2015年09月07日

一度も最後まで書いたことのない人が、最後まで書く方法

最初から二時間はやめておこう。
5分から15分程度を想定しよう。
落語や「世にも奇妙な物語」あたりをイメージするといいかもだ。
あるいは漫画の読み切り短編(31P)でもいい。

一切の理論は捨てて、がむしゃらに書いてみよ。
それで最後まで書けたらラッキー。
それで最後まで書けない場合の学習法。

研究である。


自分の書こうと思った尺の作品を研究しよう。
まず一本を徹底的に分析し、
何本もやることを考えよう。
だから、最初に、これとこれとこれを研究するぞ、
というものを揃えよう。
少なくとも3本、多くて10本以上。

さて、最初の一本を選べ。
好きなやつがいいかな。
あるいは、「自分が基本型だと思うもの」でもいいし、
「書きたいものに近いもの」でもいい。
「最終的に目標とする完璧なもの」でもいい。
それは、あなたがどうなりたいかと関係する。
深く考えてもいいし、深く考えなくてもいい。
それは生涯の一本かも知れないし、そうでないかも知れない。
いずれにせよ、これから膨大にやる研究という行為の第一歩に過ぎない。
長いことつきあえる作品に越したことはない。


さて、最初にやることは何か。
「シナリオ形式を書き起こすこと」だ。

シナリオが手に入れば書き写すだけでいいが、
そうでない場合は、DVDを一時停止しまくりながら、
変換していくことだ。
書き写す方が楽?
いやいや。この変換を自分でやることが既に勉強なのだ。

マックス15分くらいの作品ならば、
丸一日もあればシナリオフォーマットに落とせるだろう。
慣れれば一時間で出来るかもしれない。

出来た?おつかれさま。
これがあなたが一生かけて闘う、脚本という戦場だ。
あ、必ず手書きで。
手で書かないと学習効率は格段に落ちる。
100本やればマスター出来ることが、1000本やらなければならなくなる。

これは、書き写すバイトの効率を上げるのではなく、
あなたが脚本という戦場に慣れる効率を上げる為のトレーニングだ。


次にやることは?
音読することだ。

情感たっぷりに演じよう。
まるで今見たものを再現するようにだ。
それぞれの登場人物の気持ちになって、演じよう。
あなたが役者志望ならビデオに撮って本家と見比べてもよいが、
そこまでやらなくてもいいかも知れない。
また、その姿は決して人に見られてはならない。
(かっこわるいから)

これは、我々が書くものは、
小説ではないことを体で知ることのトレーニングだ。
最終的に音声で出される楽譜を、
我々は書いているのである。
つまり今後我々の頭のなかに浮かぶべきものは、
概念や理屈ではなく、このような芝居である。


完成形は分かった。
じゃ次は?
これを、白紙から思いつくことを、シミュレーションしてみるのである。

先行記事「脚本を書くために必要な4つのサブテキスト」を参照して、
具体的に書いてみよう。


ログラインとウリ:

まずその話を一行または数行に言ってみよう。
そんなことすら、意外と難しい。
ログラインの書き方は色々あるし、過去記事にも僕は書いているが、
気楽にやるのが一番いい。
ふっと引いた目線になれる訓練でもある。
ぶっちゃけどういうことやねん、ということだ。

そして、その作品のウリを、一言で。

これは、その作品を客観的に、最も遠くから見つめる訓練だ。
レンタルビデオの棚のなかに埋もれたとき、
全ての人は、このペラ一枚から、この作品を見るかどうか、
この作品は見るべき価値があるのかを見極める。
AVのパッケージ(裏や背表紙も含む)と同じだ。
本質以上に盛るのは詐欺だ。
本質をいかに的確にとらえられるかだ。


次。

ストーリーライン。

主人公に注目する。
最初の状態と最後の状態を書き出す。
それは違うもののはずだ。
じゃあどうしてそういうことになったのか、
順を追って箇条書きにしてみる。
それが変化の軌道である。

主人公以外にも注目する。
全ての登場人物について、同じことをする。
脇役は変化しないことが多い。
逆に、変化する人物を、主要登場人物とよぶ。

短編ならば、変化するのは主人公一人または、数人レベル。
長編なら5、6人以上だけど。

どうしてそういう変化が起こったのか、
他人に説明できるようにしておく。
人はある日突然変身しない。
何かに影響されてとか、何かに影響して人を変えたとか、
影響や因果関係があるはずだ。
それを自分なりに説明できるようにする。


プロットを書く。

文章形式、台詞抜きで、
800〜4000字程度でこの話のプロットを書き起こしてみよう。

理想は、脚本の1ページあたりムラがないこと。
つまり、脚本1ページがx文字でプロット起こしされて、
xかけるページ数がプロットの文字数になるようにだ。



人物表をつくる。

人物をリストアップする。
むしろ最初ではないか?
最後で構わない。
ストーリーの骨格を知る方が先だ。
登場人物は、骨格の先端に過ぎない。

書くべきリストは以下。
名前、年齢。
そして、目的。

目的のない人間は、物語のなかにはいない。
(脇役はないときが多い。
だから、脇役はいてもいないことと同じ)
途中で微妙に目的が変わることもあるから、
それも書いておく。
それらを全て含んだ大目的があれば、それも書き添える。


資料的なもの。

専門的な知識が必要ならば、
どういうジャンルのどういう知識を調べればたどり着くかを、
調べてみる。

わりとそのジャンルでは初歩的なことなのか、
マニアックなことなのかも知ってみよう。


さて。

分解は終わった。
ここまで数日から一週間はかかるかな。
資料に結構手間を食うかもね。

ここから、ようやく研究だ。

「あなたが0からこの話を思いつくには、
どうすればいいか」をシミュレーションするのだ。

アイデアの思いつきは、
大抵最初にひとつしかない。

それは何だろう。
どうやって次のことを思いついたのだろう。
これとこれの関連は自然に出てきたのか、
それともなかなか思いつかなくて、
ある日突然劇的に思いついてグッと良くなったのか。

あなたが作者だと仮定して、
頭の中にゼロから構築していくのである。

なんなら白紙に最初の一発アイデアを書き、
その周りにメモをとりはじめ、
次第にストーリーという鍋に煮込みはじめてもいい。

自分なりでいいから、
作った分析表が、ゼロから立ち上がるまで、
シミュレーションするのである。

あなたが今足りないものは、どういうことかを実感するのは、
いい勉強だ。

一通りイメージするのに、何日もかかるだろう。
その作者がかけた時間分かかるだろう。
あなたは初心者だからもっとかかるだろう。

さて、自分でも出来るかも、というところまでイメージ出来れば、
もう一度、自分で書き起こした脚本を、
手書きで書き写してみよう。

一字一句が、あなたの血肉になってゆくはずだ。
なぜどうしてここでこう言うのか、
なぜどうしてここでこう書くのか、
それらが、身に染みてわかるはずである。
つくづく、手書きでやること。

さて、最後の仕上げ。
それを音読してみよう。

最終的な芝居が、
何から出来ているかが、肉体レベル、素粒子レベルで理解できる。




さて。まだ一本やっただけ。
3本?5本?10本?
まあ三本もきっちりやれば、大体分かってくる。
それから先は確認や復習の成分が入ってくる。

短編?中編?長編でもやる?
長編は大変だ。一ヶ月かかるかも知れない。
でも、本当に分解研究したいのなら、
そこまでやってもいいかもね。
僕は中学のときに、
映画「超時空要塞マクロス 愛・覚えていますか」
「風の谷のナウシカ」でそれをやった。
暗唱できて、再現芝居が出来た。

一回やると、
何度も何度も見た映画なら、やらなくてもやったことと同じようになるものだ。
(肉体レベルで理解できる、とはそういうこと)
ロッキーやターミネーターや、酔拳や少林寺木人拳は、
僕にとってそういう映画である。



さて。

最後まで書けない?
ここまでやれば、最後まで書けるよ。
最後まで書くということを、肉体が既に知ってるから。

書く前に何を準備すればいいか、もう知ってるはずだから。
一本書けたら初心者卒業。

映画を沢山研究し、理論を勉強し、
名作をバンバン書いてくれたまえ。
posted by おおおかとしひこ at 14:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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