2015年09月23日

一言で落とせ、しかし一言だけでは落ちない

決め台詞というものがある。

この一言で惚れてまうやろ、となったり、
悪を倒したあとにびしりと決める文句だったり、
大爆笑のコントのあとの、最後の落ちだったり。

それは、その一言を書けば万事うまくいくのか?
その一言がすごい名文句ならいいのか?
そんな名文句をどう書くのか?

そう思ってるのなら、脚本のことを何もわかっちゃいない。



名台詞は、それまでの流れのほうがはるかに大事だ。

「惚れてまうやろー」だって、
モテナイ男が、とあるシチュエーションで、美人に言われる、
というそれまでがあってはじめて成立する。

あるいは美人ヒロインが主人公に、たった一言で惚れるわけがない。
それまでの二人で関係してきたあれこれがあるからこそ、
「強い善人だってこと」という一撃が功を奏すのだ。(ドラマ風魔10話)

俺が、通りすがりの美人に、いきなり言ってもだめだ。
イケメンならいけるかも知れないが、
この人頭おかしいと思われるのが落ちである。

どんなかっこいい名台詞でも、それまでの流れがあるからこそだ。


「ここで、こう言われたい」という文脈をつくりあげたうえで、
その一言をずばりと言えばよろしい。


なお、それは、短いほどいい。
なぜなら、人はそんなに長い台詞は覚えられないからだ。
歴史上の名台詞は「君の瞳に乾杯」(カサブランカ)
ぐらいの短さであると思ったほうがいい。

さんまの恋の空騒ぎの冒頭に出てくるような名文句は、
書籍からの写しであり、決して耳で聞いて覚えた言葉ではないことに注意しよう。
つまり長すぎる。


名台詞は、一息でしゃべれる長さで。
それまでの流れ=「つくり」が9割。
posted by おおおかとしひこ at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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