2015年11月05日

ストーリーとは、ロジックである

と、極論してみよう。


ストーリーの根幹は何か。
事件とその解決である。

ここで、登場人物のキャラの面白さとか、
感情移入とか、感動とか爆笑とかの感情部分を、
全部脇に削ぎ落として置いておく。

事件とその解決だけを、
中落ちを削ぎ落としたマグロの骨のように眺めてみよう。

それは、論理的でなければならない。

こういう事件がこういう理由で起きた。
従って、最もよい解決は、
このような最終型で、
その為にはこれこれの手順を踏めばよい筈だ。
しかし現実には色々な事情が入り組んでいて、
そう理想通りにいかない、
そこで工夫を凝らし、
時に危ない橋を渡りながら、
合理的な解決法を選択し、
解決に至る。

大体このようなロジックがあるはずだ。


このロジックに反するのを、
ご都合主義(論理的に展開せず、無理矢理がある)や、
デウスエクスマキナ(作中に設定されていない超自然的な解決)、
夢落ち(なかったことにする)などとよぶ。

とくにロジックで組み立てるべき、
ミステリーを考えよう。
たとえばアリバイ崩しや犯人の動機は、
論理的でなければならない。

論理的飛躍があったり、曖昧だったり、無理があったり、
不自然だったり、論理的に矛盾があったり、
理由なき唐突は、
ミステリーとしては落第だ。(あえて狙うのは別)

いわば数学の証明をしなければならないような文脈で、
おかしな証明をするようなものである。
全ての論理はきちんと繋がり、
三段論法や背理法や対偶や帰納法や演繹法や対角線論法などで、
ひとつの行と次の行が繋がり、
前提から結論が導かれなければならない。

ミステリーとは、そのロジック(パズル)を楽しむジャンルだ。
僕は詳しくないので代表例を挙げられないが、
たとえばスリラーの傑作「ソウ」(2以降は駄作)の、
パズルのようなロジックは最高である。


さて、
ミステリーに勿論限らない。
全てのストーリーは、
論理的に展開し、矛盾や飛躍があってはならない。
全ての展開や予測は、ロジックによってもたらされる。


何も難しいことではない。

うんこが漏れそう(事件)
→トイレを探す(論理的行動、その場でするのは社会的死)
→駅のトイレが埋まってた
→待つ
→他のトイレはあるか
→女子トイレ→いやそれはやめておこう
→パチンコ屋→しかし最近のパチンコ屋は監視カメラが
→デパートのトイレへ
→清掃中→次の男子トイレは5階
→階段を登るか、しかし腹に刺激が
→引き返し、清掃中のおばちゃんに「漏れそう!」と言って入れてもらう
→無事、トイレで脱糞(解決)

の、問題から解決までは、
全て論理的に展開している。
矛盾も飛躍もない。


全てのストーリーは、論理的でなければならない。
矛盾や飛躍があってはならない。
全て順接であるべきである。


勿論、人間は感情の生き物であるから、
その論理を越える行動があるし、
それがストーリーの面白さだ。
しかしそれは、「普通そうする」という強固な論理がなければ、
それとの差異を楽しめないのだ。

ロジックとは、抽象的なものである。
つまり、誰がやっても、同じ形であるものだ。
だから主人公がどんな人間であれ、
論理的判断や行動は同じはずなのだ。

上の「うんこ漏れそうストーリー」という極端な例でも、
この論理的構造に、主人公の個性を足すことは可能だ。

あるいは、別の感情を足すことも出来る。
途中で初恋の人と再会するという場面を作ることも出来る。
結構なオッサンが主人公で、
掃除のおばちゃんが初恋の人、という再会を組むことも可能だ。
こうやって、論理的構造に、感情を足していくのである。

ベースになるのは論理的構造だ。
これがグズグズなら、たとえ初恋の人に再会しても、
うんこの話が上手くいかずに終わってしまう。
うんこのメインストーリーラインが、
論理的に破綻していないからこそ、
そこに感情を盛ってゆくことが可能なのだ。



さて。

そのロジックは、
大きく言ってシンプルにするべきであり、
細かくは先の予測できない複雑なものにするべきである。

大きくはシンプルな構造だと、
分かりやすい。想像が膨らみやすい。予想しやすい。

だから、細かくそれを裏切って、複雑にしてゆける。
その複雑さを楽しみ、いい意味で裏切られて、
結局シンプルな結論に達すると、
人はそのロジックを美しいと思う。
背骨が真っ直ぐであるような気分になるからだ。


感情は、その構造に足してゆくのである。

まずあなたは、
ストーリーのロジックを矛盾なく組み立てること。
posted by おおおかとしひこ at 12:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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