ラブストーリーには、大抵ある要素。
誰にも言っていなかった過去の秘密を、言い合うこと。
人と人が仲良くなるには、こういう魔法のかけ方がある。
分かりやすい例はディズニー「塔の上のラプンツェル」
のミッドポイントあたりに見ることができる。
かなり唐突だからだ。
分かっていても、なんだか感情移入してしまうものである。
外に向けている面と内に秘めたもののギャップ、
というギャップ効果もある。
ことはラブストーリーに限らない。
たとえば少年たちの秘密基地や、
親に黙って死体を探しにいくことは、
それ自体が秘密の共有だ。
(スタンドバイミー)
「盗んだバイクで走り出す」のは、
主人公と観客の間の秘密の共有だ。
その世界の他の人は、そのバイクが盗難車かどうか知らない。
つまり、
主人公と我々は秘密を共有して、
少し主人公と仲良くなっている。
結果的に、尾崎豊が好きになる。
秘密の共有は、大抵悪いことが多い。
誰にも言っていなかったこと、
ということだからだ。
(逆に、スタンドバイミーでは、
白い鹿を見た、いいことは、
友達の誰にも言っていない。
主人公と観客の間の秘密の共有だ。
その直前、給食費を盗んだのは教師だ、
という悪の秘密の暴露があるのと対称的である)
俺はワルだった自慢は、この変形かも知れない。
秘密の共有をして仲良くなろうとしているのが、
単にドン引きされている、滑っているだけなのだ。
女子の皆さん、男子が俺はワルだった自慢をはじめたら、
その男子はあなたと仲良くなろうとしているのですよ。
さて本題。
これは前記事から続いている。
秘密の共有は、過去の因縁のネタバラシでもあるからだ。
過去の事実が重要なのではない。
それを知ってから、これから何をするかが重要なのだ。
ラプンツェルでも、過去の秘密の共有をしたあとは、
恋に落ちる。
恋が重要なのであって、秘密が重要ではないのだ。
勿論、短くて気の利いた過去の秘密を創作することは、
それなりに実力が必要だ。
問題は、我々作者が、現在を描くプレッシャーに負けて、
過去の方をメインにしがちなことである。
スターウォーズはその典型で、
ルークの話より、
ダースベイダーの過去のほうが面白くなってしまった。
が、いざベイダーの過去を作ったら、
たいして面白くなかった。
今度公開の789は、どちらでもないから、
ようやく続編を見る機会が来たというものだ。
ルーカスはストーリーテラーとしては二流だ。
我々はルークにこそ感情移入したいのに、
ヨーダやハンソロなどに感情移入してしまうからだ。
(これは車田正美をはじめとする、
ジャンプ型ストーリーの欠点だと僕は考えている。
主人公後退論と風魔に関しては、監督メモ参照)
明かされる衝撃の過去、俺はお前の父だ、によって、
話は大きく動く。
しかしそれを知ってルークがすることよりも、
その衝撃の過去に、ルーカスはとらわれてしまった。
だからスターウォーズ6部作は、面白くないのである。
秘密の共有は、過去の暴露でもある。
スパイスに使うこと。
スパイスは主食ではない。
2015年11月20日
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