2015年09月16日

ブロックの冒頭は、そのブロックの推進力

脚本は入れ子構造になっている、
などと言われる。
全体は一幕二幕三幕で出来ていて、
その中の一幕の中にまた一幕二幕三幕があり、
またその中に…などと説明される。

僕は昔からこれがさっぱり掴めなくて、
ただのイメージだろうと訝っていた。

最近ようやく自分の言葉になった。
結論から言うと、こういった入れ子構造は、間違いだ。
「ブロックの冒頭に、そのブロックの推進力がある」
ということと、
「お話は、いくらでも小さなブロックに分割出来る」
ということが正しい。


脚本のもっとも大雑把なブロック分けは、
3ないし4ブロックである。

それぞれ、一幕(30分)、二幕(60分)、三幕(30分)、
または、
一幕、二幕前半、二幕後半、三幕(各30分)に、
それぞれブロック分けする考え方だ。

各ブロックに尺(すなわちページ数)が決まっているところが、
三幕構成理論の肝であり、
だから僕はこれを楽譜によくたとえる。


さて、三幕構成理論はここまでの大枠しか示しておらず、
ここから先の細かなブロック構成は、
それぞれのストーリー、それぞれの作者に委ねられる。
1ブロック30分、ということはまずなく、
たいていそれぞれは数ブロックに分かれるものだ。
ブロックの単位はシーンかも知れないし、シークエンスかも知れない。
いずれにせよ、あなたがブロック分け出来る数が、その数だ。

例を、書くのが最も困難な、
二幕前半に絞って以下をすすめよう。


たとえば、二幕前半が、
7分、15分、8分の3ブロックで書けたとしよう。

この時の各ブロックの役割を、
「ブロックの冒頭部が、そのブロックの推進力になるように書く」
という原則を守ると、整理しやすいのである。

つまり、7分のブロックは、以後の15分と8分のブロックの、
推進力になるように書かれているとよい。

推進力になる、とは、
興味が出てきて、この後を楽しみにするようにする、ということだ。
具体的には、そのブロックの、最初の焦点が発生するということだ。
いったいこれはどうなるんだろうと思わせ、
その後どうなるか心配に、楽しみになる焦点を発生させ、
ターニングポイントでますます先を予測させづらくし、
あるいは予測させて期待通りに答え、
「今これが心配事である」ということに、夢中にさせればいい、
ということだ。

7分のブロックは、以後の15、8分ブロックの推進力になるように書けばいい。
もちろんこれはこの先何が起こるか、
プロット(計画)がしっかり出来ていてはじめて可能なことである。

ひとつ上の大構造を眺めよう。
一幕は、二幕、三幕の推進力になるように書けばよい。
ひとつ下の構造を眺めよう。
7分のブロックが更に4つに分解されるとすれば、
第一ブロックでは、残りの3ブロックへの推進力になるように書けばいい。

具体的には、
ここがどこか設定することや、
誰がどのような目的で何をしようとしているかということや、
今何が緊急か、などの基本的設定や、
今全体のどのような文脈での焦点か、
を分かりやすくしたり、逆に混乱させたり、
あるいは以後に使う伏線を引いておくといい。

つまり、7分のブロックが、
2、1、2、2分のブロックに別れたとすると、
最初の2分で、残りの5分の推進力になるように書けばよく、
この7分全体で、二幕前半の推進力になるように書けばよく、
二幕前半全体で、二幕後半の推進力になるように書けばよい。

そういう入れ子だけを、気にするといいだろう。

さらに細かく見てもいい。
その2分のブロックが、3つに分けられるとすれば、
その最初のブロックは、この2分全体の推進力になればいい。
それぐらいごく短いと、
たとえば一行の台詞だったり、
最初の引き絵だったり、
何かのアップだったり、
何かの説明かも知れない。

冒頭は、そのブロックの推進力。
以降の推進力が設定され終わったときが、
冒頭の終わり。
そう考えるならば、冒頭の役割がよく分かるかも知れない。

ハイ冒頭部終わりました、
以後この方向で話を進めてください、
という方向性の発生が、冒頭部の役割だ。
(もちろんその最初の方向性は、
以後のターニングポイントによって、
あっちこっちに変化していく)



例えばトップカットは、映画全体の冒頭部であり、
一幕全体の冒頭部であり、
一幕数ブロックの冒頭部であり、
ファーストシーンの冒頭部であり、
ファーストシーンの第一ブロックの冒頭部だ。

ファーストシーンが5カットで構成されるならば、
ファーストカットは2、3、4、5カットに対する、
推進力になっていればいい。

さて、ファーストカットのことはすぐ分かるのだけれど、
二幕前半ではこのことをすっかり忘れている。

二幕前半第二ブロックの15分という文脈で見たとしても、
その15分の冒頭は、その15分を見続けるための、
最初の推進力になっていなければならない。

それは一幕第二ブロックでも、
二幕後半第一ブロックでも、
三幕第三ブロックでも、同じだ。
常に、そのブロックの冒頭が、
以後の推進力になるように、ブロック冒頭を作るといい。

いちいちもの凄いツカミを作る必要はない。
ファーストカット以外は、
以前までの文脈というものが存在する。

その文脈を踏まえた上で、
次の新しい文脈が興味深く楽しめるような、
推進力を作っておくだけでいいのだ。
そもそも十分な推進力がそれまでにあれば、
場所の設定だけでも済むかも知れないね。


推進力とは、物語の勢いとか、
観客のストーリー展開への興味とか、
そういう、
形でとらえられないものの名である。

あなたは、各ブロックの冒頭部を、
リライト時にチェックすることが出来る。
このブロックの推進力が生まれるのはどこか?

いつまで経っても生まれていないのなら、
そこが退屈ポイントだ。



ブロックの切れ目を入れよう。
大きく、三幕に区切ろう。
各ブロックを、各ブロックに区切ろう。
さらに各ブロックに区切ってもいい。

それぞれの階層の冒頭部で、
以後の推進力が生まれているかどうか、
あるいは前の推進力をさらにブーストしているかどうかを、
チェックしてみるといい。

大体、第一稿時に上手く書けずに、
勢いで誤魔化したところが、
そういうのが上手くいっていない所であることが多い。

あるいは、リライトを重ねまくった、
フランケンシュタインのような継ぎ接ぎ脚本もそうだ。


スムーズな加速を、冒頭部でしよう。
まずはどの冒頭部がどのブロックの冒頭部なのかを意識しよう。
そしてその勢いを、以後コントロールしていこう。


で、実のところ、第一稿執筆時はここまで詰めきれない。
これは、リライト時に特に気にすることかも知れない。
posted by おおおかとしひこ at 14:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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