実写進撃という初心者レベルの脚本を見ることで、
出来てないとはどういうことかを分析することが出来る。
見世物と物語を分離して考えられているかどうか、
という話。
進撃の実写化の見世物要素は、
巨人が実写で見れることと、
立体機動が実写で見れることだ。
もしこれがスパイダーマン並に上手く出来ていれば、
たとえ話が糞でも、ライドムービーとしてヒットしたと思う。
古い話だがスターウォーズ(オリジナル1、現エピソード4)
が公開されたとき、
モーションコントロールカメラによる合成映像、
すなわち、ラストのデススターに突っ込んでハイスピードバトルをする映像は、
革命的SFアクションだった。
みんなあそこが見たくてリピートしたそうだ。
(僕はその頃まだ子供だったので、記憶にない。
しかし2のスピーダーバイクの森を駆け抜ける快感は強く記憶にある。
ステディカメラで撮ったものをはや回ししたらしい)
つまり、巨人の巨人感、そこに立体機動で挑む、
ワンダと巨像+スパイダーマンのような、
板野サーカスのような、
めくるめく映像体験が、期待されたはずだ。
(問題は、東宝がそれが出来るのを樋口しか知らなかったことだが)
自分ならどうするかな、を常に僕は考えるけれど、
実物大巨人(上半身と下半身)をグリーンでつくり、
スタントマンをワイヤーで吊ると思う。
(そのためにグラサンとかゴーグルをかけさせるのは、
マトリックスでもやっていたことだ)
自在に動くカメラ視点のために、
ドローンを使うと思う。
アクロバットヘリ並の機動が可能だからだ。
かつてはゴープロしか乗らなかったが、
今ならブラックマジックも乗るし。
で、ドローンのGPSデータを解析し、
同じ動きをモーションコントロールカメラで出来るようにし、
巨人の俳優または着ぐるみ(一部CGかも)を、
クレーンカメラで撮り、
合成するのが良さそうだ。
もちろん技術班との協力開発が必要だ。
しかし革命的映像というのは、
革命的技術から生まれるものである。
一方、物語とは?
主人公エレンへの感情移入とカタルシスであるべきだ。
感情移入、あった?
冒頭に「恋人を殺された」という「設定」はあった。
しかしだからといって、そこから更に深い感情移入はなかった。
たとえば町をゆくカップルがマフラーを二人で共有しているのを見て、
一人でマフラーを抱き締めるようなことはなかった。
恋人を殺されたことに、
我々はもっと入り込むべきなのに、
冒頭でやったからもういいよね、と言われたようなものだ。
人の感情は理屈ではない。
いわばホスピタリティーのようなものだ。
エレンがたとえば「赤ん坊の声が聞こえる」と戦線を離れるバカ母を、
「人類滅亡の危機になにやってんだ!」と殴って止めでもすれば、
我々は彼の思いの激しさに、
より感情移入出来たはずである。
感情移入は点ではない。
線だ。
どんどん深くなっていかなければならない。
この初心者丸出しの脚本家は、
「自分が共感する状況の羅列」を書いているだけで、
「観客の感情移入が深くなってゆく」ことを基準に書いていない。
赤ん坊を心配する母は、共感する。
死んだと思われてた恋人との再会に、共感する。
その恋人が、父親(役)に取られていることに、共感する。
自分にスーパーパワーが目覚め、暴れまわることに、共感する。
全く点の羅列だ。
点は見世物であり、線が物語だ。
面白い線を描くには、
その始点の感情移入が、どうなっていくかを、
途切れずに面白く書いていかなければならないのだ。
その終点は巨人化だ。これは決まっている。
だとしたら、殺された恋人の復讐がついに爆発した、
という意味での巨人化でなければならないはずだ。
ついに最初の動機を果たすときが来た、
という千載一遇に、
巨人化のイベントが重なるから、
うおおおとなるのが映画というものだ。
現状で巨人化を喜んでいる人は、
見世物としての特撮に、興奮しているだけだ。
これが物語、すなわち殺された恋人の復讐劇としてのクライマックスになるのが、
映画という見世物と物語の両輪を持つものの特長である。
それを、かの糞脚本家は知らないか、
知っていても出来てない。
今回のケースでは、
先に見世物(巨人とのバトルと、主人公巨人化)が決まっていて、
それに物語の糸を通す、という作業だったはずだ。
殺された恋人の復讐を動機に定めたのなら、
それが果たされるまでを描くべきだった。
なんなら、恋人が巨人化しても良かったのではないか?
この巨人を殺すべきかどうか迷うのは、
ひとつのドラマを生み出しただろう。
原作は未読なので、どのような動機や終点や、
ストーリーラインや感情移入やカタルシスがあるか知らない。
いずれにせよ、見世物と物語を混同せずに腑分けし、
最終的にはその見事な融合を書くことが、
あなたの仕事である。
2015年08月16日
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