人生には、いいときと悪いときがある。
高揚感に溢れ、何をやっても上手くいくときと、
落ち込んでどうしようもなく回らないときを、
行き来するものだ。
人生の基準を「普通」の時に設定すれば、
いいことも悪いこともあるさ、
と考えることが出来るのだが、
調子良かったときを基準にしてしまうと、
殆どの時間、「自分は全盛期から足りない」という思いを味わうことになる。
いつを基準にするかで、自分の人生をどう認識するかが相対的に変わってくる。
さて、物語だ。
物語というものは、
高揚感に溢れ、前のめりで、
ラッセル車のように展開を切り開き、
怒濤のような流れの末に、
神に出会ったようなカタルシスを与えなければならない。
つまり、人生のなかでピークの状態のようなものを、
味あわせなければならない。
だから人は物語を欲するのだ。
ピークでない状態の人達が、
ピークの状態を見て何かを解消するのである。
これは最早ソフトな麻薬である。
アッパーの高揚感を疑似体験する、
合法的な麻薬である。
中毒症状もある。ハマるというやつだ。
禁断症状もある。しばらく映画や漫画を見てないと、見たくてしょうがない。
また、どんどん不感症になって、強い刺激でないと効かなくなってくる。
何も起こらない詰まらない日常から、
麻薬的な高揚感の非日常へ、
あなたはトリップをさせなければならない。
あなたの作中の、高揚感に溢れる所はどこか。
(単純なオレツエー以外の所がいい。
オレツエーは単純な全能感であり、
そんなものはコロコロコミックにも書いてある、
幼児向けの麻薬であるからだ)
物語全体が進む面白さはどこか。
主人公がこれまでの敗北から逆転し、
これまでの伏線がひとつに束ねられて、
世界の支配権を握るのはどこか。
そして全ての問題が、鮮やかに、見事に解決する、
オリジナリティ溢れるカタルシスの瞬間は。
あなたは、物語という麻薬を作るのだ。
どんな凄い魔力を作っても逮捕されない、
合法の麻薬をだ。
(社会的タブーに抵触すると、禁書扱いされるけど、
それさえしなければ合法だ。
たとえばディズニーは注意深くつくられた、合法麻薬だ)
それは悪魔に魂を売らないと出来ない?
いやいや、簡単だよ。
人間の業を深く理解し、
人間の社会を深く理解し、
奇抜な発想をひとつだけ思いつけば、
あとはコツコツ作るだけでいい。
悪魔に魂を売るのは、一足飛びに作ろうとするからであり、
十年かけて身長分原稿用紙を書き潰して鍛練すれば、
誰にでも出来るようになるよ。
あなたは、大人向けの麻薬を作っている。
それは、その作品でしか味わえない、
オリジナルの高揚感のことである。
2015年11月05日
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