ここにこう書いてあるから、
これを言ったことであるし、
既に伝えたのだから、
それを理解しないほうが悪い、
なんて思うやつは、表現の素人である。
表現とは、論文や数式や法律の条文や注意書きではない。
それが、
最後まで興味を持たれて、進んで最後の瞬間まで見守るかどうか、
について、あなたはどの程度自覚的だろうか。
下手な人ほど、
ここに書いてあった、と言い訳する。
そんな言い訳はない。
観客である我々の記憶になければ、
それは意味がない。
表現者の敗けだ。
一番大事な原則をおしえよう。
ひとつの表現で記憶に残るのは、たった一つしかない。
それ以外は、そのたった一つに関連するものだけが記憶に残る。
その一つを、何にしてもよい。
主人公の仕草、世界観、途中のギャグ、とあるシチュエーション、
とある理屈、とある場面。
僕は、そのたった一つは、
結論であるべきだと思っている。
すなわちテーマだ。
殆どの下手な人は、
そのたった一つに絞ることが出来ない。
三つも四つも言いたいことがあって、
優劣を決められない。
決められないし、一つだけ残してあとを捨てられない。
二つ残すのは禁止。三つも禁止。
優先順位も禁止。
一つだけだ。
物語の全ては、ラストの為にある。
そこでテーマが確定し、
結論が出る。
そこがもっとも大事なところで、
それ以外が大事なのなら、
最早物語という形式をとらないほうがいいんじゃないかとすら、思う。
最近のCMは、たった一つの大事なことを伝える、
という一番大事なことを忘れている。
何億も払うのだから、
あれもこれも言いたいなどと、
貧乏性だ。
何億も払うのだからこそ、
たった一つに決めるべきなのだ。
おっぱい揉みたいとか、こういうデートがしたいとか、
僕と付き合ったらこういうメリットがありますとか、
ずっと一緒にいたいとか、
いろんなことを言うのは、下手なラブレターだ。
好きだ、とたった一つに絞るのが、
上手いラブレターだ。
すべてのディテールがここに集約されている構造が、
正しいラブレターだ。
ラブレターを何通も書いてみるのは、
たった一つに絞る訓練に丁度いいかもね。
2015年08月31日
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