ストーリーとは変化だ。
時間軸を持つ、始点から終点への変化の軌道(流れ)である。
それには、伝統的なリズムがある。
変化のパターンが、
ワルツや8ビートや3/4拍子のように、
黄金リズムが見つかっている。
それが構成だ。
リズムに必要なのは、
始点と終点と、全体の長さ(尺)である。
リズムは、尺が決まらないと決まらない。
3分のロックなら16ビートで突っ走れるが、
1時間の社交ダンスホールなら、ワルツを中心とするべきだ。
我々には疲労というものがある。
心臓の鼓動という説もある。
構成は、尺と密接な関係にある。
どれくらいの時間をかけて、変化を描くかに関係する。
映画は殆どが二時間という、
他の時間軸を持つメディアに比べて、
尺が決まっているという珍しいメディアだ。
ドラマでさえ、120、90、60、45、30、15、
4クール、2クール、1クール、単発などとバラバラで、
小説や演劇はフリー尺だ。
(コンテストなどでは尺を決めるものもあるけど)
音楽も基本フリー尺だが、
ポピュラーミュージックは3分で片がつくように一番が組まれ、
大抵三番構成をもつ。
(そして大抵AメロBメロサビの構成だ)
映画はわずかの例外を除いて、
全て二時間、と言ってもよい。
だから、共通の黄金リズムをもつ。
代表的なのが、ハリウッドの三幕構成だ。
日本映画には、伝統的に8つのブロックにわけ、
起承承承承承転結にせよという、ハコガキという構成法がある。
三幕構成は研究されまくっていて、
無数のバージョン違いがある。
ブレイクシュナイダー・ビートシートや、13ポイント理論なども、
三幕構成をさらに細かく詰めたものだ。
ウラジミールプロップの神話研究が応用されることもある。
僕も自分なりに思うところがあって、
大岡式とも言える三幕構成を使っている。
(日々細かいところは変化している)
構成というのは、
全体を等分ブロックわけをし、
そのブロックで何をやるべきで、
ブロックの継ぎ目はどうするか、
つまり、ブロックに関して始点と終点、変化の軌道を決めたものだ。
つまり、ストーリー全体を、小分けストーリーにすることである。
三幕構成では、全体を1:2:1にせよ、ということ、
セットアップ、展開、解決という大枠のストーリー、
第一ターニングポイント、第二ターニングポイントという継ぎ目を定めただけの、
極めて簡素な理論である。
それゆえどこにでも適用することが出来、
おそらく二時間映画以外にも使われていることと思う。
(たとえば、
「帰ってきたウルトラマン」の主題歌は、
幕間ターニングポイントで視点の転換をした、
見事な三幕構成であることをかつて議論した)
しかし大雑把にすぎて、
実際の執筆にはちょっと物足りないと僕は思い、
執筆から得られたフィードバックなどで、
日々理論を詰めているのである。
構成とはなにか。
変化の軌道を小分けして、
小ブロックに分けたものだ。
そして継ぎ目の役割についても言及したものであることもある。
構成だけでお話は出来ない。
だって、この曲は4小節からなる、と言っているに過ぎないからだ。
お話を作った上での、
構成的に美しいかどうか(尺調整)、
いい流れかどうか(構成的配置。伝統的にせよ新規リズムにせよ)、
のチェックに使う道具だと思っている。
たとえば三幕構成の元祖、
シドフィールドのカード法は、
シナリオを書き慣れている
(何枚でどれくらいの内容が出来るかを分かっている)人の
やり方ではないかと思う。
何枚でどれくらいのことが書けるかなんて、
書いてみないと分からない初心者の為の理論ではない。
逆に初心者は、
自分の書くものの小中大ブロックが、
どこで何枚使っているかを、
書きながら、書き終えてから、細かく研究するといい。
そうすると、尺に関しての車幅感覚が鍛えられ、
車庫入れが無意識に出来るようになってくるものである。
二時間で講演会をしてくださいとか、慣れた人は出来るだろう。
最初の30分で何を喋って、あとは各論で、
途中で一回逆転して、などと計画出来、
その計画にはめながら喋ることが出来るだろう。
計画がなければグダグダトークになるし、
計画にはめられなければ脱線で尺オーバーか、足りなくてショートする。
僕は講演会は自信がないが、
シナリオなら出来る。
慣れの問題だ。
構成をマスターするのに最も重要なのは、
構成を考え、その通りに書くことを、
繰り返すという、一番地味な方法しかない。
講演会を何度もやって慣れていくのと同じである。
他の人の原稿を見るのもとてもいい勉強だ。
シナリオの現物はなかなか入手出来ない。
月刊シナリオにわずか10本程度だ。
(1ページ1分という標準フォーマットなのがとても助かる)
目当てのシナリオ現物は中々手に入らない。
アメリカは全て有償で入手可能だが、
日本人である我々は、DVDを活用するしかない。
ストップウォッチで色んな始点から終点を計り、
解剖していくのはとてもいい。
僕は数十本の名作について、
100ブロックぐらいの分数を記録したものを自力でつくり、
どういう展開に何分かけるのか、
この数分のあとに何分の何が来るのかなどを、
細かく研究したことがある。
時間軸を持つ芸術は、すべからく音楽に似ている。
絵や彫刻やデザインや写真には似ていない。
必ず、構成という展開リズムを持っている。
(優秀な、絵や彫刻やデザインや写真は、
我々が見る順番が誘導されていて、
時間軸を持つように擬似的に作られているから、
構成というリズムを持つ場合がある)
二時間以外のものについては、
起承転結や序破急なども有効だ。
いくつかについてはここでも書いているので繰り返さない。
構成をやれ、という初心者への教えかたは、
間違っていると思う。
話を作れ、構成を考えろ、繰り返せ、
そのうち、構成通りに書けるようになれ、
が正しい教えかただと思う。
(そこまで付き合うのが面倒なんだろうけどね)
2015年09月03日
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