2015年09月08日

30万字仮説

小説の入門書には、こういう逸話が引用されることがある。

小説の書き方がわからない男が、
とにかく書いてみようと、独学でまず一冊、苦労の末書いた。
最初はひどいものだったが、二冊、三冊と書くにつれ上手くなり、
三冊目を書き終えた頃には、「大体分かった」と言って、
そのまま作家になったという。
小説に決まった学び方などないのだ、という意味合いや、
結局才能かよ、という意味合いでよく出てくる。

実在の人かも分からないし、たとえ話かも知れない。
問題は、本三冊が何万字かということだ。

小説文庫一冊の基準は10万字という。
つまり30万字書けば、一通り上達するという仮説だ。


これを自分に当てはめてみて驚いた。
僕は「てんぐ探偵」がはじめて書いて人に見せた長編小説だが、
分かってきたぞ、というのが、
第29話「町工場」(妖怪キックバック)あたりからだったからだ。

それがちょうど、30万字前後なのである。
(プラマイ3万字ぐらいは誤差範囲としよう)

今丁度、計16話の自選集に作り直している真っ最中で、
改めて1話の下手くそぶりを痛感している。
それに比べ、「町工場」や「見える友達」(第40話ユーレイの話)は、
小説としての格(小説としての文章力)が上がっていることが、
素人目にも分かるのである。

30万字仮説、あってるんじゃないかなと、経験者は思う。

(今のところの実感で、もっとあとから見れば、
最終集すらも酷いものかも知れないが)


ああでもない、こうでもないと悩むのなら、
さっさと30万字書いちまえ。
才能がなけりゃそこにたどり着けないから、
安心して筆を折れ。

どうにかして30万字の彼岸にたどり着けば、
概ね泳ぎ方は分かったと言えるのではないかなあ。
僕はそこまで、プロットから数えて一年半かかった。
既に脚本の基礎は僕はあったから、
ずぶの素人からはじめるなら、
三年とか五年ぐらいはチャレンジ期間と考えてもいいかもね。


脚本に話を戻そう。
30万字仮説は、成立すると思う。

僕が脚本が自由に書けるなと感じるまでに、
やはり二時間映画6本分は書いた気がするからだ。
(オトギセヴン(未発表)、毎日かあさん、ゴーゴーミニスカート、
風魔1、2、5、6、9、10、12、13話、いけちゃんとぼく。
何度も書くが、いけちゃんは成功と失敗が半ばしている。
それは僕が、まだ自由に書ける量をこなしていなかったからかもだ)

もしあなたがプロになりたいのなら、
アマチュア時代に、二時間6本を書きたまえ。
7本目が、デビュー作になるだろう。
posted by おおおかとしひこ at 14:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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