2015年09月15日

邦画は死んだのか?

みんな薄々気づいている。

そこそこ売れた原作と、売れてる芸能人を組み合わせて、
その芸能人のプロモーションにはなるけれど、
「本当に面白かった映画」にならず、
失望し続けていることに。

現状の映画の楽しみ方が、何かとの答えあわせでしかなく、
人生に影響したり、爆発的に感情が揺れるような、
傑作を楽しむものでないことに。
女子供は騙せたかも知れない。
だがそれもそろそろばれてねえか、ということに。

どうしてオリジナルで、見たこともない、
面白い映画が作られないのだろう?
脚本家や監督の才能の問題なのだろうか?


映画は興行である。
映画は作品である。
映画は投資である。

僕は、このうち投資というものの比重が、
大きすぎるような気がしている。


あなたが投資家だとする。
映画に詳しくない。
何に投資する?

鉄板を教えてくれ、と必ず言うだろう。
損するリスクがなくて、必ず儲かる物件を紹介してくれと。
映画への投資は何千万から億単位だ。
びびるのもよく分かる。

じゃあ、映画に詳しくない人が、
理解できる映画の企画書の内容って?

人気原作で「内容は保証」されていて、
数字(視聴率、ファン数)を持っている人気芸能人が出て、
という要素で判断しないだろうか?

仮に、新人監督のオリジナル脚本を読んで、
いかにそれが感動し、これを作るべきだと思っても、
他の人に
「それはあなたの主観に過ぎない。
人気原作は○○部売れ、人気芸能人は○○人のファンがいる」
と客観的数字を出されたらどうするか?

主観に過ぎない印象に頼らず、客観的数字を頼るのではないか。

だとすると、あなたは映画の投資をやめたほうがいい。

映画は作品である。
観客は、主観的な感動をしに来るのである。
それが、脚本に書いてあるのである。


嘘だと思うなら、
実写「進撃の巨人」を見るといい。
人気原作、アニメ化も好評、このマンガがすごい第一位、
人気芸能人、三浦春馬、水原希子、石原さとみ他オールスターキャスト。
しかも主題歌は今人気のセカイノオワリ、
監督は特撮の達人樋口真嗣で、軍艦島ロケまでするって。

この要素だけで見るならば、
どう考えても鉄板物件だ。50億の荒稼ぎ見積もりも分からないではない。

しかし中身が糞なのは、火を見るより明らかだ。
このつまらなさは、300%脚本の責任である。
末代まで祟られよ。


つまり、
映画とは作品であるべきだし、
観客は作品を見に来て、
若干興行で(はやりものとして)来ている。
投資には関係ない。

なのに、それをないがしろにして投資をするから、
間違いが起こりまくっているのだ。


30年前の漫画原作。
オンエアはU局のみ。
予算は安いし、新人俳優ばかり。
CGはしょぼいし、木刀のチャンバラのみ。
メイン監督はCMではならしたかも知れないが無名の新人。
しかも脚本まで書く(もう一人セイザーの人が入っているが)。
主題歌は新人バンド。
しかも腐女子向けで舞台化決定。
製作委員会は東宝、アニプレックス、ソニーミュージック、
コスプレ衣装のコスパティオ。

これのどこに傑作の匂いを感じろというのか。
投資から見れば、脚本を読まない限り、
失敗の物件だ。
これが、傑作ドラマ「風魔の小次郎」の、客観的条件だ。


客観的条件は、映画のガワだ。

主観的感動が、その映画の中身だ。


主観的感動には、投資が行われない。
そして投資は、鉄板を求める。

このシステムが続く限り、邦画は死ぬ。
事実死んでるし、腐って縮小していくだろう。
80年代に邦画は死んだと言われたが、
今その悪夢が再び未来に横たわっていると、皆が感じている。

僕は、
あらたな投資の仕組みが出来たとき、
邦画は息を吹き返すのではないかと思う。


俺は面白い中身を書く。
投資のことを考える製作総指揮、
興行のことを考えるプロデューサー、
出てこいや。

そしてその三角形を繋ぐのは、一冊の脚本しかない。
だから僕は脚本のことについて、
これだけのことを書いているのである。
posted by おおおかとしひこ at 12:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「カメラを止めるな!」もやっぱり糞だったので、つまらない理由は他にあると思いますよ。
Posted by おおおおかさばき at 2018年12月20日 11:12
おおおおかさばきさんコメントありがとうございます。

「カメラを止めるな!」は、並の映画で、
きちんと作られた優良作かと。
ただ先行する作品の模倣が多く、
それを指摘しない批評家には問題があると思います。
これらを傑作というステマが糞だと考えます。
ということは糞はどこにあるんでしょう。
Posted by おおおかとしひこ at 2018年12月20日 12:54
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