2015年11月25日

主人公が積極的に行動するのはどこか

厄介な事件が起きる。
主人公は、なるべくそれを避ける。

あるいはずっと続く日常。
主人公は淡々と続けながらも、
いつか別の場所へゆきたいと願っている。

そんな主人公が、積極的な行動をするのはいつか?



下手くそな人が書くと、
大抵はクライマックス直前になってしまう。

さらに下手くそな人が書くと、
ラストシーン直前、
勇気の一歩を踏み出すところで、
(その結果も分からないまま)終わってしまう。
俺たちの戦いはこれからだ!的な。


ハリウッドの三幕構成理論によれば、
そのポイントは、
少なくとも全体の1/4時点で起こるべきである。
理論的には第一ターニングポイントと呼ばれるシーンだ。

つまり残り3/4は、
主人公は逃げ回るのではなく、
積極的に行動したその責任を取らなくてはならない。


人が積極的に、主体的に行動したくないのは、
その責任を負いたくないからである。

失敗すれば笑われる。
下手な発言をしたら叩かれ炎上する。
生意気だといじめられるかも知れない。
口ほどたいしたことねえなと馬鹿にされるかも知れない。
黙って逃げていれば、目立つこともなく、
そのままでいられたかも知れないのに。

だから、ほとんどの人は積極的に行動しない。
成功体験がなければさらにだ。
初めて成功する為には、初めて挑戦しなければならない。
しかしその挑戦が100%成功する保証はなにもない。
どころか、1%もあるのだろうか。
今のびびっている各企業と同じだ。
みんな責任を取りたくないのだ。



物語とは、積極的な行動が、
どのような影響を及ぼし、
周りに叩かれ、
最終的にはそれが成功するかを描くものである。

叩かれる様をコンフリクトという。

その逆風に対して、
主人公がどのように関門をくぐり抜け、
あるいは正攻法でなく奇襲で、
それらを乗り越えていくかという、
「途中」を描くのが全体の半分(1/4あたりから3/4あたりまで)
であり、それを二幕という。


下手くそな人が書くと、この二幕が上手く書けない。
おそらく、
積極的な行動の成功体験がないか、
または、
どのような逆風があり、それがどのようにねじ伏せられるか、
リアリティーがあるように書けないからである。
(逆に言えば、あなたの成功経験談から上手く抽出すれば書ける。
誰もが一本は自分の人生をネタに小説が書ける、という根拠だ。
しかしあなたは、プロになるなら、
何本も何十本も、バリエーションを書かなければならない)

二幕を上手く書くコツは、
自分の人生の成功体験のバリエーションを増やすか、
他人の成功体験のバリエーションを取材すること、
だと思う。

偉人伝やドキュメントはそういう意味で参考になるが、
もっとずっといいのは、
他人に質問することである。
他人の成功体験(小さくていい)を聞き、
その問題をどう解決したかを聞くだけでいい。
勿論あなた自身が解決するシミュレーションをしながらだ。
自分と違う何かが、その成功に関係しているはずだ。
その何かが、あなたが自分の中からは決して思いつかない何かである。
それが分かればシミュレーションしながら聞いていけばいい。
殆どの人は自慢したがりだから、
自慢話をそうやって取材するのはとても良いネタ集めになる。
仕事の話だろうがプライベートの話だろうが。
直接今の作品に使えなくても、
あなたの発想にない何かが、
作品の役にたつことが沢山あるものだ。
(主人公以外の行動原理に使ったりね)


主人公が積極的に行動するのが、
とても遅いのは、
あなたが下手だからである。
それは、「積極的な行動の結果果実をつかむ様」を、
リアリティー溢れるように創作する力が不足しているからだ。

だから自分のことのように考えてしまい、
ちょろっと行動しておしまい、にしがちなのである。
危険なんてとんでもない。なるべく危険を避けてしまうのだ。
物語とは、危険に挑むことを描くものなのに。



主人公は、少なくとも1/4の時点で、
積極的な行動をする、覚悟を決める。

そしてそれに対する逆風を、有言実行で、
ひとつひとつねじ伏せていく。(残り半分)

ラスト、最大のバトルに勝つ。(最後の1/4)
それがストーリーというものである。

あなたは、そのことについて、アイデアを沢山練らなければならない。

キャラの性格とか世界観とか練っている場合ではない。
それは、成功物語という大筋からの逃避に過ぎない。
posted by おおおかとしひこ at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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