2015年07月15日

5分シナリオの書き方2:構成

僕が5分シナリオを薦めるのは、
初心者が陥りがちな過ち、
設定厨とか途中で挫折とかを、なるべく避けることが出来て、
落ちとか展開を考えることにリソースを割けるからだ。

そもそも5分で終わる話が書けない人は、
15分も30分も1時間も2時間も書けやしない。

仮に一本ビギナーズラックで書けても、
何本も何本も書けないだろう。
脚本家が生涯書く本数は分からないが、たかが10本てことはないはずだ。


さて、5枚の原稿用紙を前に、
今考えた話のレイアウト、すなわち構成を考えるのだった。

何も話が出来ていないのに、構成から考えてはいけない。
まず話を最後まで考えてから、
「どういうペースで書くか」が構成だ。

勿論、いいペースで書くためのポイントが昔からあって、
以下はそれを整理したものだ。


もう一度一覧してみよう。


1枚目:【オープニング】【事件が起こる】
2枚目:【事件解決に主人公が乗り出すことに】
3枚目:【解決に向かう展開1】
4枚目:【解決に向かう展開2】【クライマックスの予感】
5枚目:【クライマックス】【落ち】


【】で囲まれた8つの要素が入ってれば、
お話を書けたとしよう、
というのを大岡式5分シナリオメソッドと名づけてみよう。
まあ、整理しただけだけど。

一個ずついこう。


【オープニング】

映画のオープニングはとても楽しい。
町の空撮?いいね。
謎めいた何かのアップ?いいね。
道を進む車。いいよ。
カッコイイイメージ、ふんわりしたイメージ、ハードなイメージ。
イメージから入って世界観に導入する映画のオープニングは、
とても素敵だ。
いつもここでわくわくするよね。
長回しの象徴的カットにスタッフクレジットが次々に入るのは、
いつも楽しい。

しかし、これは5分だ。
何分もかけてると話が始まりもせずに終わってしまう。

このあとの【事件が起こる】と合わせて、
400字以内に終わらせなくてはならない。
つまり、壮大なオープニングを書いている暇はない。

10行も書いたら、もう半分来てしまう。
7行?5行?
理想は、1、2行!
つまり、オープニングで伏線を引きたいなら、
この1、2行で勝負だ。

いきなりハードだね。もう少し余裕があると思った?
カットにしたら1か2ぐらいだろうね。多くて3だね。

最悪、オープニングは無しにして、
いきなり【事件が起こる】パートへ行く手もあるよ。


【事件が起こる】

どんな面白い事件が起こる?
家が爆発?宇宙人が攻めてきた?
誰かの秘密を知った?

この後から逆算すると、主人公はここから登場か、
遅くとも次から出なきゃ、すぐ終わってしまう。

主人公のいないところから事件を始めて次に主人公登場か、
主人公が事件に巻き込まれる所から始めるべきだね。

主人公に余計な性格設定をしてる暇はなさそうだ。

事件を描いてリアクションを取るだけで精一杯だろう。
あるいはその2、3行で一発で設定できるといい。

なんせ、始まってここまでで400字以内だ。
今日はいつもと違う何かが起きた。
これは数分後に、ドラマティックに解決する。
少なくとも、小粋に解決する。
どんな変わった、面白そうな事件が起こる?


【事件解決に主人公が乗り出すことに】

どんな事件が起こるにせよ、
主人公が見捨てて逃げてしまっては終わりだ。
どうしても主人公が関わらなければならない理由を作ろう。

ここも400字しかないよ。
主人公や周囲の登場人物の軽い設定で精一杯だろうね。
リアクションや行動をしてるだけで手一杯になる。
手数を減らして、ひとつひとつの重要性を上げよう。
主人公が三回しか台詞を言えないとしたら、
何と何と何を言えば話が進行し、
なおかつ彼の内面をちらりと示せるか考えるのもいい訓練だ。


ちなみにこれは、いわゆる第一ターニングポイントのことだ。
センタークエスチョン(この話はどうやったら終わりか、
ゴールが何となく示される)を出すこと。

話は動き出した。主人公とともに。


3枚目:【解決に向かう展開1】

どんなことをしてもいい。
面白い展開を考えよう。
コツはツイストすること。
冒頭から想像されるラストへ一直線に進んでもいいけど、
一回違う捻りを入れると、ラストが予測しにくくなる。

序破急の原則で言えば、3、4枚目が破だ。
1、2枚目で設定した最初の世界が、安定して続かないのがいい。
事件は安定世界で解決に向かうどころか、
破壊される。序に対するカウンターの破である。

ますます混迷を極め、複雑になっていくとよい。
一言で言うと、事態は悪化する。
放置の結果悪化するのではなく、
主人公の良かれと思った行動の結果、
結果的に悪化する。
主人公は解決に向けて、最大に努力しているにも関わらず。

ここに何を持ってくるかが、センスだ。
逆にここありきで、序の部分を真逆からはじめて、
振り巾を大きくすることもよくある。

(例えばブルースブラザーズは、黒人の陽気な音楽生活をここで描くため、
序盤はあえて刑務所と貧乏な暗いスタートにしている)


さあもう4枚目だ。
まとめに入っていくよ。


【解決に向かう展開2】

前の展開を受けて、さらに話はドリフトしていく。
前の展開から違う展開になってもいい。
その場合、前が陽気ならここは陰気、など、
コントラストをつけて、起伏をつくるといい。

主人公や登場人物の行動や思惑が乱れ飛ぶ。

しかし所詮400字だ。うまく、コンパクトに。
次とペアで400字。結構きつい。
きついのに、ゆるゆるに進行できなければ、
面白い話ではない。
面白い話は、無駄をそぎおとされている。


【クライマックスの予感】

そうこうしているうちに、
解決への糸口が見えてくる。
ゴール(センタークエスチョン)が再び見える。
さあ、主人公は何をするのだろう。
楽勝じゃ詰まらない。
多分、一番難しいことをクリアしなきゃいけない。

この二つを400字で。

さあラスト一枚。


【クライマックス】

一大アクションにしなくていい。それは長編に取っておこう。
しかしカタルシスがないのは良くない。
何か最大の緊張があって、
それが弛緩するといい。
弛緩するのは、問題が解決したからである。
めでたし、めでたし。
勿論、バッドエンドやビターエンドでもいい。


【落ち】

クライマックスの終わり方そのもの、
あるいはもうワンシーン、あるいはもう一言二言、
あるいはワンアクション、
などで、全体の落ちがある。
それは、この話全体をまとめる、何かだ。
逆にこれで全体がまとまらないのは、落ちではない。
すとんと落ちる、いい落ちを。
短編はこの落ちで勝負が決まる。



5枚目と1枚目が難しい。
3枚目も難しいね。
結局全部難しい。

でも良くできた5分は、これを兼ね備えているよ。

(例に僕の書いた短編「たった一滴の乾杯」を出そうと思ったが、
あれは主人公が父なのに娘の目線から描く、
という特殊なテクニックを使っているので、
オーソドックスではない。落ちもキャッチコピーだし。
変化球を承知で、父を主人公としてとらえてみると分かりやすいかも。
ちなみに作品置き場カテゴリに置いてあります)
posted by おおおかとしひこ at 10:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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