脚本は入れ子構造になっている、
などと言われる。
全体は一幕二幕三幕で出来ていて、
その中の一幕の中にまた一幕二幕三幕があり、
またその中に…などと説明される。
僕は昔からこれがさっぱり掴めなくて、
ただのイメージだろうと訝っていた。
最近ようやく自分の言葉になった。
結論から言うと、こういった入れ子構造は、間違いだ。
「ブロックの冒頭に、そのブロックの推進力がある」
ということと、
「お話は、いくらでも小さなブロックに分割出来る」
ということが正しい。
脚本のもっとも大雑把なブロック分けは、
3ないし4ブロックである。
それぞれ、一幕(30分)、二幕(60分)、三幕(30分)、
または、
一幕、二幕前半、二幕後半、三幕(各30分)に、
それぞれブロック分けする考え方だ。
各ブロックに尺(すなわちページ数)が決まっているところが、
三幕構成理論の肝であり、
だから僕はこれを楽譜によくたとえる。
さて、三幕構成理論はここまでの大枠しか示しておらず、
ここから先の細かなブロック構成は、
それぞれのストーリー、それぞれの作者に委ねられる。
1ブロック30分、ということはまずなく、
たいていそれぞれは数ブロックに分かれるものだ。
ブロックの単位はシーンかも知れないし、シークエンスかも知れない。
いずれにせよ、あなたがブロック分け出来る数が、その数だ。
例を、書くのが最も困難な、
二幕前半に絞って以下をすすめよう。
たとえば、二幕前半が、
7分、15分、8分の3ブロックで書けたとしよう。
この時の各ブロックの役割を、
「ブロックの冒頭部が、そのブロックの推進力になるように書く」
という原則を守ると、整理しやすいのである。
つまり、7分のブロックは、以後の15分と8分のブロックの、
推進力になるように書かれているとよい。
推進力になる、とは、
興味が出てきて、この後を楽しみにするようにする、ということだ。
具体的には、そのブロックの、最初の焦点が発生するということだ。
いったいこれはどうなるんだろうと思わせ、
その後どうなるか心配に、楽しみになる焦点を発生させ、
ターニングポイントでますます先を予測させづらくし、
あるいは予測させて期待通りに答え、
「今これが心配事である」ということに、夢中にさせればいい、
ということだ。
7分のブロックは、以後の15、8分ブロックの推進力になるように書けばいい。
もちろんこれはこの先何が起こるか、
プロット(計画)がしっかり出来ていてはじめて可能なことである。
ひとつ上の大構造を眺めよう。
一幕は、二幕、三幕の推進力になるように書けばよい。
ひとつ下の構造を眺めよう。
7分のブロックが更に4つに分解されるとすれば、
第一ブロックでは、残りの3ブロックへの推進力になるように書けばいい。
具体的には、
ここがどこか設定することや、
誰がどのような目的で何をしようとしているかということや、
今何が緊急か、などの基本的設定や、
今全体のどのような文脈での焦点か、
を分かりやすくしたり、逆に混乱させたり、
あるいは以後に使う伏線を引いておくといい。
つまり、7分のブロックが、
2、1、2、2分のブロックに別れたとすると、
最初の2分で、残りの5分の推進力になるように書けばよく、
この7分全体で、二幕前半の推進力になるように書けばよく、
二幕前半全体で、二幕後半の推進力になるように書けばよい。
そういう入れ子だけを、気にするといいだろう。
さらに細かく見てもいい。
その2分のブロックが、3つに分けられるとすれば、
その最初のブロックは、この2分全体の推進力になればいい。
それぐらいごく短いと、
たとえば一行の台詞だったり、
最初の引き絵だったり、
何かのアップだったり、
何かの説明かも知れない。
冒頭は、そのブロックの推進力。
以降の推進力が設定され終わったときが、
冒頭の終わり。
そう考えるならば、冒頭の役割がよく分かるかも知れない。
ハイ冒頭部終わりました、
以後この方向で話を進めてください、
という方向性の発生が、冒頭部の役割だ。
(もちろんその最初の方向性は、
以後のターニングポイントによって、
あっちこっちに変化していく)
例えばトップカットは、映画全体の冒頭部であり、
一幕全体の冒頭部であり、
一幕数ブロックの冒頭部であり、
ファーストシーンの冒頭部であり、
ファーストシーンの第一ブロックの冒頭部だ。
ファーストシーンが5カットで構成されるならば、
ファーストカットは2、3、4、5カットに対する、
推進力になっていればいい。
さて、ファーストカットのことはすぐ分かるのだけれど、
二幕前半ではこのことをすっかり忘れている。
二幕前半第二ブロックの15分という文脈で見たとしても、
その15分の冒頭は、その15分を見続けるための、
最初の推進力になっていなければならない。
それは一幕第二ブロックでも、
二幕後半第一ブロックでも、
三幕第三ブロックでも、同じだ。
常に、そのブロックの冒頭が、
以後の推進力になるように、ブロック冒頭を作るといい。
いちいちもの凄いツカミを作る必要はない。
ファーストカット以外は、
以前までの文脈というものが存在する。
その文脈を踏まえた上で、
次の新しい文脈が興味深く楽しめるような、
推進力を作っておくだけでいいのだ。
そもそも十分な推進力がそれまでにあれば、
場所の設定だけでも済むかも知れないね。
推進力とは、物語の勢いとか、
観客のストーリー展開への興味とか、
そういう、
形でとらえられないものの名である。
あなたは、各ブロックの冒頭部を、
リライト時にチェックすることが出来る。
このブロックの推進力が生まれるのはどこか?
いつまで経っても生まれていないのなら、
そこが退屈ポイントだ。
ブロックの切れ目を入れよう。
大きく、三幕に区切ろう。
各ブロックを、各ブロックに区切ろう。
さらに各ブロックに区切ってもいい。
それぞれの階層の冒頭部で、
以後の推進力が生まれているかどうか、
あるいは前の推進力をさらにブーストしているかどうかを、
チェックしてみるといい。
大体、第一稿時に上手く書けずに、
勢いで誤魔化したところが、
そういうのが上手くいっていない所であることが多い。
あるいは、リライトを重ねまくった、
フランケンシュタインのような継ぎ接ぎ脚本もそうだ。
スムーズな加速を、冒頭部でしよう。
まずはどの冒頭部がどのブロックの冒頭部なのかを意識しよう。
そしてその勢いを、以後コントロールしていこう。
で、実のところ、第一稿執筆時はここまで詰めきれない。
これは、リライト時に特に気にすることかも知れない。
2015年09月16日
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