2015年10月22日

物語世界のつくりかた

物語世界は、架空の世界なのに、
嘘臭くてはいけない。
そこにすむ人間のリアリティーは、
リアルでなければならない。
反応は本物っぽく、沢山の異なる人々がリアルに生活していなければならない。
全てが実在し、無矛盾で、何百年も前からそうであるリアルが必要だ。

しかし、それでは詰まらない。
なんの面白味もない、この日常と同じだからだ。

ひとつだけ物語世界のつくりかたのコツを書くとしたら、
一個だけ大嘘をつくこと、だろう。


たとえば、
「この世界では、うんこが喋る」という大嘘をつくとしよう。

うんこが喋るわけないではないか、
というのはナンセンスだ。
これは、うんこが喋る世界の物語なのだ。

この物語世界では、これ以外一切嘘をついてはならない。


うんこが喋る内容はリアリティーがなければならない。
食べたもののことを喋る。
誰と食べたか喋る。
いつ頃小腸を通過し、その頃お前は何をしていたかを喋る。
うんこの性格は、たとえば「本人が流してしまいたい嫌な性格の部分」かも知れない。

流すときは、この世界ではルールがある。
喋るうんこを流すとき、目をあわせてはいけない、というルールだ。
情が湧いてしまうからだ。

そんなある日、あるサラリーマンが、
流れるうんこと目をあわせてしまう。
こうやって彼は深淵に飲み込まれる。

片想いの彼女のうんこと喋るため、
彼は彼女の家のトイレに潜入することに、ならロマンティックコメディ、
犯人の自白を取るため、彼の秘密を知っているうんこを捕まえる法廷劇、
虐待されている子供のうんこを捕まえる正義のヒーローもの、
事故で記憶喪失になってしまった親友のうんこと会話し、
彼の記憶を取り戻す泣ける話、
などなど、
メインプロットはいくらでも思いつけるではないか。


これが大嘘がないリアリティーなら、
たいして面白くない、日常だ。

彼女の思いが分からない男、
犯人の自白を取る法廷劇、
虐待されている子供を助けるヒーロー、
記憶喪失を取り戻す話、
どれも平凡な物語である。

これをあなたが経験すれば、すごい経験になるかもだが、
フィクションの面白さとしては弱いプロットでしかない。


これが、「うんこが喋る」という大嘘で、
突然面白くなるのである。

コメディでも皮肉でも泣けるのでもよい。
とたんに、日常が物語世界に化けるのである。



さて。

あなたの物語世界は、どんな大嘘をひとつつく?

あとは、
それが日常にあるとしてリアリティーを構築すれば、
話なんていくらでも思いつくぜ!



(てんぐ探偵では、「人の心の闇は、妖怪心の闇のせい」
というのが大嘘だった。
天狗や他の妖怪はリアリティー、すなわち伝承された事実に基づいている。
唯一の大嘘が、妖怪心の闇である。

風魔の小次郎は、夜叉編では、「現代に生き延びた忍者一族がいる」というのが大嘘、
聖剣編では、「聖剣」が大嘘。
反乱編が面白くないのは、これに代わる面白い大嘘が思いつけなかったことだね。

ジュラシックパークなら、「恐竜の遺伝子を取りだし復活させられた」、
愛しのローズマリーなら、「心の美醜が見た目の美醜になる催眠術をかけられた」
が大嘘で、傑作のアイデアである)
posted by おおおかとしひこ at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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