思うことが、書くことより文字数が少ないからだ。
思うことは、単発で、散発的だ。
あなたは、「自分が思うこと」を観察したことがあるだろうか。
思うことは、脈絡がなく、持続力がない。
思うことは、あることに対するリアクションだ。
0から自ら思うことすら難しく、
たいていは何かへの反応として、思うことがある。
思うことは、書くことより論理が短い。
思うことは、書くことより集中力が続かない。
思うことは、書くことより一本線にならない。
あなたが原稿に向かい、思うことを書き始めても、
さほどの文字数に至らず書けなくなってしまうのは、
あなたが実力が足りないのではなく、
思うことをただ書いているからだ。
思うことと書くことは違う。
あなたは思うのではなく、書かなければならない。
経験上、思うことは、大体ワンシーンぐらいの規模だ。
ワンシーン平均1分半として、600字程度なら、
思うように書ける。ツイート数回分と数えてもいい。
しかしそれ以上書くことは困難だろう。
思うように書いているからだ。
書くためには、一貫した論理が必要だ。
その論理は、思う程度の分量ではとらえられない文字数が必要なものである。
ロジックとか、プロット(計画)とか呼ばれるものだ。
たとえば論文を書くときは、見出しをつくる。
大まかな主張をつくり、章に分解し、節に分解していく。
それらを並べ替えたり、統合したり分解して、
ひとつの主張の構成をつくるものだ。
(アウトラインプロセッサという、
その試行錯誤専用のエディターもあるくらいだ)
ストーリーがそのやり方で出来るとは言わないが、
ストーリーの構成は、似たようなスタイルに最終的になる。
この構成に時間をかけるものである。
そうでなければ、書くときに、
次どうなるか分からなくなる。
逆に、思う以上に書くためには、次どうなるか、
作者が知ってなければならない。
(一方、登場人物は知らないで動いている)
書くためには、知識が必要だ。
人は、知らないことは思えない。
しかし知らないことでも、調べれば書くことは出来る。
大体こういう感じのことが調べられれば、
今書いているこのストーリーのこの部分を書くことが出来る、
と判断して、調べることが出来る。
書くためには、複数の人格になれなければならない。
思うことは、あくまで一人称の統一された人格だ。
(実際には複数の発火を、統合しているという意識がある)
同時に複数を思うことは出来ない。
しかし書くこととは、同時に複数の立場の人が思うことを、
考えに入れることである。
書くことは考えることに似ている。
書くことは疑似体験に似ている。
書くことは計画の遂行に似ている。
書くことは、思うこと(≒反応すること)には似ていない。
思うことを書くことは、たとえばエッセイがある。
精々1500字といったところの文章量だろう。
長いワンシーンか、2〜3シーンといったところだ。
これぐらいまでなら、思うことと書くことは一致出来るだろう。
(エッセイを書くときのコツは、
反応すること、すなわち何かのネタを持ってきて、
それについて思うことを書くことだ)
おそらくこれ以上書くときに、
「ただ思うことを書くこと」以上のスキルが、
必要になってくるのではないかな。
仮説だけど。
何故書くことは苦しいのか。
我々の自然思考(思うこと)でないことを、
するからである。
何も知らない素人は、
文豪が、ただ思うことをスラスラと書いたらそれが原稿になる、
と考えているのではないだろうか。
そうではない。
書くのは、創作の最終段階に過ぎない。
それまでに、沢山の計画(プロット)があるからこそ、
スラスラと筆が進むのである。
行き当たりばったりで思うことを書いていたら、
支離滅裂にしかならない。
思うことは、それだけ書くことよりも、
たいしたことではない。
逆に、書くこととは、
思うことよりも数段知的な、特殊行為だ。
訓練せずに出来るわけないじゃんね。
もしあなたが書くことが苦しいのなら、
書くことではなく、思うことを書くことしか、してないからかも知れない。
さっさと、書く訓練に切り替えよう。
思ってることを書いてるだけだな、と自覚しよう。
書く技能は、泳ぐ技能のように、
訓練すればするほど、遠く長く速く泳げるようになる。
(伸び方とか限界値は、才能次第の可能性はあるが)
2015年12月13日
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とりあえず頭の中のものを全部思うままに吐き出して、
俯瞰して書き直していく、という手もあります。
デジタルならファイルをコピーして思うままに書き直し、
アナログならボールペンで色を変えながら書いていったり。
僕は前の衝動をそのまま見れる、アナログをオススメしています。
どれだけ事前に考えていても、現場でアクシデントが起こるのは、
人生も小説も一緒だったりします。
アドリブで切り抜けたりすることも必要です。
力業で切り抜けて、
で、また一から書き直したりね。
航海が、最後までたどつりけますよう。
無事に行くことなんてなくて、毎回嵐や難破や何かを失うことがあるのを、覚悟の上で。