最初から二時間はやめておこう。
5分から15分程度を想定しよう。
落語や「世にも奇妙な物語」あたりをイメージするといいかもだ。
あるいは漫画の読み切り短編(31P)でもいい。
一切の理論は捨てて、がむしゃらに書いてみよ。
それで最後まで書けたらラッキー。
それで最後まで書けない場合の学習法。
研究である。
自分の書こうと思った尺の作品を研究しよう。
まず一本を徹底的に分析し、
何本もやることを考えよう。
だから、最初に、これとこれとこれを研究するぞ、
というものを揃えよう。
少なくとも3本、多くて10本以上。
さて、最初の一本を選べ。
好きなやつがいいかな。
あるいは、「自分が基本型だと思うもの」でもいいし、
「書きたいものに近いもの」でもいい。
「最終的に目標とする完璧なもの」でもいい。
それは、あなたがどうなりたいかと関係する。
深く考えてもいいし、深く考えなくてもいい。
それは生涯の一本かも知れないし、そうでないかも知れない。
いずれにせよ、これから膨大にやる研究という行為の第一歩に過ぎない。
長いことつきあえる作品に越したことはない。
さて、最初にやることは何か。
「シナリオ形式を書き起こすこと」だ。
シナリオが手に入れば書き写すだけでいいが、
そうでない場合は、DVDを一時停止しまくりながら、
変換していくことだ。
書き写す方が楽?
いやいや。この変換を自分でやることが既に勉強なのだ。
マックス15分くらいの作品ならば、
丸一日もあればシナリオフォーマットに落とせるだろう。
慣れれば一時間で出来るかもしれない。
出来た?おつかれさま。
これがあなたが一生かけて闘う、脚本という戦場だ。
あ、必ず手書きで。
手で書かないと学習効率は格段に落ちる。
100本やればマスター出来ることが、1000本やらなければならなくなる。
これは、書き写すバイトの効率を上げるのではなく、
あなたが脚本という戦場に慣れる効率を上げる為のトレーニングだ。
次にやることは?
音読することだ。
情感たっぷりに演じよう。
まるで今見たものを再現するようにだ。
それぞれの登場人物の気持ちになって、演じよう。
あなたが役者志望ならビデオに撮って本家と見比べてもよいが、
そこまでやらなくてもいいかも知れない。
また、その姿は決して人に見られてはならない。
(かっこわるいから)
これは、我々が書くものは、
小説ではないことを体で知ることのトレーニングだ。
最終的に音声で出される楽譜を、
我々は書いているのである。
つまり今後我々の頭のなかに浮かぶべきものは、
概念や理屈ではなく、このような芝居である。
完成形は分かった。
じゃ次は?
これを、白紙から思いつくことを、シミュレーションしてみるのである。
先行記事「脚本を書くために必要な4つのサブテキスト」を参照して、
具体的に書いてみよう。
ログラインとウリ:
まずその話を一行または数行に言ってみよう。
そんなことすら、意外と難しい。
ログラインの書き方は色々あるし、過去記事にも僕は書いているが、
気楽にやるのが一番いい。
ふっと引いた目線になれる訓練でもある。
ぶっちゃけどういうことやねん、ということだ。
そして、その作品のウリを、一言で。
これは、その作品を客観的に、最も遠くから見つめる訓練だ。
レンタルビデオの棚のなかに埋もれたとき、
全ての人は、このペラ一枚から、この作品を見るかどうか、
この作品は見るべき価値があるのかを見極める。
AVのパッケージ(裏や背表紙も含む)と同じだ。
本質以上に盛るのは詐欺だ。
本質をいかに的確にとらえられるかだ。
次。
ストーリーライン。
主人公に注目する。
最初の状態と最後の状態を書き出す。
それは違うもののはずだ。
じゃあどうしてそういうことになったのか、
順を追って箇条書きにしてみる。
それが変化の軌道である。
主人公以外にも注目する。
全ての登場人物について、同じことをする。
脇役は変化しないことが多い。
逆に、変化する人物を、主要登場人物とよぶ。
短編ならば、変化するのは主人公一人または、数人レベル。
長編なら5、6人以上だけど。
どうしてそういう変化が起こったのか、
他人に説明できるようにしておく。
人はある日突然変身しない。
何かに影響されてとか、何かに影響して人を変えたとか、
影響や因果関係があるはずだ。
それを自分なりに説明できるようにする。
プロットを書く。
文章形式、台詞抜きで、
800〜4000字程度でこの話のプロットを書き起こしてみよう。
理想は、脚本の1ページあたりムラがないこと。
つまり、脚本1ページがx文字でプロット起こしされて、
xかけるページ数がプロットの文字数になるようにだ。
人物表をつくる。
人物をリストアップする。
むしろ最初ではないか?
最後で構わない。
ストーリーの骨格を知る方が先だ。
登場人物は、骨格の先端に過ぎない。
書くべきリストは以下。
名前、年齢。
そして、目的。
目的のない人間は、物語のなかにはいない。
(脇役はないときが多い。
だから、脇役はいてもいないことと同じ)
途中で微妙に目的が変わることもあるから、
それも書いておく。
それらを全て含んだ大目的があれば、それも書き添える。
資料的なもの。
専門的な知識が必要ならば、
どういうジャンルのどういう知識を調べればたどり着くかを、
調べてみる。
わりとそのジャンルでは初歩的なことなのか、
マニアックなことなのかも知ってみよう。
さて。
分解は終わった。
ここまで数日から一週間はかかるかな。
資料に結構手間を食うかもね。
ここから、ようやく研究だ。
「あなたが0からこの話を思いつくには、
どうすればいいか」をシミュレーションするのだ。
アイデアの思いつきは、
大抵最初にひとつしかない。
それは何だろう。
どうやって次のことを思いついたのだろう。
これとこれの関連は自然に出てきたのか、
それともなかなか思いつかなくて、
ある日突然劇的に思いついてグッと良くなったのか。
あなたが作者だと仮定して、
頭の中にゼロから構築していくのである。
なんなら白紙に最初の一発アイデアを書き、
その周りにメモをとりはじめ、
次第にストーリーという鍋に煮込みはじめてもいい。
自分なりでいいから、
作った分析表が、ゼロから立ち上がるまで、
シミュレーションするのである。
あなたが今足りないものは、どういうことかを実感するのは、
いい勉強だ。
一通りイメージするのに、何日もかかるだろう。
その作者がかけた時間分かかるだろう。
あなたは初心者だからもっとかかるだろう。
さて、自分でも出来るかも、というところまでイメージ出来れば、
もう一度、自分で書き起こした脚本を、
手書きで書き写してみよう。
一字一句が、あなたの血肉になってゆくはずだ。
なぜどうしてここでこう言うのか、
なぜどうしてここでこう書くのか、
それらが、身に染みてわかるはずである。
つくづく、手書きでやること。
さて、最後の仕上げ。
それを音読してみよう。
最終的な芝居が、
何から出来ているかが、肉体レベル、素粒子レベルで理解できる。
さて。まだ一本やっただけ。
3本?5本?10本?
まあ三本もきっちりやれば、大体分かってくる。
それから先は確認や復習の成分が入ってくる。
短編?中編?長編でもやる?
長編は大変だ。一ヶ月かかるかも知れない。
でも、本当に分解研究したいのなら、
そこまでやってもいいかもね。
僕は中学のときに、
映画「超時空要塞マクロス 愛・覚えていますか」
「風の谷のナウシカ」でそれをやった。
暗唱できて、再現芝居が出来た。
一回やると、
何度も何度も見た映画なら、やらなくてもやったことと同じようになるものだ。
(肉体レベルで理解できる、とはそういうこと)
ロッキーやターミネーターや、酔拳や少林寺木人拳は、
僕にとってそういう映画である。
さて。
最後まで書けない?
ここまでやれば、最後まで書けるよ。
最後まで書くということを、肉体が既に知ってるから。
書く前に何を準備すればいいか、もう知ってるはずだから。
一本書けたら初心者卒業。
映画を沢山研究し、理論を勉強し、
名作をバンバン書いてくれたまえ。
2015年09月07日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック