮影を口実にC嬢とデート。A嬢に失恋。
1996(院2)「遠くて近い」監督。H嬢に失恋。
1997(社1)電通テック演出部入社。
初助監督現場は「たかの友梨ビューティークリニック」心のウサギ2。
これぐらいの精度で、
一年に一個以上イベントを書いていくだけで、
年齢の数だけ揃うだろう。
下準備はここまで。
さて、ここからが構成の本番。
一行単位で切り張りしてください。
一行一イベントとします。
以下の数字の分だけピックアップし、並べること。
課題1: あなたの人生を的確に表す、3行にしなさい。
課題2: あなたの人生を面白おかしく語れる、3行にしなさい。
(記事を追加して、年表を書き換えても可)
課題3: あなたの人生を的確に表す、10行にしなさい。
課題4: あなたの人生を面白おかしく語れる、10行にしなさい。
課題5: あなたの人生を的確に表す、8行にしなさい。
課題6: あなたの人生を的確に表す、13行にしなさい。
なかなかに難しいよ。
自分の人生のことだから、自分が一番良く分かってるよね。
それを切り張りだけで、「編集」して表現する課題だ。
まず三行。ほぼ無限の組み合わせだ。
誕生を一行目に使う?そしたらあと二つしかないぜ?
人生の大きなターニングポイント三つ?
自分の人生に一番影響を与えた事件三つ?
三つで通貫するテーマみたいなのはあった方がいい?
三つで展開してるように見せるほうがいい?
徐々に広がる感じがいい?
色々なパターンを作ってみよう。何種類か、何十か出来るかも。
この三行が自分の人生を一番的確に示すか?というチェックは、凄く迷う。
だからいい。
想像力を膨らませる余白を作るか、本質に入るかも迷う。
序破急みたいにストーリーになってる方がいいかも迷う。
課題1と2の違いは、
あなただけの中の納得と、
「他者から見たネタとしての人生」の違いだ。
内と外の視点の差を、体感してみよう。
自分だけの納得と、他人基準で面白おかしく語れることは、
違うことを痛感しよう。
次はそれを、それぞれ10で語る。
3行がログラインや三幕構成だとしたら、
10行はプロットを作ることに似ている。
3行の要素+7つの要素で作ってもいいし、
3行の要素を他の10の要素で作り直してもいいし、
混ぜてもいい。
ここで「取捨選択」を死ぬほどすることになる。
あれが入るのならあれは入れなくていいのか、
しかし数が増えすぎる、
だとすると何が代表的なのか、
一連の出来事にしたほうがいいのか、
全くバラバラな10にしたほうがいいのか。
いくつかは関連していくつかは飛び道具になるのか。
関連を何個まで入れるか。
例えば僕の人生なら、失恋史だけで10埋まる。いや足りない。
監督作品で10選ぶのすら難しい。CMだったら100以上あるし。200以上?
影響を受けた映画史10も難しいよね。
それらを上手く10にどう配分するかは、
「自分の人生を最も的確に示す」かどうかで決まるのだ。
これは悩むよ。
あ、これ、テキストエディタでやるのではなく、
手書き限定。
ペン一本、消しゴム禁止。
白紙を何枚も何十枚も費やすのがいいです。
手書きでリストアップしていくことで、
平面的な年表が、頭の中で立体になるのです。
清書をして間違えたらまた綺麗に書くこと。
何度も清書することで、頭の中の構造が整理されるから。
ラフ案でどっちがいいかを比較して、
最後に十行清書して、
やっぱ別のパターンも清書して、
どっちがいいか悩んだり、
あるいは別パターンを思いついてしまったり、
そういう経験があなたに構成力をつけていくことになるから、
消しゴムやデジタルは禁止。
この試行錯誤の経験が実になるのだ。
10の候補に上がった15ぐらいをカードにしたほうが早いと気づいたら、
紙を切って手書きでカードをつくり、並び替えをやってみるといい。
更に新情報。
「時系列に並べるルールはない」。
ある程度の時系列はあるほうがいいが、
時系列をばらしたほうが良い10行になるのならそれもよし。
さあ構成が変わってくる。
どういう10を選び、どういう順番で並べるか。
またぐちゃぐちゃに書いた紙が増えるだろう。
それを手書きで頑張るのがコツだ。
何度も何度もやるうちに、
ある程度頭で処理できることと、
手で処理しないと出来ないことの境界線が分かってくる。
このために膨大に書く。
膨大に書いてれば、「よし書いてみよう」「よし作ってみよう」
のハードルが低くなる。
手書きのいいところは、
矢印や挿入や入れ換えを記号一個で自由に出来ること。
あとで清書するにしても、今頭の中で再構築するために、
「手で考える」のである。
この経験が積めるのがこの課題のいいところだ。
さて、自分の10が出来たら、
今度は他人基準での10だ。
手で考えた人は、ここからが早くなる。
テキストエディタだと、また一から同じ工程数かかるのだが、
手書きだと同じ工程数を踏まなくていい。
頭の中にある程度構造が出来ているからだ。
デジタルに頼ると、ここで差がつく。
さて、二つの10が出来たら、
それらを、8と13に増減する課題だ。
減らすのはただ減らすだけか?
ペアのひとつを落としたら、もうひとつも落として別の奴を入れたほうが良くないか?
それともそのひとつはあった方がいいのか?
ただ二つ消しただけでは、ただ痩せるだけだ。
10と8が同等に見えるように、8をアレンジして選び直すといい。
手書きで試行錯誤してきた諸君は、
スムーズで柔軟な思考が出来るようになっている。
ま、書いてみようかと気楽に出来る。
デジタル派はここで完全脱落する。
頭の中に構造が出来ていないからだ。
うわやり直すのは大変だから、ただ削るぐらいで傷のないようにしようと恐れる。
ここで、構成の本質を手放すことになる。
構成の練りをする上で大切なことは、
各要素の関連や構造が、頭の中で出来ていることである。
あるいは、手が覚えていることでもある。
(カードはその補助道具)
構成は、頭の中でやるのだ。
しかし短期記憶容量をすぐにオーバーするから、
一覧性の高いアナログでやり、
手で考えることをやるのである。
実はこれが最も合理的なやり方だ。
さて、次は13に増やす。
単に水増し?
いやいやいや、更によくなる構成があるはずだ。
それを同じように探っていく。
8ベースからはじめてもいいし、10ベースからはじめてもいい。
構成とはなんだ。
何をいくつピックアップし、どう並べるかだ。
それで何が語られているかを、冷静に読み取ることだ。
自分の中の視点だけでなく、
他者から見た視点を維持することでもある。
就職活動中の学生諸君はやってみると、何かに使えるかもね。
これだけのエクササイズを真面目にやると、
構成とは、的確に選び、的確に並べ直すことで、
ストーリーの「骨格」をつくっていくことだと、
体で分かるだろう。
自分の人生のストーリーで出来たなら、
次はあなたの創作ストーリーで同じことをやるだけだ。
構成が出来ません、途中で書けなくなります、プロットが書けません、
なんてのはおかしい。
事件のはじまりから終わりまでの年表を多目につくって、
同じことをやれば構成出来るはずだぜ。
出来ないのは、事件から解決までが、そもそも出来てない時だぜ。
構成とは何かがよく分からない人、
構成力をつけたい人、
さらに構成力を鍛えたい人は、
このエクササイズをやってみるといい。
選んで、並べて、一次元で表現する練習をだ。
数を20、50でやってもいい。
自分でなく他人の人生
(親しい人、歴史上の人、架空の人)でやってもいい。
そのあれこれ書きまくってダメにした紙の分だけ、
あなたは確実に成長する。
そのカスを見れるのも、アナログのいいところだ。
人は、栄養を取ってうんこをして成長する。
うんこを見れないデジタルは、やっぱおかしいよね。
ちなみに俺の人生を3行で。
中二で初めてカンフー映画「帝麗拳」を撮る。
37でドラマ「風魔の小次郎」を大成する。
43で「てんぐ探偵」に取りかかる。
かな。
2015年06月19日
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