2015年07月17日

構成の話を、肉でたとえる

構成は「話」の中でほんとに大事なのだが、
これは書く人にしか分からないことだ。

構成が出来ていない話は、ほんとうにぐだぐだになる。
構成が出来ている話は、見れる。
見れても、面白いかどうかはまた別。
面白いかどうかと構成は別。
構成は、全体のバランスのことである。



あなたが料理人だとしよう。
牛肉を魅力を伝えたいとする。

あなたは、どの部位の肉を選んで、コースにするだろう。
話を簡単にするため、「焼肉の皿のチョイス」とし、
牛の肉に出来のばらつきはないものとする。

カルビやロースの赤肉、
ホルモンの白肉のバランスを考えるだろう。

最初は塩タンあたりから入り、
塩ミノなどでちょいと驚かせてメインディシュの赤肉。
僕ならハラミ多め、カルビロースはおかず程度に。
合間合間に、ウルテやハチノスなどをちょいちょい挟む。
アカセンやシマチョウあたりの脂肪多めでフィナーレかな。

これで、「牛肉全体の魅力が伝わるか」が大事だ。
「牛肉全体の魅力を、十二分に伝える順番とそれぞれの量になっているか、
それぞれは多すぎず少なすぎず、しかも部位の偏りや代表的なものの漏らしがなく、
順番が全体を理解する順番として適切か」
が大事だ。

それには、
「個々の部位をよく知っていること」
「牛肉全体の魅力を、その部位の組み合わせで表現しきれていること」
「適切な量と順番で、展開があり、飽きさせず理解が進むこと」
が重要である。
食べ終えたあとに、「牛肉全体が見えて、牛肉とはなんぞやが分かること」
が大事である。

もうひとつやり方がある。ものすごい旨いサーロインを、
ドーンと「ひとつだけ」出して満足させることだ。


つまり、牛肉全体の魅力を伝えるにはふたつある。

全体に目端を効かせた、バランスのいいモンタージュ。
一点豪華主義。ひとつで全体を代表し、あとは想像させる。



物語とは、一点豪華主義は出来ない。
お話には様々な要素があり、写真一枚ではないからだ。

だから、モンタージュ(編集)の力が大事だ。
これを構成という。

あなたの物語が、サーロイン一発でないなら、
様々な要素をうまく構成する必要がある。

どの部位をどれだけの量でどの順で出すか、を考えなければならない。
シマチョウを出すならマルチョウはいらないか、と考えたり、
カルビのあとはウルテで変化をつけたりとか、
スターターは定番の塩タンにするべきかとか、
塩ミノいっときながら、あとにもタレミノいくかとか、
そういうことが構成だ。

つまり、構成をするには、
全ての部位がそろい、
全体の魅力が出来ていなければならないのだ。


物語を書くときに、
構成から考えるのは、間違いだ。

どんな部位があるのか、全体はどういうことかを、
先に考えつくべきだ。

半ばあたりで構成のことを考えはじめて、
○○が足りないからそこを埋めようとか、
○○が過剰だからカットしなきゃとか、
理想の構成を眺めながら、自分の話を「整えていく」ことはよくある。


そして、ここからが大事なのだが、
構成とは、
あくまで「牛肉全体の魅力が十二分に理解できる」為にある。
「その牛肉がどの部位も旨い」ことは構成には入っていない。
あくまで構成とは、いい牛が入ったことが前提だ。


ここ三日ほど、
弊社の一年近くの全作品数百本を繋いで、
3分ちょいにまとめる、弊社全体の顔になるビデオ(最新作品集)を作っていた。
各作品から平均2、3秒ずつ抜いて、
それを並べるだけでも60本。
まず数百本から代表作60本を選ぶこと。
これは牛肉全体の魅力を伝えるのに部位を選ぶことである。
それをいい順番で並べて、
展開をつくり、
3分で弊社の作る作品群がとても魅力的に見える必要がある。
(数百本→約100選出→音楽と合わせながら61に選ぶ)

こういうのは、大抵いい音楽を一曲かけて、
CMの音を消し、音楽で一気通貫すると、
ひとつのコンセプトで串刺しに出来るものである。
ところが、CMというのは実にバラバラで、
カッコいいもの、いいかんじのもの、かわいいもの、
ギャグ系、オシャレ系、ビューティー系、食べ物系、
キャラもの、踊りもの、子供動物もの、
アニメーション、変わり種、映像トリックもの、
政府広報など堅いもの、などなどたくさんある。
これらをどう繋げばいいか、
実は構成が命なのだ。

そこで一気通貫する音楽を構成する。
具体的には、ベースとなる音楽を探し、編集する。
著作権フリーの、
ピアノと弦とデジタル打ち込みで展開がある、いい音楽を見つけた。
しかしクールパートが足りないと思い、
低音ドラムの4つ打ち系を探し(同じ作者で探すのがコツ)、
BPMを合わせて、欲しいブロックにトラックを重ねる。
ハイハットがピアノの邪魔になるのでEQでコントロールし、
中音域と高音域はピアノとチェロのためにあける。
ドラムスの打ち方で三種類それらをつくり、
曲の展開に合わせる。
つまり、音楽が全体構成の骨になるように作り上げる。

前段(オープニングタイトル)、
ノリノリ(金のかかったどや顔代表作)、
一点、ピアノからメロディアス(しっとり系、タレントビューティー)、
打ち込みのデジタル(ギャグ系、固い系)、
再び頭のメインメロディ(裏の代表作)、
エンド(弊社広告賞受賞リスト)
のような展開だ。

これで、全体を「理解する」ことが出来る。
あとは、肉の部位が「旨い」ことだ。
各作品の、「最も美味しいところ」を2、3秒切り出してくる。
ここの包丁の入れ方もセンスがいる。
その作品の目玉と魅力を最も伝える2、3秒。
(実際には4秒もあるし、2秒弱もある)

あとは、並び替えで飽きさせないようにし
(例えばカルビのあとにはホルモンなどのように)
リズムに合わせて微調していけばよい。


構成力とは、こういうことである。
(ちなみに実物を見たければ、本日1700より、
東新橋に移転した電通クリエーティブX新社屋披露パーティにて公開。
誰でも入れる日なので関係各位はどうぞ。
一般の方も大岡を呼び出していただければ案内します)



構成は、全体を理解すること。
それぞれの部位は、サーロインのように極上に旨いこと。
そして物語とは、サーロイン一点豪華主義ではなく、
モンタージュである。
それぞれの部位はそれぞれに旨くなければならない。

あなたは、それぞれの旨い部位を作り出し、
それを上手く構成しなければならない。
posted by おおおかとしひこ at 10:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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