2015年08月31日

強迫神経症

前記事からのつづき。

で、そのたった一つのことが、
良くないときに、人はどうするか。

そのたった一つのことを突き詰めて、
それを良くすることは大抵出来ない。
その人の実力のマックスがそこだからである。

ダメな人は、周囲のディテールを詰めはじめるのだ。


ここのこのディテールはこうでなければならない。
何故なら…と理屈をつけはじめる。
周囲のディテール全てにそのようなものをつけて、
そのディテールがAであるべきかBであるべきか、
はたまたA'であるべきか、
と延々と悩む。

悩むからこそ、そのディテールの変更に、
気が狂ったように起こる。
せっかく細かく作ったのにと。

僕はそれを強迫神経症だと思う。


自分が強迫神経症に陥って、
目の前のことしか見えていないかをチェックするには、
一行削ってみたり、言葉を少し変えてみるといい。
しかも誰か他人に直されたりするイメージ。

とても嫌な感じがしたり、ふざけんなと思ったら、
それは強迫神経症の疑いがある。

多少のダメージはあるが、
大きくはたった一つの大事なことを伝えるのに、
大勢に影響なし、
と構えられるなら、まだ強迫神経症にはなっていない。
(しかしキモになる、片手で数えられる程度の箇所を、
変更してしまったら怒っていい)


さて。

これを、リライトのときに、
やれるかどうかなのだ。


細かいことをこちょこちょ直すのは、リライトとは言わない。
ディテールの直しであり、化粧直しだ。
リライトとは、骨格からいじり直すことだ。

強迫神経症に陥っていると、
化粧直しすら嫌になるから、
リライトというと、化粧直しを頑張ってやるだけになってしまう。
とても大変な難工事を終えた気になってしまう。
それはリライトではない。

リライトというのは、たった一つの大事なことを伝えることを、
直すレベルである。

テーマを変えるとき。
テーマへの収束の仕方を変えるとき。
テーマの対比を変えるとき。

構造レベルの直しは、強迫神経症の人には耐えられない。
ディテールが全て瓦解してゆくからである。


だから強迫神経症になってはいけない。
もっと柔軟に、やわらかくいるべきだ。
たった一つの大事なことを伝えるのに、真摯であるべきで、
その他はどうでもいいと広く構えておくことだ。
(僕は仕事での強迫神経症的な直されが嫌になり、
小説という一人で責任を取れるものを書いたのだけど)

僕のすすめる白紙術は、
常に強迫神経症を防ぐ手段のひとつである。
白紙に、伝えるべき、たった一つの大事なことを真ん中に書く。
そしてそのディテールを一から書く。
次の日、
また、白紙に、伝えるべき、たった一つの大事なことを真ん中に書く。
そしてそのディテールを一から書く。昨日のものを見ずにだ。

二枚のものは、ディテールは違うが、同じものを示している。
その程度のディテールのぶれが、
あなたの中に既にあることを知ることが出来る。


リライトの強迫神経症を防ぐには、
一旦その砂の城を、体育館の隅に保存することだ。
そしてその砂の城が見えないような体育館のスペースで、
白紙に一から書いていくことだ。
真ん中に書くたった一つの大事なこと、
周りのディテール、骨格、展開。

その程度の状態で組み合わせや入れ換えを試し、
骨格が定まったら、
まだ砂の城を見ずに、白紙に一から書いていく。
書き終わったら、砂の城を見に行ってもいい。

案外、近いものが出来上がっていて安心するものである。
これは、
たとえ自分が生まれる前に戻って、
もう一度今までの一生を送るとしても、
おおむね似たような生涯なのだな、
という発見に近い。
どちらの人生でも、大体似たようなディテールを生み出すのだな、
と、安心することは、
大変だけれどよい経験になるので、したほうがよい。

砂の城は、いつでも作れる。

そういう自信が自分の中に生まれたとき、
ようやく、たった一つの大事なことや、全体の構造に、
メインの注意が行くのかも知れない。

それが、強迫神経症の克服かも知れないね。


二時間の映画の脚本でやるのは、
相当骨が折れる。半年クラス必要だ。
15分ぐらいの作品なら、経験しておいたほうがいい。
たとえば、脚本添削スペシャル「ねじまき侍」「ヤクザヘッド」は、
そのようにして書いている。


要するに、強迫神経症は、自信がなくて不安なのが原因なのだ。
これを克服するのが、
恐ろしいまでの筋トレ(修行)の量なのだ。
古来、修行僧は、肉体の訓練によって、
結果的に心の悟り(不動)を得たのである。

強迫神経症になるのは、あなたの修行の量が圧倒的に足りない証拠だ。
posted by おおおかとしひこ at 14:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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