2015年07月29日

「実は○○」を封印してみよう

一種の縛りプレイなのだが、
「一見Aだと思えた(あるいはそう設定したもの)が、
実はBで…」
という展開を一度封印してみよう。

「実は○○」に頼ると、作劇能力が落ちるからである。


そもそもこれはミスリードの一種だから、
Aにリードすることが出来ないと、
「実はB」の衝撃が薄い。
どんでんでドヤ顔されても、はあ、という程度のリアクションになる。
ところがどんでんする本人はドヤ顔まんまんのことが多い。
これが、多くの滑りを生んでいる。

表の顔は○○裏の顔は△△。
実は○○族の唯一の生き残り。
(貴種流離譚。実は○○の継承者とか、実は世界で唯一○○の鍵とか)
正義の印と思われた○○は、実は悪を集めるためであった。
真犯人は別にいたのだ。
あの子が好きと思わせて実は○○とセフレだった。
余命二ヶ月は、嘘だった。
実は封印された記憶があって…

こういうのは、ちゃんとリードが出来るようになってからにしよう。
以前書いたかも知れないが、「実はB」に力点が強すぎて、
「まずA」が疎かになる、すなわち詰まらなくなってしまうからだ。
「まずA」を面白く書ける実力がない人間が、
「実はB」に逃げることが、かなり良くあるからだ。

「まずA」は、
普通に事件が起きて、それを解決する面白さだ。
あることの故にあることが起こり、自分の責任でそれを解決していくことだ。
一人で解決出来ないから仲間を増やし、
抵抗する人を説き伏せていくことだ。
リアルでこれが下手な人ほど、
これを劇に盛り込むことが出来ない。
一人の中で解決しようとしてしまったり、
何故か周りがお膳立てしてくれるメアリースー状態
(前撫ずみで濡れている牝馬にぶちこめばOKの状態まで、
何故かお膳立てが整っている、種馬状態、と下品に言ってみよう)
になりがちである。
ご都合主義的展開ともいえる。

誰かと誰かが揉めて、それ故誰かとぎくしゃくして、
どうにかもとに戻そうとして更にこじれてゆき、
最終的にあっという方法で三方丸く納めるような、
良くあるパターンで地道に面白く書ける力がないから、
「実はB」という飛び道具に頼ってしまうのである。
「飛び道具はいずれ尽きる」(ドラマ柳生蘭子)。

まあ、尽きた頃に顔が青くなるのかも知れないが。


実は○○、を封印して、話を作ってみよう。
ついでに回想も禁止だ。
現在とバックストーリーだけで、
話が前に進むものを作ったほうが、
腕が鍛えられるというもの。

こうなって、こうなって、落ちがこうなる話。
それだけをシンプルに考えたほうが、
本当に面白い話が書けるようになるまでの近道だと思うよ。

(ミステリーはこの限りではないかも。
しかし、「実は○○」と回想禁止の、話が前に進むだけのミステリーは、
逆に新しいかも知れない。あ、それがコロンボか)
posted by おおおかとしひこ at 00:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック