2015年08月22日

落ちと意味とセンタークエスチョン

前記事のつづき。

落ちや意味というものは、
構造上、センタークエスチョンと関係している。


映画の中において、
少なくとも二回、センタークエスチョンが問われるポイントがある。
第一ターニングポイントと、
第二ターニングポイントである。
センタークエスチョンとは、
作品全体の具体的焦点を確定し、
「果たして主人公は○○出来るだろうか?」
と思わせることである。

主人公は地球を救えるか?
主人公は彼女のハートをゲットできるか?
などだ。

これは、主人公の目的の、大枠を設定することでもあるけれど、
実はテーマ、すなわち落ちにも関係していることに気づいているだろうか。


「こういう目的を果たすお話」
というのが、センタークエスチョンから見た話の全貌である。
「その話になんの意味があったのか」が落ちやテーマだ。

たとえば、
「地球を救えるか」というセンタークエスチョンならば、
「地球を救う正義」がテーマや意味に関係していることになる。
「自分を証明できるか」というセンタークエスチョンならば、
「アイデンティティーの確定」が、テーマや意味に関係していることになる。

つまり、センタークエスチョンと落ちは、
表裏一体の関係にある。
センタークエスチョンが果たされたことで、
話が終わるからだ。
それになんの意味があったのか、
纏めることが落ちだからだ。

落ちは、センタークエスチョンを踏まえている。
逆に、センタークエスチョンは落ちの伏線である。

だからと言って、
センタークエスチョンが落ちをネタバレしてはならない。
あくまで伏線でなければならない。
それを踏まえた上での落ちでなければならない。
バレバレの伏線は、伏線ではない。

しかし、全く予測させないのも問題だ。
そのセンタークエスチョンでその落ちかよ!
になってはダメだ。
そのセンタークエスチョンでその落ちか!
という意外性はとてもよい。

落語「まんじゅうこわい」は、後者の落ちである。
殺されるのかどうかをセンタークエスチョンに持ってきながら、
どんでん返して、主人公の際限なき欲望で落とす。
いわばどんでん返し落ちである。
そこに人間というのはこういうものだ、という皮肉が利いているからこそ、
この話は良くできているのである。




やおいの語源は、
ヤマなし、落ちなし、意味なしである。
80年代、当時のアマチュア二次創作の特徴を自虐して言った言葉だった。
(そのうちエロ方面を意味し、今はBL限定で使われる言葉に変わった)
つまり、アマチュアは、
落ちが下手であり、そこに意味を込めたお話を作ることが下手であり、
センタークエスチョンを含んだヤマを作ることも下手だった、
ということを意味している。
80年代からそうなのだから、
今のアマチュアストーリーテラーが、そうなのも悪ではない。

だがプロを目指すのなら、
切れのある落ち、
すなわちそれが暗示するこの話の意味、
それを確定する伏線としてのセンタークエスチョン、
それらが決する緊張感としてのクライマックス(ヤマ)、
の関係が分かり、
自在に使いこなせなければならないよ。


逆算で考えてもいいし、
順に考えてもいい。

順に考えてみる。
この話のセンタークエスチョンは○○だ。
それが成功すればこの話は終わりだ。
全体の焦点、大きな流れは、その成否に注目し、緊張するように、
各ストーリーラインが存在する。
さて、その成功とは、何を意味するだろう?
○○が大事だ、ということを意味するだろうか?
だとすると、それは人間の何を描いているのだろう?
人間とはこういうものだ、とか、
真実はこういうものなのだ、とか、
を暗示するだろうか?
あるいは、落ちとセンタークエスチョンをどんでん返しの関係に出来るだろうか?

そこまでディテールを考えれば、
どうしたって次の問いが出てくる。
つまり、俺が書こうとしている話の、
テーマは何か?

そのテーマを抽出し、
それらで、センタークエスチョン、意味、落ちを並べるのである。

それらが矛盾なく、
面白い骨格になり得たときに、
一番大事な背骨が出来たことになると思う。

あとは、具体的な展開の面白さや、面白い設定の面白さが生まれ、
それにぶら下がってくるはずだ。


逆算は、落ちから逆に作っていけばいい。




落ち、意味、センタークエスチョンは全て繋がっている。
ヤマなし、落ちなし、意味なしのアマチュアは、
センタークエスチョンがないのかも知れないね。
posted by おおおかとしひこ at 10:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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