これが簡単に出来たら楽なもんだ。
それが難しいから、ストーリーは難しい。
たとえば傑作ドラマ「風魔の小次郎」を、
どう一言で表現すればいい?
全部を盛り込めない。一言でだ。
その一言が全部を表せなくていい。
小次郎のこと、姫子のこと、竜魔のこと、蘭子のこと、
壬生のこと、武蔵のこと、霧風や劉鵬や羽兄弟や麗羅や、
八将軍や絵里奈やその他の人たちのこと。
その全部がその一言に出なくてもいい。
それは、全部を言うのではなく、
本質をとらえた一言にするのである。
象とは何かを言うのに、
耳が大きいとか牙とか皮膚が固いとか言わずに、
「巨大な鼻の長い生き物」とアイデンティティーを与えるようなものだ。
「忍びとは何かを分からない未熟な男が、
忍び同士の戦いを通じて、
忍びとも人間ともなれる立派な男へ成長する話」。
壬生の壬の字もないけれど、
忍び同士のCGバトルもないけれど、
絆もラブコメもご飯シーンもないけれど、
これは一言で風魔を表現していると思う。
これと、「未見の人用の一言で示したもの」は、違う。
それは面白そうだという引きを並べたり、
大体こういう感じか、と大まかに把握したりすることが目的だ。
たとえば「学園忍者アクション」とついたジャンル名はそれだろうし、
殺陣や必殺技CGがなかなかいい、というのもその一つだし、
若者たちの群像劇、というのもその一つだし、
イケメンショウとか車田ロマンという外枠もその一つだ。
(そしてこれらの未見の人用の一言のほうが企画書で使われやすく、
それは予告や宣伝に使われがちだ。
これが本質を表してなく、ガワを嘗めたものに過ぎないため、
これ始動だと内容が薄くなることについては再三書いている)
一言で書くことは、このように「用途に分けて」書かなければならない。
しかも、それぞれの文脈で的確に書かなければならない。
他人のものならまだ客観性があるから簡単かも知れない。
あなたは、他の作品の、
ストーリーの本質を一言で書いてみたり、
未見の人用の一言で書いてみたりすると練習になるかも知れない。
それが的確かどうかは、
その作品をよく知る人に相談してみるといいかも知れない。
(僕でもいいですよ)
問題は自分の作品だ。
なかなか一言におさめるのは難しいのだ。
しかし、他の作品でやったように出来るのがベストであることは、
変わりない。
僕は、そういう短い一言を、ことあるごとに書く。
自分で自分のやっていることを客観的にするためだ。
それが本当に面白いのか、引いて見るためだ。
ストーリーを引いた目で見ることはとても難しい。
それは一言で言うと、こういうことだ。
それを未見の人に一言で言うと、こういうことだ。
この二種類を意図的に使い分け、
どちらも的確に書けるとよいだろう。
ちなみにサイトでは既に更新したけど、
「てんぐ探偵」の後者はこのように書いてみた。
人知れず、心の闇とバトルする探偵がいる。
人の心が醜く歪むのは、現代の妖怪「心の闇」たちのせいである。
天狗の火の剣をもつ少年シンイチは、「壊れた心を治す」ために、
今日も心の闇と取っ組みあう。誰が呼んだか「てんぐ探偵」。
なかなか面白そうに書けたのではないかな。
2015年06月24日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック