という検索ワードで来た方がいたようなので、
とても初歩を書いてみよう。
「笑っていいとも」の「テレホンショッキング」のコーナーが、
ベースになる。
テレホンショッキングは、
3カットのカット割(カメラポジション)の組み合わせである。
タモリのアップ(ヨリ)、
ゲストのアップ(ヨリ)、
二人のツーショット(ヒキ)だ。
基本、
タモリがしゃべるときはタモリのヨリ、
ゲストがしゃべるときはゲストのヨリ、
二人がノリツッコミをするときや、
髪切った?と指差してそうなんですよ、
なんて二人が同じカットにおさまってたほうが、
一発で何してるか分かるときは、
ツーショットにする。
逆に、
二人の間を隠したいときは、
その動作をヨリで撮っておいて、
あとでヒキでネタバラシする。
表情を隠したいときは、
しゃべっているときもヒキで通したりする。
つまり。
ヨリとヒキだけで、
撮るべきサイズがあり、
そのサイズで撮らずに隠すというオプションが必ずある。
これだけだ。
あとは話に応じて、
ここからここまではどのカット(サイズ)で撮るかを決めるのがカット割だ。
ということは、
事前に話が決まっていないと、
ここからここまではアップで、などと決められないのである。
テレホンショッキングでは、
実際には三台のカメラがそれぞれのサイズを狙っていて、
それらは三台のテレビで、監督の前に出されている。
監督は、話の流れを生で聞きながら、
アドリブで、今放送される絵を決めて、
随時切り替える。(スイッチング)
スイッチングは、生放送ならアドリブだ。
つまり長年の勘でやっていて、失敗することもたまにある。
スポーツ中継なども同様である。
スイッチングは特殊な技能で、
生でカット割をするようなものである。
我々が脚本を書き、
その話が事前に決まっているならば、
ベストのカット割で撮ることが可能だ。
この台本の、ここからここまではこのサイズで撮り、
ここからここまではヨリとかヒキとかが決まっている。
それを決めるのは監督であり、
見せることと隠すことを選ぶのである。
よく役者がアドリブをしたがるけど、
カット割の計画にない演技をされても
(たとえばヒキで二人の間の空気を撮りたいときに、顔芸をされても)、
それをとっさに上手く撮ることは出来ない。
生放送なら三台のカメラが同時に狙っている(マルチカメラ)が、
日本式の映画撮影では、カメラが一台であり、
それぞれのサイズを順番に撮っていくからである(シングルカメラ)。
ちなみに三台のカメラは、撮っている絵を収録せず、
スイッチャーに渡すだけなので、
生放送で使われなかった絵はこの世に残らない。
(マルチでしかも収録して、
あとあと編集でカット割を変えることは、
テレビでは殆どない)
ちなみにカメラ一台は家一軒ぐらいの値段だ。
全盛期のとんねるず石橋がフジテレビのカメラを蹴り倒し、
一台ぶっ壊したのは有名だ。
マルチカメラとはいえ、テレビスタジオのそれは数台買ったあとは、
何年も何十年も使うのである。
映画の場合、カメラはレンタルだ。
ざっくり百万円ぐらいだ。(壊れたときの撮影保険含む)
カメラだけでなくカメラマンやカメラアシスタントが必要なので、
人件費もそれなりにチーンである。
従って日本映画はシングルカメラが殆ど、
テレビで自社スタジオ内なら自社マルチカメラ
(スイッチングし、生でカット割されたものを収録)、
ロケならシングルカメラ(各カットを収録してあとで編集)であることが多い。
唸るほどの潤沢な資金前提のハリウッドは、
マルチカメラ(5〜7台で収録しあとで編集)だ。
さて、
結局、カット割は、
撮影現場のカメラシステム、収録後の編集システム、
予算などの物理的条件、
話の計画性とアドリブ性に大きく依存した上で、
いつ、どれをきちんと見せて、
いつ、どれを隠すか決めることである。
テレホンショッキングが楽なのは、
二人が座っているため、
板付き(その場から動かないこと)であることだ。
立っていたら不意に動いたり、二人の位置関係が変わってしまい、
ヒキを挟まないと混乱するからだ。
(わざと混乱させるのならこの限りではない)
立ったり座ったりをしてもカメラの適切な高さは変わるし、
光の当たるところから影に移動されても絞りが追いつかないので、
カットを割るのが普通である。
カメラから距離を変えられてもオートフォーカスは必ずしも追いつかない。
だから、板付きかそうでないかは、カット割にとってとても大きな要素だ。
入門者諸君は、
板付きのテレホンショッキングのカット割で、
まずは適切なカット割(見せるのと隠すのを自在にすること)
を出来るのが当たり前になってほしい。
たとえば実際のテレホンショッキングの会話を書き起こし、
カット割をしてみてもいい。
(今入手しにくいだろうから、たとえば漫才のカット割をしてみてもいい)
実際のカット割と自分のカット割を見比べるのも勉強になる。
それが出来るようになったら、
板付きでない動きつきのカット割が出来るようになろう。
位置関係が分かること、何をやってるのか分かることが最優先。
大抵これが分からないようなカット割になってしまう。
イマジナリラインについても、この段階で学べばいい。
ということで入門編終わり。
脚本家の皆さんは、
自分の台本を実際にカット割してみることをやってみよう。
実際の映画のワンシーンを脚本に書き起こし、
脚本だけを見ながらカット割してみて、
実際のカット割と見比べてみよう。
多分頭の中の想像とずいぶん違うことに気づくだろう。
それで監督業に目覚めてもいいし、
編集業に目覚めてもいいし、
脚本に専念すべきだと思ってもいい。
質問があれば答えます。
実際にホンとコンテの対照表があれば、
それについてコメントも可能です。
2015年11月12日
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