2015年07月03日

物語の同一性

シチュエーション、ストーリーライン、テーマの、
三つが一致したら、同じ話だと考えてよいのではないか。


リライトの際、
同じ話だがディテールを変えるのか、
違う話にしてしまうのか、
迷うことがある。
で、そもそも同じ話かどうかはどの辺で決まるのかを悩むことがある。


シチュエーションが変わったら、別の話と言える。

例えば「ギャラクシークエスト」と「サボテンブラザーズ」は、
同じ話のシチュエーション違い(SFと西部劇)だ。
しかし、一応別の話だと思われている。
見た目が全く違うからである。

もしリライトで悩むことがあったら、
シチュエーションを丸ごと変えてみるのは、
結構ドラスティックに変えた風に見えるものである。

逆にストーリーラインやテーマが変わっているのに、
同じシチュエーションだと、パッと見同じ話に見える。

新しいシチュエーションの何かを生かして、
別の要素を入れられるのなら、
ストーリーラインそのものも変わってしまったりして、
別の話になっていくだろう。

シチュエーションを変えることは、
見た目以上に、ストーリーラインを変えうるチャンスとして使える。



ストーリーラインが変われば、別の話になる。

初期設定や、事件や、展開のそれぞれや、
落ちのつけかたなどをまとめてストーリーラインという。
ざっくり言えば起承転結の流れだ。
そのどれかが変われば、別の話になる。

仮にシチュエーションが同一、テーマが同一でも、
展開が違えば別の話だ。
(アレンジの範囲、というグレーゾーンもある。
ドラマ風魔は、原作風魔と同一の話か?
一見同じ話に見えながら、
シチュエーションはそのまま、
ストーリーラインとテーマをアレンジした話である。
同一の話とはいえないが、別物とも言い切れないのは、
ストーリーラインは大筋では同一だからである)


テーマが変われば、別の話になる。

そりゃそうだ。

「インセプション」は、結末が二通りに解釈出来るが、
それで全く別のテーマになる作品だ。
コマが倒れる、つまりここはもう悪夢ではないとすれば、
「人は悪夢から脱出できる、人生は希望がある」になるし、
逆、コマが倒れない、つまりここはいまだ悪夢であるとすれば、
「人は悪夢から逃げられない、人生は絶望だ」になる。
両極端な二つに解釈できるからすごい、
なんて一時話題になったけど、僕は陳腐だと思った。
どちらになったとしても、平凡だからだ。
いわば量子力学のように、結論を重ね合わせた二重性が、
二重性の状態で価値があるような気がした。
シュレデディンガーの猫だ。
僕はそこに、決めきれない優柔不断しか見れなかった。
なんやメメントと一緒やないかい、と。

テーマとは、作品の存在する意味である。
それは、強いひとつであるべきだ。

意味を確定するのが、時間の確定である。
(インセプションはそれから逃げている)


この話とこの話が同じ話であるかどうかは、
意味の確定、テーマの同一性ではかられる。

或いは、同じテーマの、別シチュエーション別ストーリーラインでも、
話は違うが魂は同一の作品に見えるだろう。
(ここに、原作の実写化のヒントがある)

リライト中に、テーマが変わってしまうことに気づかないこともある。
ストーリーラインやシチュエーションをいじっているうちに、
同一のテーマを描いているつもりでも、
別のテーマを暗示してしまっている、
ということに気づかないことがある。
(これは編集中にもよくある)

何かの前提が失われる、何かを踏まえた何かが機能しなくなる、
前提が複数あるため結論が一意にならない、
結論がこれまでを踏まえきれていない、
結論をリライトせずその前だけリライトしたので、
前のバージョンの結論がよれて見える、
などがよくあるテーマのズレだ。

また厄介なことに、
テーマとモチーフがごっちゃになり、
そもそも何を言うためのものなんだっけ、もごっちゃになりやすいのだ。

一言で言うとこれはどういうことか、
を常にクリアにしていないと、
背骨がよれていく。

あっちこっち行って結局これしか結論がないのかよ、
何が言いたかったんだ、という話になりがちだ。


そういうときは、
こういうシチュエーションの、
こういうストーリーラインの、
こういうテーマのお話である、
という三行を書き出してみるといい。
そのテーマを言う、ベストのストーリーラインになっているか、
そのストーリーラインが面白く見えるベストのシチュエーションになっているか、
と逆算でチェックすることで、
今よれているかどうか、
リライト前との比較で、同一の話なのか、
違いつつあるのかを、引いた目で見れるだろう。


我々は、ひとつの話をこねくりまわして、
複数のバージョンをつくることはよくある。
その時に、何が同一の話なのかを、
この観点で見ておくといい。
posted by おおおかとしひこ at 10:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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