2015年09月08日

連載漫画の失速は、なぜ起こるのか

我々が、脚本が途中で書けなくなる現象と、
同じ原因ではないかという仮説を唱えてみる。


失速ポイントは以下の三つか。

1. ある展開が一通り終わったとき、新展開が始まるのだがそれが詰まらない
2. 展開の途中から失速
3. 終盤で息切れまたは引き延ばしで失速

他人の原因を探れば、自分の原因を探るより客観的に見れるだろう。
どれにも共通する原因がある。

それは、準備不足だ。

1の場合。
次の新展開を十分に練っていないどころか、
その新展開の伏線を、以前の展開に張り忘れている。
本来なら、盛り上がる展開の途中に、
新展開序盤に使う伏線を引いておき、
新展開ではその伏線を利用して進め、失速せずに進めるはずだ。

2の場合。
展開部の事前の練りが足りず、テンポが計算しきれず、
起伏がコントロールしきれなかったのだ。
そのうち起伏がなくなってきて、失速する。
本来なら、飽きることなくターニングポイントが次々に来て、
怒濤の展開、うねりの展開、意外な展開になる筈なのに。

3の場合。
解決に向けての鮮やかな展開を準備していなかったため、
足踏みしてしまい、失速する。
本来なら、これまで張ってきた伏線が全て炸裂する、
怒濤のクライマックスになる筈なのに。


つまり、全ての失速しないこととは、
以前のものを利用して進めているのである。

失速は、その手がかりがない、
今だけ周りにある何かを使ってアドリブでやらなければいけないときに、起こる。

以前のものを利用し、現在が進むようにすること、
つまり計画的に作られていれば、
それは失速しない。

次やることに何の伏線も張ってないとき、
アドリブが失敗すれば失速する。
成功すれば加速するかも。

つまり、何も準備していないことは、
ストーリーにとってギャンブルだ。

そして大抵失敗する、分の悪いギャンブルである。


例えば、漫画「みんな、エスパーだよ!」の、
衝撃展開、ヒロインの首ちょんぱは、
後先を考えずに準備していないことは明白だ。
準備していなかったことが衝撃にはなったのだが。

直後のバスケ編の迷走ぶり、失速ぶりはヤバかった。
タイムスリップのアイデアによって最悪の失速は免れたが、
それ以前の勢いに戻ることなく、連載は終わってしまった。
連載当初の、へっぽこエスパーが世界を救うコメディ路線で、
最後まで貫けば良かったのになあ。

全ては準備不足といえよう。
最初から計画されていたのだとしたら、
タイムスリップのヒントがその前にあったはずで、
それを手がかりに時間遡行にたどり着く展開に、
すぐなるはずだ。
火の能力のラスボスは、現代ではなく過去にいたか、
主人公たちと同じく過去にタイムスリップすることで、
ラストバトルを設計できた筈である。

急激な路線変更か、展開を思いつかなかったか、
どちらかは不明だが、
大変惜しい失敗作となってしまった。


これらは、我が身である。

あなたが失速するのは、
今書いていることに何の準備も、
それ以前の原稿の中でしてこなかったからである。

勿論、唐突展開の狙いなら例外だ。

が、結局唐突展開とはギャンブルであることが、
これらのことから分かるだろうけれど。

逆に失速を防ぐには、
これから書こうとすることの準備を、
今より前の展開に、折り込み済みにしておくように、
その場でリライトするのが、
多少おかしなことになっても、
最善手かもだ。
(また全体でリライトするときにちゃんと手を入れればいいだけのことだ)

つまり、失速の原因は、手のないアドリブである。
posted by おおおかとしひこ at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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