baby in carというシールを貼ったクルマを見て、
なんで冠詞がつかないんだろう、
短くする為の省略ということで納得してるんだろうか、
と調べてみて分かったことがある。
この表記は和製英語なのだそうだ。
baby on boardが正しい英語版なのだそうだ。
また疑問が出る。なんで冠詞がつかないんだろう。
で、英語の凄さを垣間見ることになった。
on the boardのように「この乗り物にいますよ」
にはならない理由。
on boardで、「乗り物で移動している」という、
手段を表すのである。
そう言えば中学ぐらいのときに習った、
by busやby carなどのときに冠詞がつかないことを思い出させられた。
このときのbusやcarは、具体的な名詞、加算名詞ではなく、
抽象名詞、不加算名詞だったのであった。
「このバスで来た」のではなく、「バス移動」を示す言葉なのだ。
つまり英語では、具体名詞と抽象名詞が、冠詞の有無で明確に分かれている。
我々日本人にはピンと来ない習慣だ。
go to the seaは海へいく、
go to seaは船乗りになる。
go to the schoolは学校へいく、
go to schoolは学生である、
という意味になるのは、教科書では習った気がするが、
全く応用出来てないもののひとつだね。
さて本題。
英語にはつまり、短い言葉で「動き」を示す言葉があるのだが、
我々日本語にはそれがない、ということ。
baby on boardと「赤ちゃんが乗っています」
では、日本語の方が伝達が遅いこと。
この微妙な伝達の遅れが、
「なんで赤ちゃんが乗ってることを報告されなければならんのだ」
という我々日本人の微妙なイラつきに繋がっていると思う。
日本語には、動きを表す手段が少ない。
だから動きを表すときは、言葉を組み合わせて示す必要がある。
だから、動きを表すときは言葉が長くなり、伝達速度が遅れる。
中学ぐらいで、ingの訳が、「〜している最中である」と習って、
もたついた表現だなあと思ったことがある。
英語の感覚のingのスピードに、日本語がついてこれてない感じがしたものだ。
だからか、80年代には、「恋、ing」みたいなキャッチコピーが流行った。
「恋、真っ最中!」「私まだ、恋の半分しか知らない。」とかよりも、
スピード感がある言葉に見えたからだ。
80年代は重厚長大から抜け出した軽薄短小の時代だった。
そのスピード感の気分を、恋ingなんてのが代表していたものだ。
(今ではダサイ言葉だけど、当時は新しかったんだよ!
新しいからこそ、古びるのも速いのさ!)
スピード感だけで言えば、
baby on boardは、「赤ちゃん、いるよ」ぐらいでなければならない。
あるいは「赤ちゃん移送中」か。
それにしても何でそんな報告されなければならんのだ、
は残るのだけど。
(万が一事故の際は、大人が言えない時もあるので、
見つけてください、の意味らしい。そう考えるとちょっと怖いね)
日本語でスピード感あるように動きを表すことは、困難である。
動きを表す言葉が、組み合わせて表現することが多いからだ。
スポーツ実況も、実は名詞が多い。
今現在完了した行為を名詞で報告する。
それだけで、日本語は、根幹に動きを含まず、
動きは副概念だという証拠だ。
だから、動きをとらえる脚本を書くことは、
特別難しいのではないかなあ。
動きが起こる瞬間、その最中、動き終わりをとらえる言葉が、
貧弱なのだから。
in motion, ing, have doneぐらいに、
根幹にある言葉では多分示せない。
日本人としての愚痴だけどね。
あなたは、逆に、日本語で考えてはいけない。
僕が脚本を書くときは、頭の中に映像が浮かぶ。
映像というと2次元だから違う。
3次元空間が浮かんで、
そこで人々が動く。
思い通りに動かなければそれをつかんで、動かす。
頭の中の人形遊びのようなものである。
その時日本語で考えていない。
あとはそれを記録するときに、日本語を使うだけである。
プロットに至る前のぐにゃぐにゃメモを何度か公開してるけど、
日本語よりも、矢印とか線とかが多いと思う。
それは、動きを記録しているのである。
日本語は、動きの記録に向いていない言語なのだ。
脚本は頭の中に3次元空間を出現させて、
頭の中で動かす、バーチャル人形遊びだ。
そのイメージを頭の中で作り替えたり、バージョン違いを作ることでもある。
記録や整理を、母国語でやる、ぐらいの感覚でよい。
(この辺の感覚が、小説と逆かも知れない。
脚本のト書きは、スピード感が大事で、言葉そのものは大事ではない。
小説は地の文を徹底的に練る。
僕が小説を書くのが上手くないなあと思う理由は、
地の文をト書きぐらい無意識に軽視しているからなのだが)
2015年09月29日
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