2015年08月20日

歩きながらの会話、柱

この言葉で検索してきた人がいたので。
前記事に比べ、ミクロレベルのテクニカルな話だけど。



例えば転校生に学校を案内する場面。
例えば研究所の中を歩きながら議論する場面。

転校生と前の学校のことを話しながら学校を一周するとか、
研究室から出て廊下、階段、次のフロアへ行くが、
一連の議論は全部繋がっているときなど。

映画ではこういうとき嘘をつく。
ワンカットで移動しながら全部を撮る以外では、
ABCDEと場所をカットで繋ぐ。
つまり場所に関してはハサミが入っているのに、
会話に関してはハサミを入れない(ように見せる)ことがある。
これも省略のテクニックのひとつだ。


僕はたとえばこう書く。

○校内の様々な場所(校庭、渡り廊下、職員室前、屋上)を一連の会話で

P「そっか、いじめられてたのか」
Q「うん。だから友達もいなくて」
P「誰も助けてくれなかったの?」
Q「…そうだね」
P「でも大丈夫、ここはみんな仲良しさ。ここ職員室(と指す)」
Q「そうだといいけどなあ」
P「先生も熱血だし」
Q「…その先生が、信用できないんだ」
P「…(立ち止まって)どういうこと?」
   一連の会話を校内を案内しながら。
   最後は屋上の風を受けて。


細かく、どの会話をどの場所で、と指示してもいいけれど、
会話がメインだから、柱を分けて書くより、
会話の流れが見えたほうが表記上分かりやすい。

例では二人の対話だが、
ケータイを取って外に出るなど、一連の会話を見せるときなどは、
頻繁にこの書き方かも知れない。
相手が別の場所にいるなら、それも柱に書き、カットバックを明記するとよいだろう。

脚本の書き方のルールは、あくまで、
固定した場所で固定した人の会話を書くときの方法だ。
それ以外は工夫すればよいのだ。
この例では、会話が脚本上の表記で途切れてしまうと、
会話の流れが見えにくいので、
一番大事な会話の流れを見せるような表記にしている。


研究所の場合も同じくだ。

○研究所内、歩きながらの会話(研究室〜廊下〜階段〜非常階段)

P「そんなバカな。X耐性のある遺伝子を持ってるって?」
Q「そうなんです。そうとしか考えられないんです」
P「データの集め方に問題があったんだろ。スタップの二の舞だぞ」
Q「複数の研究員で確認してます」
P「…詳しいデータを見せてくれ」
Q「…ここだけの話なんですが」
P「なんだ」
Q「…CIAがデータを寄越せと所長に言って来たらしいです」
P「…なんだと?」
Q「急ぎましょう、全データがそろそろ別のハードディスクに移せた頃です」

なんて感じかな。
実際のロケ地で一連でワンカットで撮れるかも知れないけど、
何メートルも歩いてからでないと次の場所に行けないかも知れない。
この会話のどこで別の場所にいるかは、
監督が実在の場所と比較した上で厳密に決めてよい。

どうしてもどの台詞がどこでなければならない、
という理由はないだろう。
何故なら、会話の流れのほうが優先だからである。



脚本の形式は、
固定した場所の、固定した人の芝居を書くための形式だ。
形式に縛られ過ぎると、
内容だって自由さを奪われてしまう。
それがどういう話の流れか、が脚本の最優先事項だ。
それを忘れないことだ。

例えば全編ワンカットの「ロープ」「バードマン」は、
どう書いてあるだろう。
最初に大まかな場所の地図のイメージが表紙に貼ってあり、
これはワンカットで撮ったように見せる映画である、
と最初に宣言してあるだろう。

そして普通にシーンの柱を立てて書くと思う。

結局、シーンの柱とは、
場所のまとまりの単位ではなく、
「話の流れのまとまり」だからである。

ここでの話がまとまって、次へいくのだな、
と思えたら、柱を改めていいと思う。

脚本は話の流れを書くのが最優先だ。
細かいビジュアル計算は、監督の仕事だ。



そして、また基本に戻るけど、
会話は何のためにするのか。
単なる情報交換ではない。
それぞれ異なる目的があり、会話の結果目的が変わることだ。

学校の例では、
P:いじめられていたことを告白→ここの先生が信用できないからQを味方につけたい
Q:校内を案内してあげる→Pの不信を知る
研究所の例では、
P:データを信用してない→今すぐ確認
Q:現状報告→独自行動を告白し、所長を出し抜くことにPを引き込む

などのようになっているね。
posted by おおおかとしひこ at 15:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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