2015年12月13日

【訃報】渋谷シネマライズ閉館に思うこと

最近まで知らず、先日知った。

単館系の頂点、単館ブームを牽引した、
渋谷シネマライズが来年一月一杯で閉館という。

単館系の終わりの区切りかも知れないし、
映画の終わりの区切りになるかも知れない。


90年代から00年代にかけて、
渋谷は若者のサブカルの街だった。
渋谷系と呼ばれた、
HMVやタワレコが牽引し、
シネマライズをはじめとする単館系の聖地だった。
ぱっと思いつくだけでも、
ユーロスペース(移転後健在)、
文化村(健在)、
シネアミューズ(閉館)、
パルコ(健在)、
イメージフォーラム(健在)、
などなどが出てくる。
(名前が出ないけど、タワーの下のところ、宮下公園のむかい、
ロフトの隣などもあるよね)
その中でも中心はシネマライズだった。
トレインスポッティング、ピンポン、鮫肌男と桃尻女、
ムトゥ踊るマハラジャ、アメリ。
時代を牽引する映画を選び、ブームをつくった。
僕はいつか自分の映画がそこでかかることを夢見て、
助監督をしていたものだ。

渋谷は映画の町だ。
渋東シネタワー(現東宝シネマ渋谷)、
渋谷東映、松竹はディズニー屋の上だっけ、
などのメジャー配給館もバッチリだ。
映画を観るのに、渋谷で不自由することはなかった。
銀座や日比谷や六本木や恵比寿に出る必要は、
ごくごくマイナーなときでよかった。

それが閉館だって?

渋谷がうすら寒くなってきたのは、
パンテオン閉館がきっかけだろうか。
僕は、ヒカリエを鏑矢とする東急渋谷ダンジョンのせいだと思う。
ホームから地上に出るまで15分かかる駅なんて欠陥だろ。
駅の全体イメージが湧かない駅なんて、魅力ないだろ。
渋谷の最大の魅力は、手軽さ、カジュアル性だったと思う。
それが渋谷ダンジョンのせいで敷居が高くなった。簡単さが失われた。
僕は週1、2回通っていたが、ダンジョン出来てからは、
年1、2回に遠ざかってしまった。めんどくせえからだ。
囲い混みは高級ビジネスのやり口だ。
薄利多売のカジュアル売りではない。
渋谷は、ダンジョン計画により、高級シティ扱いされたのだ。
設計者安藤忠雄を、俺は憎んでいる。

ライズの閉館は、ダンジョンのせいだけではない。
若者文化全般の落ち込みがある。
若者はネットに行ってしまった。
正確にいうと、より安い娯楽へ、低きへ流れた。
1800円は、若者にとって高額だ。
居酒屋もいかない、バーもいかない、
CDも買わない、服もブランドを避ける。
何故か。
ネットのほうが単価が安いからである。
数百円しかマックスで払わないものしか、
若者は金を出さないのである。

映画は、この流れに乗れなかった。
むしろ、地方にシネコンを築き、
ブロックバスターで地方民を集めて、
ポップコーンやパンフで暴利をむさぼる、
都会でない所でトータルで稼ぐビジネスになった。
カジュアルではなく、高級イメージで金を取ることだ。
だからカジュアルに見れる単館系ではなく、
ブロックバスターしかなくなってしまう。

ブロックバスターは政治(複数からの資金調達)が絡むから、
必ずしも内容勝負ではななくなる。
今日本のブロックバスターは、完全に曲がり角である。
いずれ音を立てて崩壊しかねない。
内容があまりにも詰まらない。
宣伝部が弱体化し、
本当に内容のいいものをヒットさせる力がない。


日本の産業は、バブルである。
実体以上にきらびやかな付加価値をつけ、
実体以上に価格設定して、差額を儲けてきた。
だから単価をどんどん高くしなければやっていけなくなる。
シネコンがその典型だ。

単館系は、そのカジュアルさでブームになった。
尖りたい若者にとって、
ブロックバスターの下らない日和は詰まらないからである。
単館系は若者文化を牽引し、
サブカルの旗手だったはずだ。

ネット時代が、さらにその単価をカジュアルに下げた、
と考えることが出来る。

単価が低いということは、
開発費が低いということである。

映画一本には、
どうやったって一億から数億必要だ。
これは下がらない。
機材費よりも、人件費だからである。


今、映画は岐路にいる。

これまでの制作費を守るなら、
政治優先で中身のないブロックバスターをつくって、
とりあえず金を回す。
だがそれはもうばれはじめている。
面白くないものに、人は金を払わない。
進撃の巨人みたか?
あれを面白いと思って作ってるやつがいるんだぜ?

これまでの制作費を守れないなら、
もう単館系の映画すら作れない。

かける場所がなくなった。
映画の若者の町はもうない。
渋谷は、サッカー日本戦とハロウィンの時だけ騒ぐ町になった。
宮下公園も建て替えるらしいね。


恵比寿ガーデンプレイスも、銀座シネスイッチも、
銀座並木座も、昴座もみゆき座もない(みゆき座は微妙にある)。
銀座シネパトスも、池袋文芸座ももうないのだ。

映画は滅ぶのか?
単価の低い、huluやdビデオでペイするか?
多分しない。
その単価で作れるものは、やっぱ安い出来だ。
ビーTVとか見てみろよ。
NOTTVなんて気づいたら潰れてるし。


テレビはもうオワコンのような気がする。

映画はオワコンなのか?
単館系はオワコンか?
ブロックバスターはオワコンか?
サブカルはオワコンか?

分からない。

渋谷シネマライズ閉館のニュースを聞き、
とりあえずここまで考えた。

アスミックエースの映画は今後どこで見るんだ?
そもそもまだコンスタントに作ってるのか?
とHPを見たら、一応やってるっぽいが、
なんだか勢いを感じない。

勿論、日本がオワコンか?
という問いも成立するが、
海外進出するほど、僕はもう若くない。


さて。

僕は面白い映画を作りたいだけなのに。
その為に修行してきたのに。

映画業界がやばい。
配給の仕組みが。製作体制が。
現状を改良するには、ダメな部分が多すぎる。
全く新しい仕組みを作るには、僕にビジネスの才能がない。
僕に作れるのは、面白い話だけだ。

さて、どうしよう。
今回の記事は結論はない。
とりあえず新作書くのを、がんばる。
posted by おおおかとしひこ at 17:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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