小説の入門書には、こういう逸話が引用されることがある。
小説の書き方がわからない男が、
とにかく書いてみようと、独学でまず一冊、苦労の末書いた。
最初はひどいものだったが、二冊、三冊と書くにつれ上手くなり、
三冊目を書き終えた頃には、「大体分かった」と言って、
そのまま作家になったという。
小説に決まった学び方などないのだ、という意味合いや、
結局才能かよ、という意味合いでよく出てくる。
実在の人かも分からないし、たとえ話かも知れない。
問題は、本三冊が何万字かということだ。
小説文庫一冊の基準は10万字という。
つまり30万字書けば、一通り上達するという仮説だ。
これを自分に当てはめてみて驚いた。
僕は「てんぐ探偵」がはじめて書いて人に見せた長編小説だが、
分かってきたぞ、というのが、
第29話「町工場」(妖怪キックバック)あたりからだったからだ。
それがちょうど、30万字前後なのである。
(プラマイ3万字ぐらいは誤差範囲としよう)
今丁度、計16話の自選集に作り直している真っ最中で、
改めて1話の下手くそぶりを痛感している。
それに比べ、「町工場」や「見える友達」(第40話ユーレイの話)は、
小説としての格(小説としての文章力)が上がっていることが、
素人目にも分かるのである。
30万字仮説、あってるんじゃないかなと、経験者は思う。
(今のところの実感で、もっとあとから見れば、
最終集すらも酷いものかも知れないが)
ああでもない、こうでもないと悩むのなら、
さっさと30万字書いちまえ。
才能がなけりゃそこにたどり着けないから、
安心して筆を折れ。
どうにかして30万字の彼岸にたどり着けば、
概ね泳ぎ方は分かったと言えるのではないかなあ。
僕はそこまで、プロットから数えて一年半かかった。
既に脚本の基礎は僕はあったから、
ずぶの素人からはじめるなら、
三年とか五年ぐらいはチャレンジ期間と考えてもいいかもね。
脚本に話を戻そう。
30万字仮説は、成立すると思う。
僕が脚本が自由に書けるなと感じるまでに、
やはり二時間映画6本分は書いた気がするからだ。
(オトギセヴン(未発表)、毎日かあさん、ゴーゴーミニスカート、
風魔1、2、5、6、9、10、12、13話、いけちゃんとぼく。
何度も書くが、いけちゃんは成功と失敗が半ばしている。
それは僕が、まだ自由に書ける量をこなしていなかったからかもだ)
もしあなたがプロになりたいのなら、
アマチュア時代に、二時間6本を書きたまえ。
7本目が、デビュー作になるだろう。
2015年09月08日
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