2015年09月21日

監督と脚本家と役者とスタッフの責任範囲

よくある質問にまとめて答えてみる。

この演技がダメなのは、脚本?監督?役者?
この台詞がダメなのは、脚本?監督?役者?
この絵がダサダサなのは、役者?監督?カメラマン?

この話が詰まらないのは、脚本?監督?役者?


この演技がダメなのは、脚本?監督?役者?
この台詞がダメなのは、脚本?監督?役者?

ここでは、演技と台詞を分けよう。
一般的には演技に台詞も含まれるが、
議論のために、特別に、
台詞以外の全てを演技という言葉で示すことにしよう。

さて、写真では誤魔化しが利いても、
動画では誤魔化しが利かないことに、
そろそろみんな気づいているだろう。
不細工が奇跡の一枚を撮っても、
動画ならバレバレだ。
モデルがいかに美人でも、
喋らせたら(ツイッターさせたら)アホ丸出し、
ということもよくあるよね。

つまり、時間軸を持つことは、その中の一瞬よりも、
沢山の情報を持つ。

演技は写真のようなもので、
台詞は時間軸を持つものだ。

EXILEのアキラは、写真はかっこいいし、男前だし、
ダンスや写真は素晴らしい。
しかしそこまでだ。
台詞を喋らせたら、アホ丸出しがばれてしまう。

そういう場合は、役者の責任だ。

しかし、どんなにいい役者を使っても、
監督が才能がなければ、
役者のいい部分が出ない。
せっかくいい役者使ってるのに勿体ない時があるのは、
その役者のせいではない。
監督か、脚本がよくない。

全くダメな脚本は、
どんなに名監督、名役者がやってもダメだ。
レストランのメニュー程度の長さなら、
役者の技量でなんとかなるが、
二時間は無理である。

名監督は、ダメな脚本を書き直す権利があるため、
名脚本が必ずしも脚本家によるものとは限らない。

よい演技は、一瞬なら、役者だけでつくれる。
よい台詞は、一場面なら、役者だけでつくれる。
ダメな役者でもダメな監督でも、よい演技と台詞になるのは、
完全に脚本のお陰だ。
その好例はドラマ「風魔の小次郎」を見るがよい。

ダメな演技と台詞は、役者または監督または脚本のせいだ。
それがずっと続くのなら、大抵は脚本が悪い。

全編通してではなく、一部が悪いなら、
役者または監督の責任。


この絵がダサダサなのは、役者?監督?カメラマン?

カメラマンと監督のセンスの問題である。
しかし、予算の壁を忘れてはならない。
映画は、機材代が高いと思われているが、
デジタルになって大差なくなってきた。
本当にかかるのは、人件費だ。
ハリウッドのCGスタッフ300人以上と、
日本のCGスタッフ50人ぐらいとを見比べればいい。
月30万一人に払うとしよう。
1500万と、9000万の差だ。
そして日本のCGは一ヶ月、ハリウッドは半年。
1500万と5億4000万の差がある。
CGは単価が分かりやすいが、
現場には、カメラマンだけでなく、特機部、
照明部、美術部、助監督チーム、制作進行が必要だ。
部やチームという名前から察せられるように、
沢山の人が動く。
現場の人件費が、そのまま絵のリッチさになる。

写真は誤魔化せる。奇跡の一枚と、Photoshopで。
動画は誤魔化しが利かない。
Photoshopの動画版は、普通CG扱いである。


さて、ということは、金を握るのは誰か?
プロデューサーだ。
製作というクレジットが多い。
プロデューサーの仕事は、よく理解されていない。
この程度の企画に対し、
これぐらいの金と製作期間を決め、
そのスタッフィングをするのが、
仕事の本質だと思うとよい。
企画の読み、上がりの読み、それにいくらかけるかは、
主にプロデューサーが決める。
監督やカメラマンが増額を要求しても、プロデューサーがノーならノーだ。
スタッフは、降りるか我慢してやるかのどちらかだ。


この話が詰まらないのは、脚本?監督?役者?
一に脚本。二に脚本。三に脚本。

ドラマ「風魔の小次郎」を見たまえ。
二人の監督が作風がバラバラでも、
新人役者ばかりでも、
脚本が面白かったから面白かったのだ。
(舞台版のつまらなさと比較せよ)
それらを総合的に予算配分した、プロデューサーの読みが当たったとも言える。
(当たり前だが、プロデューサーは、
脚本を脚本家に頼むのであり、自分では書けない。
この人に頼む、というコネでしかない。
風魔の脚本的成功は、僕がたまたまそこにいたから、
ということだと思う)

糞進撃は誰のせい?糞脚本家のせい。
糞ガッチャマンは誰のせい?糞脚本家のせい。
糞アンフェアthe endは誰のせい?糞脚本家のせい。


日本映画の最大の弱点は、脚本だ。

もはや俺は使命感で、脚本の秘密を暴露している。
早くみんな育ってくれ。
十年後に日本映画はあるのかな?
それまでに君たちは活躍するのか?
posted by おおおかとしひこ at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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