2015年08月28日

ダメなテンプレ「謎の女子高生と海へ」

こないだ話していて、
映画青年が書きがちな、ダメなテンプレが出来たのでメモしておく。


主人公は、リストラされた/うだつの上がらない中年男。
ある日、謎の女子高生と出会う。
彼女は何故か馬が会い、活発な性格で、
積極的に男を引っ張って行く。

しかし彼女には秘密があった。
余命半年/自殺願望/父に性的暴行/薬づけで組織に追われている/銃を持っているなど、
ひどく心が傷つき、厭世的で刹那的なのだ。
彼女の心を癒すため、
二人は車で海へ行く。

道中何かある。追っ手が来るとか、彼女の親が出てくるとか、
彼女の元カレが出てくるとか。

車中泊で、彼女はついに本当のことを言う。
衝撃を受ける男だが、彼女を包み込む。
(性的関係はない/フェラのみ/キスのみ/激しいセックス)
「ありがとう。おじさん優しいんだね」

ラスト、断崖に車ごと心中/逃げて逃げて終わる/「帰ろっか。今の話、全部作り話なの」


大抵、男には「俺が特別な男である」ことを示すためのアイテムがある。
ぼくらの世代だと100%煙草(しかも変わった銘柄)で、
「おじさんのキス煙草臭い」とか「大人はなんでこんなのが好きなの?」とか、
「この匂い好きになっちゃった」とかが、必ずあったものだ。
今の象徴はなんだろ。クルマでもなさそうだし。
スマホとかかね。「知識」か(「おじさん詳しいんだね」)。
で、困って、ダッシュボードに改造銃があったりするんだろね。



要するにここにいるのは、特大のメアリースーであり、
この事に作者以外全員が気づいている。
それを指摘できるかどうかは、本人の周りの優秀さによるが、
誰もが、ご都合主義を端々から感じているだろう。

具体的に見ていこう。

うだつの上がらない男に、何故か女子高生が連れに:

もうここがメアリースーの定義みたいなものだ。
のび太症候群でもいい。
ダメな自分に神が助けに来てくれる。
その彼女は、必ず勝ち気で積極的で、エキセントリックである。
積極的でないと、話の進行役になれないからだ。
主人公は積極的でなく、
それがゆえダメな人生を送っている。
これを変えるのは他力本願だ。

映画は、最も主人公が積極的でなければならない。
結果的積極でもいい。受動的な主人公は糞だ。
これについてはさんざん書いているので省略。

何故か彼女はエキセントリックである。
普通の子なら「自分」と積極的に関わらないからだ。
(メアリースー症候群の原因は、登場人物を自分だと間違えること。
登場人物の定義は他人である)
「女子高生に積極的に人生を変えてほしい」という甘え願望を、
エキセントリックだから、という理由で逃げをうつのである。


彼女がエキセントリックな理由:

で、その大嘘をつくために、小嘘を重ねなくては成立しなくなってくる。
彼女の過去が異常であることで。

そして、100%に近い確率で、
彼女には「性的」な問題点がある。
元援交少女とか、レイプの過去とか、レズとか、
クスリでウリをやらされてたとか、処女なのにアナル調教ずみとかだ。
なぜか。
作者にとって、女子高生は性欲の対象だからだ。

たとえば、
政治的問題について悩んでいるとか、
神の信仰について悩んでいるとか、
小説の展開に困っているとか、
整形に失敗して崩れかかってるとか、
部活で怪我したとか、進路で悩んでるとか、
そういう悩みは抱えていない。

100%性がらみだ。
性はエロスであり生命の象徴である、
と屁理屈をこねることは可能だ。
死んでいた人生がエロスによって復活するという話だと、
屁理屈をこねることは可能だ。

しかしそれは、女子高生を性欲の対象として見ている、
ということの隠れ蓑に過ぎない。

クライマックスは、必ず彼女への性欲の爆発になる。
作者のヘタレ具合、紳士度合い、変態度合いによって、
プレイ内容は異なる。
(手を出さないというプレイもある)

性欲の対象であり、なおかつ救ってもらい、
なおかつ聖女でいてほしい為に、女子高生は存在する。
そんな彼女に救ってほしいという願望を、
お話の中で満たしているだけである。


何故海へ行くのか?:

何故か海へ行く。
それは、二人きりになるためだ。
セカイ系だ。海はセカイ系の元祖だ。

決して友だちや親に紹介しない。
世界に関係するのは自分と相手のみである。
それを追ってくる追っ手を撒くことが、
ストーリーの中盤になる。
理想郷のセカイを目指して、セカイの完成の為に逃げる。

寺とか神社でもなく、
アメリカでもなく、
南の島でも火星でもない。

車で行けるレベルのセカイ系である。
自転車にはならない。
密室で女子高生と過ごしたいからである。

だから、ラブホテル宿泊シーンが必ずある。
性の対象と密室の二つの要件を満たすからである。
女将が邪魔しに来る民宿ではいけない。


敵は、他の男:

女子高生を追ってくる敵から逃れる、
または倒す為に主人公は行動する。
女子高生の独占が目的(願望)だからだ。

大抵、主人公より男としての格が低いように設定される。
元カレならば自分より年下で、煙草を吸わない、大人でないこと。
ヤクザならば自分よりバカで、頭の機転はこちらが効くこと。
そこの優位性しか、主人公のすがる長所はないからだ。
対女子高生への優位性と、大体同じものだ。
(社会人としての経験、
お店を知ってる、パソコンを使える、
煙草を吸ってる、学歴がある、金があるなど)


ラストは説教:

風俗でスッキリしたら、
「こんなことをしていてはいけないよ」と、
何故か諭すモードになる。
いい人になろうとする。

何故か女子高生だけ死んで、自分だけ生き残るパターンもある。
ヘタレ全開である。



メアリースー症候群については、多くを語るまい。
こんなものを創作と思ってると、
立ち直れないし、大恥かくぜ。


試しに、この話を女子高生主人公に書き直せるだろうか。
色々不自然があることに気づければ、
王様は裸だと言えるだろう。
posted by おおおかとしひこ at 12:21| Comment(6) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
『スクリプトドクターの脚本教室』の冒頭にも同じようなのが載ってました。考えることは皆同じなんですね。
Posted by おしお at 2015年08月29日 04:25
おしお様コメントありがとうございます。

その本は立ち読みでちらりと読みました。
心理学的なアプローチで面白いなあと感じましたが、だからどうすればいいのかまで書いてあったか、最後まで読んでないので分かりません。

次の記事に、根本から考えが違うのだよ、と関連させて書いてあります。あわせてお読み下さい。
Posted by 大岡俊彦 at 2015年08月29日 11:19
個人的には『スクリプトドクターの脚本教室』は大変参考になりました。
自分が物語に触れたときに、心動かさる部分がどういう仕組みで出来ているのか、というのがようやく分かりました。

ダメテンプレはいくつかありましたが、女子高生を書く人は自己完結してるタイプが多くてアドバイスに聞く耳を持たないと書かれていますね。
自分の欲望のままに書いてしまうようなタイプは聞く耳を持たないのかもしれません。

『海と女子高生』というキーワードは中年のおっさんにとって幸福の象徴なのかもしれませんね。

本の中では、コンフリクトを葛藤と訳したようなシナリオを『窓辺系』として定義し、こういったタイプのシナリオを書いてしまう人に向けて処方箋を書いていました。
Posted by おしお at 2015年08月30日 23:37
おしお様情報ありがとうございます。

僕は教師ではなく現役プレイヤーなので、
ダメな典型の収集とか、その克服のパターンにはあまり興味がないです。
自分としてはそこは何十年か前に通過してるし。

入社試験の学生の企画とかではうんざりするほど見るし、
今でも変なCMのクライアントとか、ダメなプロデューサーには、
窓辺系や、海へ行く話が物語だと間違えた人が、
たくさんいると思います。

そういうのと関わるとろくなことがなくて、
そういう匂いを嗅ぎ付けよう、というスタンスで最近の一連は書いてますけどね。


処方箋があるのならちょっと続きを読んでみるか…
Posted by 大岡俊彦 at 2015年08月31日 00:01
あといっこ書き忘れました。

海と女子高生は、おっさんにとっての幸福ではありません。
欲望の象徴です。

自分に都合のいい幸福は、全て欲望です。

幸福とは、おそらく複数の人たち、より多くの人々ににもたらされるものです。
自分たちの勝手な幸福は、
他人から見れば欲望の限り。
本人(たち)には善(または正義)でも、他人には悪(または嫌悪)になりうる。

このへんのあたりに、間違いの種が潜んでいると思います。
Posted by 大岡俊彦 at 2015年08月31日 00:23
『窓辺系』からの脱出と言う意味では、大岡さんのほうが考察は深いと思います。

一章、二章ではクライマックスの心の動きの話をしています。
大岡さんの記事でも、他の脚本の本を読んでもなかなか書かれていない部分なので興味深かったです。

三章、四章では構成に関する話をしています。
ここは、一章、二章に比べればやや平凡で、他の脚本の本にも書かれているような内容です。
大岡さんのほうが深く考察しているように感じます。

五章、六章ではスクリプトドクターの実際の仕事の話をしていますが、これは参考程度ですね。
Posted by おしお at 2015年08月31日 13:53
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