2015年12月08日

シズるシチュエーション2

こういうストックを沢山持っておくことは、
「絵になる話」をつくれるかどうか、
に関係してくる。


T5の批評で、僕はストーリーは絶賛したが、
映画としては致命的なミスがあると思った。
(過去記事参照)
それは、「絵になる場面」のなさだ。

「この映画といえばこの絵」すなわちイコンが、
欠けているのだ。
T2といえば液体金属や溶鉱炉、
T1といえばチェイスや自分修理やプレス機、
などのような、
ストーリーのポイントポイントに関連したイコンがないことが、
T5の映画としての弱点だ。
(小説ならそんなの気にしないのかな。
でも小説でも絵が浮かぶのは重要だと思うけど)

たとえばラストシーンは墓場からの出発だったが、
ちっとも絵を覚えていない。
まだT3の棺桶抱えて、のほうが「絵としては」記憶に残る。
T1のガソリンスタンド、T2のハイウェイに匹敵する、
ラストの絵の記憶が全然ない。

これは監督の差かも知れない。
カメラマン出身のキャメロンだからこそ、
キャメロンの絵は記憶に残るかもだ。


さて。

あなたは監督を兼ねるかも知れないし、
脚本だけに専念するかも知れない。
小説だとしても絵が浮かぶほうがいいのだから、
あなたなりに絵を浮かべるべきだろう。


単なる日常の会話劇を、
シズるシチュエーションに持っていくだけでドラマチックになるものだ。

実は、ドラマを作るコツは、
ドラマチックなシチュエーションで、逆に日常会話をすることだ。
(たとえばboketeの傑作「逆に聞くけど今忙しくないと思う?」は、
今忙しいですか?という日常会話を、
ヘリの機銃掃射というドラマチックなシチュエーションに放り込んだ、
逆の面白さだ)
または、日常的なシチュエーションで、逆にドラマチックな会話をする手もある。

つまり、
台詞劇(や焦点の内容)を組んだら、
それを「どこで」やるかを、あとづけするのだ。

日常会話なら、シズるシチュエーションで、
シズる会話なら、逆に平凡なシチュエーションで。
(例:伊藤園新俳句「転校を 打ち明けられた 二人乗り」)



たとえば、今取り組んでいるCMは、
「一人暮らしをする為に実家を出る新大学生と親」
の話(モチーフ)だ。
もうこれだけで、雰囲気満載である。

美味しいシチュエーションは沢山ある。

合格発表、不動産屋めぐり、
自分の部屋で荷造りする、持っていく漫画を決める、
アルバムが出てくる、
食卓で父と母と話す(最後の家族の夕食)、
駅で親と別れる、
新しい部屋で段ボールをあける、
最初に窓をあける、
親にケータイで「無事ついた」と電話する、
などなどだ。
どこを切っても絵になるよね。

そのなかで、
ドラマの中心をどの「絵」に持ってくるかを考えながら、
話を考えたり、
会話に応じて絵を選んでもいいだろう。

絵になるシチュエーションばかりを並べてもダメで、
平凡と非凡を逆に組んでいくといいだろう。


逆に考えてもいい。
この話の勝負絵は、なにか?と。

そこに、シズるシチュエーションを用意するのである。
その為に、普段からストックを欠かさないことだ。
(僕が好きなのは、海辺の堤防で女子高生が歩く、
夏の入道雲と線路、丘の公園から見える夕焼けなどなど。
それは好みのシチュエーションでいい。写真の趣味みたいな。
裏路地の惨殺死体が好きな人もいるだろう。
むしろ、そのシチュエーションの好みが作家性かもね)
posted by おおおかとしひこ at 13:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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