複雑で分かりにくいのは、意味がない。
だからシンプルにせよ、とよく言われる。
だが、単純なものは詰まらない。
豊かでないシンプルは、ただ物足りないだけである。
理想は、シンプルなのにとても複雑なものが背後にあるものである。
どうやったらそういうものを作れるだろうか。
先に複雑なものをつくることを考えよう。
複雑で面白いものをまずつくる。
しかし複雑すぎて伝わらない。解読できない。
このとき、削ぎ落とすことでシンプルに近づける方法が、
一番ポピュラーかも知れない。
しかし単なる削ぎ落としは、本質を痩せさせる。
痩せたことでよくなることもあるから、
一概に悪者扱い出来ないが、
多くの場合、削ぎ落としだけだと、
複雑だったときの面白さから、
面白さがなくなってしまう。
出し殻でしかない。
多くの原作つきの映画化の失敗は、
単に削ぎ落として、形上シンプルにしただけだからだ。
だから、良さが失われる。
では、先にシンプルな構造をつくり、
複雑さを付加していくべきか。
最初のシンプルな構造が、
複雑さや豊かさを生まないとき、
どんなに複雑にしていっても詰まらない。
それは、最初のシンプルな構造以上にならないときが多い。
シンプルな形だけでは詰まらない。
それが醸し出す可能性や複雑さが面白いはずなのだ。
ということで、
どちらからのアプローチも大抵失敗に終わる。
形と内容と、両方に挟まれて、どっちも良くなくなる。
理想は、
複雑で面白いものを先につくり、
それを殆ど含む、
全く新しいシンプルな構造をあらたに作り出すことだ。
醸し出す宇宙の複雑さをそのままに、
シンプルで少ない要素で表現し直すのである。
これが大変難しい。
頭のよい人は、
難しいことをとても簡単な言葉でいえるという。
そんな感じだ。
難しいことを難しく言うことは、簡単。
簡単なことを簡単に言うのも、簡単。
簡単なことを難しく言うのが、詐欺。
あなたは、
難しいことを、簡単にいうこと。
それが創作というものである。
僕は、ただシンプルにシンプルに、
と指導をする人をバカだと思っている。
恐らく、複雑で難しいことを理解できないのだろうと、
思っている。
何故なら、その人の言うシンプルな作品は、
大抵底の浅い、詰まらないものだからである。
複雑なことをシンプルに凝縮できたとき、
複雑なことを全く別の要素に変換できたとき、
表現が生まれると思う。
まあ、まずは物凄い複雑な面白ものをつくればいい。
リライトで、凝縮していこう。
これをズバリ一言で言う、などの、
本質の抽出をしていくのだ。
表現とは、
あなた一人だけがたどり着いた、
ある深い底のことを、表現することだ。
深い底を深く複雑に言う方が、
シンプルに削ぎ落として浅くなるより、
まだ優秀だと思う。
ただのシンプルは、深くないから。
深い底までたどり着けるシンプルを、
最終的に目指したい。
2015年12月10日
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