2015年07月09日

デジタルは人を幸せにしない:嘘のコストが上がった

たびたびこのテーマについては書いてるけど、
今日は嘘のコストの話。

HD化は、作り手にとって何の益ももたらしていない。
嘘をつくコストが上がってしまったからだ。
それは、フィクションにとって致命的だ。


着ぐるみ、衣装、小道具、セットなどの、美術。
CG。

これらのものが、HD化によって、
ちゃちさがばれやすくなってしまった。

つまり、ばれないためには、もっとコストをかけなければならない。
時代劇がビデオ化されて、嘘っぽくなったことと同じだ。

逆に言うと、作り手は、嘘をつく頻度を減らさなければならない。


今フィクションが力を失っているのは、
嘘をつくコストが上がってしまったからだ。

SD時代なら、簡単に嘘がつけた。
桃太郎だって、あそこまで衣装やCGを作り込まなくても良かった。
今ああいうのが減ったのは、コスト上昇のせいである。

ゲームの高画質化も同じ病に陥ってるよね。
漫画にデジタル導入したら、
細かい背景じゃなくちゃ気がすまなくなってるよね。


嘘は、フィクションの源である。
嘘のコストがかけられないのなら、
リアルで闘うしかない。
だから、
ドキュメントスタイルや、
タレントの日常やトークばかりがピックアップされて、
ドラマや架空の世界が力を失っている。
精々AKBがフィクションの頂点だ。

桃太郎一本作るのに一億。それ以上。
そんな準備金は、今どこにもない。
ないから、フィクションを作れなくて、
今、フィクションは不毛の時代なのかもしれない。


デジタルは人を幸せにしない。

ひとつひとつ積み上げていく嘘の楽しさを、
コストダウンで工程省略して、
コピペをすることが当然になった。
純粋なオリジナルの嘘の過程に、コピペのノイズが入る。

だから、本来の、面白い嘘がつけなくなっている。

俺たち作り手は不幸だ。

現代に更新された、良質なフィクションで周りを固められない皆さんは、
もっと不幸だ。

デジタルは人を幸せにしない。
嘘は大言壮語だ。
嘘を小さくして、小言にしてしまっている。
posted by おおおかとしひこ at 13:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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