2015年07月20日

テーマとは、「結局○○だ」ということ

CG資料用に「テッド」を見た。
途中まですごくよくて、資料を忘れて夢中で見た。
クライマックス、ちぎれた綿に叫んだ。
しかしラストのつまらなさと言ったら!

第二ターニングポイントの直前、
「あいつは雷を怖がらない男になる」で、
号泣した俺の涙を返せ!

映画はラストで決まる。
それは結局なんだったのか、が決まるからだ。


(以下ネタバレ)


頭からクライマックスまで、
「少年が大人になる」物語のテンプレ満載だ。

少年時代からのぬいぐるみの友達、
(雷友達の約束)
大人になってからの社会人の苦労、
恋人との未来を取るのか、少年時代の友達を取るのかという、
ベタなメインストーリーライン。
敵は、我慢を知らない親子。

このテンプレからは、
「大人になることは我慢すること、
楽しかった少年時代の思い出を捨てて、
(年齢に応じた)やらなきゃいけないことをすること」という、
一般的なメッセージが読み取れる。
「35にもなって」と、年齢が何回も挿入される。

大切なパーティーを抜け出して、
フラッシュゴードンのもとへ走る、
ボトムポイントにもそれが現れている。
80年代や90年代は輝いていたというノスタルジーがそれを加速する。

ここまで来て、僕は「大人版オバQ」という傑作を思い出していた。
大人の正ちゃんは完全にオバQを忘れた。
テッドはどう決着をつけるのだろうと。


僕はここまでベタなストーリーラインから、
「大人になることは、我慢することなんて詰まらないことじゃない。
○○なのさ」というタイプの結論が来ることを予想していた。
きっと予想もしなかった、素敵な結論をだ。

ここまでベタに来たからには、
ヒントは冒頭にある。
テッドがどうやって誕生したのか、にまつわる何かがあるだろうと。

そこまでは当たっていたが、
その出来が予想をはるかに下回った。

恋人が祈って蘇生するって。どないやねんこれ。


結局、ご都合主義だ。
結局、大人になるなんて我慢はやめて、
現状維持のためにビッグマザーが甘やかす話かい!



テーマとは、「結局、○○だ」の○○に入るもののことだ。

大人になることは、別れを経験することだ、とか、
大人になることは、痛みを覚えて優しくなることだ、とか、
このご都合主義以外ならなんでも良かったのに。


テッドは鉄塔の上で雷に打たれて死ぬべきだった。
雷友達に本当の雷を見せ、
避雷針があるから大丈夫だと教えて死ぬべきだった。
どんなに修復しても再び動くべきではなかった。
たとえばそのあと結婚して生まれた子供が、
友達がいなくて、押し入れの奥にしまったテッドを見つけて、
お腹を押したら「I love You」としゃべる所で終われば良かった。
(2にもつなげられるだろそれで)

少年には友達が必要だ。
そしてその友達との別れも必要なのだ。
そうやって男は生まれる。
優しくて人の気持ちが分かる、大人の男が。
(映画内ではただmanだったかな)

大人になった主人公は、
たとえば恋人の、
子供の頃大切にしていた人形についても、
聞くことが出来るはずだ。
たとえばバービーだとして、
動かなくなったテッドを彼女に会わせるストーリーラインだって、
思いつけたはずだ。
(彼女の実家に行くことがプロポーズの意味になる)

そうやって、大人になることは、○○である、
と表現することが出来るはずなのに。


これらの可能性を、
単なる復活コメディラスト(トラブルの毎日はつづく)
にしてしまったのが相当惜しい。


少し気になるのは、クライマックス以降が、
スタジオの権力で改訂されたのではないか、
という懸念だ。(脚本クレジットに三人の名が)

少年が大人になる話は、
女にも子供にも受けないからだ。
それよりも、毒舌セックスグマのキャラを、
女たちに受ける永遠に生きる存在にしたいスタジオの意向は、
わからんでもない。
キャラものは、ギャラを払わなくていいという、
自社の持ち物感覚になるからね。

と、いけちゃんとぼくで辛酸を嘗めた僕が言ってみる。

まあ、そこは余談。



ラストで、映画は決まる。
結局、○○だ、
が映画だ。


あなたの物語は、結局なんだったんだ?
それが深く心に刻まれる、名作たりえてるかい?

ドラマ風魔は、結局、人の心に暖かい風を吹かせた。
映画いけちゃんは、結局、少年は大人になった。

それが物語だ。


テッドは、結局、なんでもなかった。
駄作入り確定。惜しい作品として今後思い出されるだろう。
posted by おおおかとしひこ at 16:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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