2015年07月05日

カット割には二種類ある

見せないカット割と、見せるカット割だ。


見せないカット割は、
物語の進行に沿う。
三人称形で、起こっていることを撮る。
人物の表情や、手元やブツなどを寄ることで、
細かく見たいもの、細かく理解すべきものを撮る。

このカット割の達人になると、
カットを割ってることに気づかれない。
物語の進行に集中しているから、
カット割のことなどどうでもよくなる。
むしろ、進行を邪魔するカット割は、
ノイズになり、物語の理解を阻む敵である。


一方、見せるカット割は、
たとえばヒーローの登場で、
風になびくマント/太陽を遮るシルエット/
手元に握られた武器/そしてゆらめくオーラの中から/
目だけが光り/かっこよく登場、
などにカットを細かく割って表現する。
/の部分がカットを割っている部分だ。

カメラはクレーンで動くかも知れないし、
ハイスピード(スローモーション)は使うだろうし、
ハイスピードからのコマ抜きでかっこよく動きを作るだろうし、
バンク(傾け)はあるだろうし、
フレア(光がレンズに当たることでふわっと隅に光が入る)も入れるし、
なにかでシャッターする(遮りを開ける。帽子のつばの下から目、
マントの中から本体、桜吹雪の中から現れるなど)、
レンズは望遠から超ワイドまで、切り替わりまくるだろう。
長いショットで勝負してもいいし、
短く刻んでもいい。
音楽のリズムに合わせたカット割などは基本だ。

かつては、こういうカット割は、
MV(ミュージックビデオ)的と言われた。
80年代の全盛期、色々な映像的工夫が発達したからだ。

現在ではヒーローもの(変身シーンとか登場シーン)、
音楽PV、アクションものなどに常用される。

カーチェイスなど乗り物を併用すれば、
カメラカー(車の上にクレーンを積んだもの)や、
ドローンなどの空撮などで、
よりバリエーション豊かなカットが撮れるだろう。

あるいは、恋する瞬間や、ダンスなどにも使われることがある。
特別で、映画的瞬間といえる。


これらは事前に編集計画をしておいて、
現場のインスピレーションやアクシデントを拾っていくのがライブ感溢れる演出になる。
逆にキメキメでやる人もいる。
(黒澤はこれで時代劇の殺陣を撮り、様式美と言われた)

僕はCM出身だから、こういう見せるカット割について詳しい。
これは、いくらでも勉強できる。
カッコイイカット割を見たら、
即座にコンテを描いて、
どうやったら撮れるか、
(何カットあるか、撮り順は、準備した機材は、
準備した仕掛けは、レンズは、音楽の計画は、
何時間または何日かかって撮れるか)
などを研究するといいだろう。


見せるカット割は、派手で外連味だ。引っ張ることが理想だ。
見せないカット割は、地味で職人的だ。消えることが理想だ。
両方できるようになるのが望ましい。
中途半端はいらない。

そして、脚本には両方の場面があるのが望ましい。
posted by おおおかとしひこ at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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