たびたびこのテーマについては書いてるけど、
今日は嘘のコストの話。
HD化は、作り手にとって何の益ももたらしていない。
嘘をつくコストが上がってしまったからだ。
それは、フィクションにとって致命的だ。
着ぐるみ、衣装、小道具、セットなどの、美術。
CG。
これらのものが、HD化によって、
ちゃちさがばれやすくなってしまった。
つまり、ばれないためには、もっとコストをかけなければならない。
時代劇がビデオ化されて、嘘っぽくなったことと同じだ。
逆に言うと、作り手は、嘘をつく頻度を減らさなければならない。
今フィクションが力を失っているのは、
嘘をつくコストが上がってしまったからだ。
SD時代なら、簡単に嘘がつけた。
桃太郎だって、あそこまで衣装やCGを作り込まなくても良かった。
今ああいうのが減ったのは、コスト上昇のせいである。
ゲームの高画質化も同じ病に陥ってるよね。
漫画にデジタル導入したら、
細かい背景じゃなくちゃ気がすまなくなってるよね。
嘘は、フィクションの源である。
嘘のコストがかけられないのなら、
リアルで闘うしかない。
だから、
ドキュメントスタイルや、
タレントの日常やトークばかりがピックアップされて、
ドラマや架空の世界が力を失っている。
精々AKBがフィクションの頂点だ。
桃太郎一本作るのに一億。それ以上。
そんな準備金は、今どこにもない。
ないから、フィクションを作れなくて、
今、フィクションは不毛の時代なのかもしれない。
デジタルは人を幸せにしない。
ひとつひとつ積み上げていく嘘の楽しさを、
コストダウンで工程省略して、
コピペをすることが当然になった。
純粋なオリジナルの嘘の過程に、コピペのノイズが入る。
だから、本来の、面白い嘘がつけなくなっている。
俺たち作り手は不幸だ。
現代に更新された、良質なフィクションで周りを固められない皆さんは、
もっと不幸だ。
デジタルは人を幸せにしない。
嘘は大言壮語だ。
嘘を小さくして、小言にしてしまっている。
2015年07月09日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック