2015年12月01日

能面の役割

上級者むけの話。
下手な初心者や中級者は真似しなくていいが、
他人のそれは理解できることぐらいは必要。

物語の中には、能面の役割を果たすものがある。
つまりそれは、
そのものが持つ意味以上に、
勝手に観客が大きく想像してくれるもの、
のことだ。


能面はただの無表情だ。
それが文脈や照明によって、
怒ったり喜んだりしてるように見える。

モンタージュの力である。

(クレショフのモンタージュ実験で調べてください。
結果だけ言うと、同じものなのに、読み取る意味は文脈に依存して増幅される、
ということです)


これと同じように、
ただそこに置いてあるだけなのに、
観客が勝手に想像を膨らませて、
実体より大きく見えてくれるものがある。

コツは、正体を暴かないことだ。

たとえばスターウォーズエピソード1のダースモールは、
戦闘さえしなければ、
もっともっと巨大で巨悪に勝手に見えていたと思う。
馬脚をあらわすというか、
ネタバレした段階でこちらの想像を下回ると、
とてもガッカリするものなのだ。

勝手に幻想や期待を膨らませた、
恋の相手といざ付き合うときの落胆
(同棲したら、相手の屁の音を聞かなければならない)とか、
予告編で想像を膨らませていたものが、
本編見るとたいしたことない現象と、
同じである。


能面は、能面であるときに、
最も威力を発揮する。
安易に素顔を晒すな、ということだ。


能面のままに終わらせる最も安直な手段は、
謎の死、自殺や失踪、夭逝だ。

ブルースリー、夏目雅子、ジェームスディーン、
シドヴィシャス、尾崎豊、リバーフェニックスなどは、
そうやって伝説やカリスマになった。

フィクションならば、
東丈、力石徹、飛鳥絵里奈、棟方仁などが思い出される。
ゴドーや桐島、火の鳥(手塚)などのマクガフィン的人物もそうだろう。

実体以上に、想像を膨らませる、
それは一種のテクニックかもだ。

天才は無意識に使う。
我々凡才は、テクニックとして使うのみである。

安易に殺さなくても、ストーリーからの退場でも可能かも知れない。



どんな所に「能面」がいるか、観察してみよう。
能面が馬脚をあらわし、失墜する失敗例も観察してみよう。
能面が能面のまま機能し続けるのも観察してみよう。


僕は役者がブログやツイッターで、
本人のパーソナリティーをばらすことに反対だ。
能面が剥がれるからである。
(その意味でメイキングが嫌いだし、
踏み込みすぎるファンサービスは逆効果だと思っている。
パンチラは、パンモロしたら終わりなのだ)


ストーリーのどこに能面を仕込むか?
そのネタバレをどうやってうまく避けるか?
意図して出来たら上級者だろうね。
(謎を引っ張るタイプの漫画、
たとえば浦沢直樹はこれを利用している。
問題は、能面が剥がれると、大体双子落ちという馬脚なところだ)
posted by おおおかとしひこ at 03:34| Comment(4) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
その名前の並びにおくと、アランドロンが夭折したようにみえてしまいます。ジェームズディーンならわかるのですが。
本筋とは関係ない部分ですが、読んでいて少し気になりました。
Posted by シュガー at 2015年12月01日 16:59
シュガーさま訂正ありがとうございます。
直しておきました。
昔からよく間違える。
ついでに若い頃のマーロンブランドも。
Posted by 大岡俊彦 at 2015年12月01日 17:29
大岡俊彦様

いつもありがとうございます。

能面1と2の記事を読んでいて、質問したいことがあったのでコメントさせていただきました。
質問というより、お願いと言った方が良いのかもしれませんが…。

初級者、中級者、上級者のそれぞれの段階について
「これができたら初級者」
「あれができたら中級者」
…という風に、一度整理していただけないでしょうか?
(例えば、一度作品を完成させたら初級者
能面のテクニックが使えれば上級者、など)
というのも、「自分はどの部分が出来ていないのか?」ということが把握できれば、上達の鍵になると思うのです。

面倒だったり、そもそもこんなものが無かったりするのならば、無視していただいて構いません。
出来たら、で結構です(笑)

それでは、失礼いたします。

ケルベロス
Posted by ケルベロス at 2015年12月02日 18:23
ケルベロス様コメントありがとうございます。

2014.2.9「表現のレベル」にて、
試しに書いてみました。

昔から、身長分原稿用紙を書けば一人前といいます。
400字詰め原稿用紙を積み上げた換算で、
腰までが初心者、身長までが中級者、それ以上が上級者、
ぐらいで考えるのがよいかと。
Posted by 大岡俊彦 at 2015年12月02日 20:08
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック