2015年12月12日

一幕を終えて、最も達成されるべき大事なこと

主人公への感情移入だ。


主人公が陥ったシチュエーションに興味がわくこと。
出来れば、
主人公が少し好きになっていること。
主人公の背景がわかり、同情や共感、同調の気分があること。

そして、第一ターニングポイントでの、
主人公の事件への本格参与(解決への意志)に、
心が震えていることだ。


一幕は、
主人公がどういう人か(その周囲も含む)、
事件がどんなものか(最初は小さな異変からはじまり次第に大きくなってゆく)、
及び、主人公の事件解決への乗り出し(第一ターニングポイント)、
さえ書ければ、
他に何をやっても構わない。
(むしろその他のほうが一幕の印象を左右する)

しかしストーリーとは説明ではない。

ストーリーとは、我々の感情で見るものだ。
そのストーリーに、我々の感情が入り込むことこそが、
最も大事な一幕の役目ではないかと思う。

下手な一幕は、セットアップという「説明」をしてしまう。
ストーリーとは説明ではない。
説明だから、一幕はダルいと思われてしまう。
一幕は説明ではない。
一幕は、引き込みである。

主人公への興味、共感、同調、感情移入をし、
これからの焦点(事件は解決するのか?というセンタークエスチョン)
に対して、頭ではなく、感情で入り込むように、
なっていなければならない。
説明的理解ではなく、
感情的没入である。

つまり、それまでに、我々観客の感情が振れなければならない、
ということである。


爆笑という喜劇もある。
じんときたり、ホロリと来たり、絶望を感じる悲劇もある。

その一幕で最初に一番大きく振れる我々の感情こそが、
その物語のジャンル(主たる感情)を決めると、
僕は考えている。


あなたの書いた一幕は、
主人公への深い感情移入が達成されているか。
既に主人公の中に我々の目が入っていれば完成だ。
主人公が向かう目の方向、
すなわち、センタークエスチョンの方向に、
我々は不安で、しかしやらなければならない勇気を奮い起こして、
ドキドキしているだろうか。
そうなっていれば、一幕の役割は果たせていると僕は思う。


それを25分から30分、原稿用紙25から30枚でやるのが、
映画脚本の第一幕というスタイルである。
posted by おおおかとしひこ at 15:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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