2015年07月19日

その場にある小道具を利用する、その為に移動する

執筆時のTIPS。
役者もよく使う手だけど、
その場にある小道具を利用する。


何もない空間で芝居するより、
椅子や机があったほうが何かで使いやすい。

棒が一本あれば、
武器の象徴としても使えるし、
杖にして人生や知恵の象徴としても使えるし、
相手との間に置けば境界線だ。

扉やカーテンは、コミュニケーション拒否や開示に使える。
(以前にも例に出したが、ロッキーにミッキーがトレーナーにつこうと、
部屋に訪ねてくるシーンでは、
扉が拒否を表現するのに巧みに使われている。
あの導線をあなたは書けるか?
恐らくだけど、脚本にはなくて、監督が振り付けをしたと考えられる)

扉越しに何かを思う、聞いてしまうのもよくあるパターン。
(最近ではアナ雪の姉妹の設定に上手く使われた)


逆に、これらの小道具が話に利用できるように、
場所を設定するとよい。

喫茶店では、テーブルや椅子、
コーヒーカップや水やウエイトレスを使える。
スタバ型のカフェがドラマにあまり出てこないのは、
ウエイトレスがいなくて、ドラマのきっかけに使いにくいからだ。
(二人の気まずい時に注文を聞きに来て、会話が再開したり、
喧嘩別れして一人残された状態に、水だけ注ぎに来たり)

80年代は角砂糖の個数が、相手との新密度の象徴によく使われた。
(「あなた、角砂糖2個だったわよね」「昔の彼女面はやめてくれ」とか)
パスタ屋なら、タバスコや粉チーズを何かに使えるよね。
嫌いな奴にタバスコかけたり、書類にタバスコかけちゃったり。

公園なら、ベンチや時計やゴミ箱や遊具やトイレが使える。
(懐かしのてんぐ探偵1話では、
タイヤ跳びが跳び箱を思い出させる為に使われた)

教室なら、机と椅子、窓のカーテン、ロッカー、
掃除道具、チョークや黒板消し、日直欄、教壇、
各自の荷物などが小道具に使える。

電車内なら、隣や向かいの人、雑誌やスマホや音楽プレイヤー、
吊革、痴漢などが小道具に使える。


話を自然に進めるために、
これらを使うのである。

話が自然に進まないなら、これらを使える場所に、
自然に移動すればいい。

「ちょっと話そうか」と言った次のシーンは、
喫茶店でも、車の中でも、ホテルのラウンジでも、
自宅でも、公園でも、河原でも、マクドでも、
コンビニの前でも地下駐車場でも屋上でもいいはずだ。

その後に使う小道具ありきで場所を移動できる。


また、必ずしもそこでなくてもいい。

「この人痴漢です!」と間違えられるきっかけから何かはじまるのなら、
それが電車である必要はない。

電車を借りてロケするのはとても高額で、
撮影時間が限られている。撮影用特別列車を走らせるダイヤ確保が必要。
勿論ラッシュ時は無理だ。
世の中のラッシュシーンは、夜中または昼の暇な時間または、
セット撮影で撮影されている。
しかも都内近郊で貸してくれる路線は、三つしかない。
(電車を舞台にした「阪急電車」では、
夜中から朝にかけて、車庫に置いた電車の中で撮影された。
昼間のようにライトを炊き、窓の外は全部合成だ。
だから結構不自然なカットがたくさんある。
駅や電車を借りるとき、地方ロケと組み合わせれば、
地方はまだ協力的である。地方ロケ映画が多い理由だ)

どうしても電車がいいなら、これらの困難を現場がクリアしなければ不可能だ。
コストも莫大になる。カット数も限られる。


ところが、シナリオ上簡単に解決できる。

バスにしてしまえばいい。

バスなら、貸し切ればどこでも走れるからだ。
窓外がそんなに映らないなら、停車して撮影してもいい。
役者は微妙に揺れ、カメラも揺れれば分からない。
痴漢に間違えられるなら、満員だろうから、
これがやりやすい。

さらに。
バス停にする手もある。

バス停の行列なら、バス停の小道具一個あれば可能だ。
「人混みで強制的にいる」空間であればなんでもいいはずだ。
文脈が変わるだろうけど、
カラオケルームにして成立するならそれでもいいだろう。

監督が書くシナリオは、そういうロケの都合をよく考慮したシナリオであることが多い。
(どうしても電車の旅情が必要なら、他をカットしてでも電車を使う)


場所の小道具を利用せよ。
その為に場所を移動せよ。
必ずしもそこでなくてもいい。
(コストが安くすめば、他に金をかけられる)


逆に、「真っ白な空間」は、
具体が出来ない時の抽象として使える。
(マトリックスの仮想空間、天国の表現、夢の表現など)


色々な小道具を利用せよ。
脚本家は誰しも、得意な場所(小道具置き場として)を持っている。
僕は公園と河原かな。
バーが得意な人はちょいちょいいるね。
市野監督は食卓が得意だ。


何が起きるか逆算して、そこにつれて行け。
posted by おおおかとしひこ at 15:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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