2015年11月25日

バリア

脚本用語のひとつ。
前記事の逆風を書いていて、まだこれを解説してないなと思って、
書くことにする。

バリアとは、
行動に対して、乗り越えられない壁のこと。
つまり、
ある行動をした結果、何かの壁にぶち当たり、
にっちもさっちも行かなくなることだ。


二幕を書いていると、
しょっちゅうバリアが立ちふさがる。
そんなにスルスルいくわけがない。
誰もがスルスルいくのなら、みんなそれをやってるさ。
誰もやらない難しい(無理な)ことだから、
それは特別なストーリーになるはずなのだ。

しかしバリアは厄介だ。
下手したらそこで手詰まりになり、
その先が書けなくなる。

そこでどれだけ唸り、次なる手を思いつけるかが、
バリアを克服する。


大抵は正面から乗り越えるのを諦め、
別ルートを探すことになる。

押してもダメなら引いてみな、それでもダメなら別のドア。

別の手を思いつくことは、容易ではない。
現実でそんなにポンポン思いつければ、
あなたはとっくに億万長者の成功者になっているだろう。
だがここは現実世界ではないことを思い出そう。

ここはあなたの創作した物語世界である。
即ちそれは、ご都合主義にならない限り、
あなたが自由に設定できる、ということである。

バリアにぶつかるとしよう。
一見最初に思いついたやり方で突破しようとし、
ダメだと分かった。
しかし意外な方法があった。
以前あった、○○がヒントだ!

即ち伏線である。

バリアにぶつかってから、
それを突破する設定を後付けで思いついたとしよう。
その設定は、必ずバリアの前に前ふっておくこと。
しかも、バリアがあとで来たときに、
あの伏線使えばいいじゃん、とすぐにばれないようにすること。

伏線の張り方のコツは、
一見目立たない一瞬にするのではなく(記憶に残らない)、
とても印象に残る鮮やかで素晴らしいエピソードを描き、
それを以前出た方式ではない別の方法で、再利用することである。
(伏線の研究は、たとえば「情婦」を例にした記事があります)

これが上手になれば、
バリアがあればあるほど、話が面白くなる。
行き詰まった!→いや、あれがある!なるほど!
の連続になるからである。

むしろこうなるように、一幕や二幕で、伏線を張るのである。


こうなれば、バリアとは、上手なターニングポイントになる。
最初の方向性が駄目になり、
新たな方向性なら上手くいきそう、
と話が転換するからだ。


無茶な話を書こうとするほど、
そんなの無理だろ、というバリアにぶち当たる。
それを鮮やかに乗り越える快感こそが、
痛快なストーリーというものだ。
バリアはむしろ、オイシイのである。

バリアを乗り越える、誰もが気づかなかった意外な方法。

それこそが、あっという展開というものだ。
忘れていた伏線に唸らされるからである。

あなたが自由に設定できる世界、ということを念頭に置こう。
設定は、現実と別世界を作ってムフフと楽しむためにあるのではない。
(それも楽しいけど)
バリアを回避する伏線の為にあるのである。

つまり使っていない伏線や設定など、本編には不要なのだ。
(リライトではそれを徹底排除することになる)


また、初心者のうちは、
伏線がバレバレでも、
伏線を使ってバリアを乗り越える経験を沢山積むべきだ。
そのうち伏線が上手くなってくる。
posted by おおおかとしひこ at 01:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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