2015年11月17日

大まかなプロットが出来たら、登場人物の空気を吸おう

僕は新作を書くとき、
アイデアが出た→どんな話になるかぐねぐね考える
→どにかく魅力的なオープニングとか、具体的な場面を先に考えて核にする
→全体の骨格を作る、プロットに書き出すか、独自のフォーマットでメモする

まで出来て、全体を俯瞰出来るものを作ったあとは、
登場人物の空気を吸うようにしている。


空気を吸うという感覚は、
その人の吸っている空気のディテールを想像することである。

現在どこのどんな部屋に住んでいるのか。
窓から見える景色や、玄関を出ると何があるのか。
ルーチンになってること。
ルーチンを嫌がるとき何をするのか。
今暑いのか寒いのか。
(書くときの季節が作中の季節感に近いことはよくあること。
僕は冬の話を書こうとしていて、登場人物たちは常に息が白い)
とすると、どんな食べ物を食べるのか。酒は。一人酒か。誰かと飲むのか。
コンビニ飯なのか。

通勤ルートに何があるか。
今スケジュール帳はどうなってて、何を予定して今動いているのか。
仕事持ちなら、名刺を作ってみる。
どういう会社で、他にどういう部署があって、
どういう会社のまたどういう部署と付き合ってて、
あるいは競合会社はどんな感じで、
先輩や後輩や同期や、上司や社長やらは、
どんな感じで、などと考える。

設定というのとは、また違う。
妄想に近い。

その人が実在の人であると思い込めるまで、
実在の空気を纏わせる。

名前や性格や過去、いわゆるコアな設定を作るのは、
実はこのあとだ。

目的や動機は、すでにある。
大まかなプロットがあるからだ。


その人の目線で、
その人の周囲をしばらく生きてみる。
その人がいつも吸っている、
ろくでもない日常の空気を吸ってみる。
その空気がリアルになったら、
その人が実在した証拠だ。

その空気がまだ作り物臭いなら、
周囲のリアリティーを詰めていく。
住んでる町を設定して、そこに散歩しにいくのはとてもよい。
その町の公園やコンビニや、
その人の行きそうな所に行くのはとてもよい。
自分の好みではなく、その人の好みのように行動してみよう。
ああ、その人っぽいな、という「感じ」が分かるまでだ。

勿論、これを主人公だけでなく、
主要登場人物の数だけやるべきだ。
大抵は主人公と対比的な人物像だから、
逆の配置をすればよく、主人公ほどには時間がかからないけど。


煙草を吸うのか。酒の銘柄は。コンビニで何をする。
一人になるためどこへいくか。
一人の時間に何をしているのか。
自分の孤独のことをどう捉えているのか。
これからの人生のイメージ。楽観的か悲観的か。

それらのことが、ありありと実在感があれば、
その人の魂のようなものが出来上がりつつある証拠だ。
(別人格が生まれているのかもね。タルパみたいなことか)

ある部分はあなたと似ているかも知れないが、
全く違う部分もあるだろう。
その全く違う部分を中心に、
また他のディテールを妄想していくと、
あなた自身とは全く違う人格が出来上がると思う。

僕は、今考えている人物の空気を吸うためには、
東京を離れなくてはならない。
取材費の捻出を考え始めているところだ。

とりあえずその県の家賃(東京と大分物価が違う)とか、
地図を引っ張り出して、
不動産サイトでその人の住むだろう部屋を探している。
妥当な感じが分かってきたら、
実際に物件近くをうろうろしてみて、感じを掴もうと思っている。
で、駅前や通勤ルートを、実際にうろうろする予定だ。


こういうのは、シナハンと呼ばれることがある。
ロケハンはロケーションハンティングといって、
ロケ地を探すことだが、
シナハンはシナリオハンティングの略で、
シナリオに使えそうな場所やネタを探しにいくことだ。
実際に使うかどうかは別として、
僕は点じゃないもっと広い何か、空気を吸いに、
その現地へ行きたいものである。

書ける、という確信は、その人が実在の人である、
という感覚を掴むことだと思う。
人によってその感覚は違うかも知れないので、
僕の例を紹介してみた。


自分に近しい設定や過去に経験したもの、
たとえば学生ものや、
僕なら東京の話や大阪京都の話、
映像製作現場や監督や脚本家は、
空気を知っているから書きやすい。

そうじゃない人を書くときは、
空気を吸いにいったほうがいい。

そして、自分と近しいもの以外を書くときに、
新しいスパークが起こるものである。
posted by おおおかとしひこ at 12:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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