執筆時のTIPS。
役者もよく使う手だけど、
その場にある小道具を利用する。
何もない空間で芝居するより、
椅子や机があったほうが何かで使いやすい。
棒が一本あれば、
武器の象徴としても使えるし、
杖にして人生や知恵の象徴としても使えるし、
相手との間に置けば境界線だ。
扉やカーテンは、コミュニケーション拒否や開示に使える。
(以前にも例に出したが、ロッキーにミッキーがトレーナーにつこうと、
部屋に訪ねてくるシーンでは、
扉が拒否を表現するのに巧みに使われている。
あの導線をあなたは書けるか?
恐らくだけど、脚本にはなくて、監督が振り付けをしたと考えられる)
扉越しに何かを思う、聞いてしまうのもよくあるパターン。
(最近ではアナ雪の姉妹の設定に上手く使われた)
逆に、これらの小道具が話に利用できるように、
場所を設定するとよい。
喫茶店では、テーブルや椅子、
コーヒーカップや水やウエイトレスを使える。
スタバ型のカフェがドラマにあまり出てこないのは、
ウエイトレスがいなくて、ドラマのきっかけに使いにくいからだ。
(二人の気まずい時に注文を聞きに来て、会話が再開したり、
喧嘩別れして一人残された状態に、水だけ注ぎに来たり)
80年代は角砂糖の個数が、相手との新密度の象徴によく使われた。
(「あなた、角砂糖2個だったわよね」「昔の彼女面はやめてくれ」とか)
パスタ屋なら、タバスコや粉チーズを何かに使えるよね。
嫌いな奴にタバスコかけたり、書類にタバスコかけちゃったり。
公園なら、ベンチや時計やゴミ箱や遊具やトイレが使える。
(懐かしのてんぐ探偵1話では、
タイヤ跳びが跳び箱を思い出させる為に使われた)
教室なら、机と椅子、窓のカーテン、ロッカー、
掃除道具、チョークや黒板消し、日直欄、教壇、
各自の荷物などが小道具に使える。
電車内なら、隣や向かいの人、雑誌やスマホや音楽プレイヤー、
吊革、痴漢などが小道具に使える。
話を自然に進めるために、
これらを使うのである。
話が自然に進まないなら、これらを使える場所に、
自然に移動すればいい。
「ちょっと話そうか」と言った次のシーンは、
喫茶店でも、車の中でも、ホテルのラウンジでも、
自宅でも、公園でも、河原でも、マクドでも、
コンビニの前でも地下駐車場でも屋上でもいいはずだ。
その後に使う小道具ありきで場所を移動できる。
また、必ずしもそこでなくてもいい。
「この人痴漢です!」と間違えられるきっかけから何かはじまるのなら、
それが電車である必要はない。
電車を借りてロケするのはとても高額で、
撮影時間が限られている。撮影用特別列車を走らせるダイヤ確保が必要。
勿論ラッシュ時は無理だ。
世の中のラッシュシーンは、夜中または昼の暇な時間または、
セット撮影で撮影されている。
しかも都内近郊で貸してくれる路線は、三つしかない。
(電車を舞台にした「阪急電車」では、
夜中から朝にかけて、車庫に置いた電車の中で撮影された。
昼間のようにライトを炊き、窓の外は全部合成だ。
だから結構不自然なカットがたくさんある。
駅や電車を借りるとき、地方ロケと組み合わせれば、
地方はまだ協力的である。地方ロケ映画が多い理由だ)
どうしても電車がいいなら、これらの困難を現場がクリアしなければ不可能だ。
コストも莫大になる。カット数も限られる。
ところが、シナリオ上簡単に解決できる。
バスにしてしまえばいい。
バスなら、貸し切ればどこでも走れるからだ。
窓外がそんなに映らないなら、停車して撮影してもいい。
役者は微妙に揺れ、カメラも揺れれば分からない。
痴漢に間違えられるなら、満員だろうから、
これがやりやすい。
さらに。
バス停にする手もある。
バス停の行列なら、バス停の小道具一個あれば可能だ。
「人混みで強制的にいる」空間であればなんでもいいはずだ。
文脈が変わるだろうけど、
カラオケルームにして成立するならそれでもいいだろう。
監督が書くシナリオは、そういうロケの都合をよく考慮したシナリオであることが多い。
(どうしても電車の旅情が必要なら、他をカットしてでも電車を使う)
場所の小道具を利用せよ。
その為に場所を移動せよ。
必ずしもそこでなくてもいい。
(コストが安くすめば、他に金をかけられる)
逆に、「真っ白な空間」は、
具体が出来ない時の抽象として使える。
(マトリックスの仮想空間、天国の表現、夢の表現など)
色々な小道具を利用せよ。
脚本家は誰しも、得意な場所(小道具置き場として)を持っている。
僕は公園と河原かな。
バーが得意な人はちょいちょいいるね。
市野監督は食卓が得意だ。
何が起きるか逆算して、そこにつれて行け。
2015年07月19日
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