最近まで知らず、先日知った。
単館系の頂点、単館ブームを牽引した、
渋谷シネマライズが来年一月一杯で閉館という。
単館系の終わりの区切りかも知れないし、
映画の終わりの区切りになるかも知れない。
90年代から00年代にかけて、
渋谷は若者のサブカルの街だった。
渋谷系と呼ばれた、
HMVやタワレコが牽引し、
シネマライズをはじめとする単館系の聖地だった。
ぱっと思いつくだけでも、
ユーロスペース(移転後健在)、
文化村(健在)、
シネアミューズ(閉館)、
パルコ(健在)、
イメージフォーラム(健在)、
などなどが出てくる。
(名前が出ないけど、タワーの下のところ、宮下公園のむかい、
ロフトの隣などもあるよね)
その中でも中心はシネマライズだった。
トレインスポッティング、ピンポン、鮫肌男と桃尻女、
ムトゥ踊るマハラジャ、アメリ。
時代を牽引する映画を選び、ブームをつくった。
僕はいつか自分の映画がそこでかかることを夢見て、
助監督をしていたものだ。
渋谷は映画の町だ。
渋東シネタワー(現東宝シネマ渋谷)、
渋谷東映、松竹はディズニー屋の上だっけ、
などのメジャー配給館もバッチリだ。
映画を観るのに、渋谷で不自由することはなかった。
銀座や日比谷や六本木や恵比寿に出る必要は、
ごくごくマイナーなときでよかった。
それが閉館だって?
渋谷がうすら寒くなってきたのは、
パンテオン閉館がきっかけだろうか。
僕は、ヒカリエを鏑矢とする東急渋谷ダンジョンのせいだと思う。
ホームから地上に出るまで15分かかる駅なんて欠陥だろ。
駅の全体イメージが湧かない駅なんて、魅力ないだろ。
渋谷の最大の魅力は、手軽さ、カジュアル性だったと思う。
それが渋谷ダンジョンのせいで敷居が高くなった。簡単さが失われた。
僕は週1、2回通っていたが、ダンジョン出来てからは、
年1、2回に遠ざかってしまった。めんどくせえからだ。
囲い混みは高級ビジネスのやり口だ。
薄利多売のカジュアル売りではない。
渋谷は、ダンジョン計画により、高級シティ扱いされたのだ。
設計者安藤忠雄を、俺は憎んでいる。
ライズの閉館は、ダンジョンのせいだけではない。
若者文化全般の落ち込みがある。
若者はネットに行ってしまった。
正確にいうと、より安い娯楽へ、低きへ流れた。
1800円は、若者にとって高額だ。
居酒屋もいかない、バーもいかない、
CDも買わない、服もブランドを避ける。
何故か。
ネットのほうが単価が安いからである。
数百円しかマックスで払わないものしか、
若者は金を出さないのである。
映画は、この流れに乗れなかった。
むしろ、地方にシネコンを築き、
ブロックバスターで地方民を集めて、
ポップコーンやパンフで暴利をむさぼる、
都会でない所でトータルで稼ぐビジネスになった。
カジュアルではなく、高級イメージで金を取ることだ。
だからカジュアルに見れる単館系ではなく、
ブロックバスターしかなくなってしまう。
ブロックバスターは政治(複数からの資金調達)が絡むから、
必ずしも内容勝負ではななくなる。
今日本のブロックバスターは、完全に曲がり角である。
いずれ音を立てて崩壊しかねない。
内容があまりにも詰まらない。
宣伝部が弱体化し、
本当に内容のいいものをヒットさせる力がない。
日本の産業は、バブルである。
実体以上にきらびやかな付加価値をつけ、
実体以上に価格設定して、差額を儲けてきた。
だから単価をどんどん高くしなければやっていけなくなる。
シネコンがその典型だ。
単館系は、そのカジュアルさでブームになった。
尖りたい若者にとって、
ブロックバスターの下らない日和は詰まらないからである。
単館系は若者文化を牽引し、
サブカルの旗手だったはずだ。
ネット時代が、さらにその単価をカジュアルに下げた、
と考えることが出来る。
単価が低いということは、
開発費が低いということである。
映画一本には、
どうやったって一億から数億必要だ。
これは下がらない。
機材費よりも、人件費だからである。
今、映画は岐路にいる。
これまでの制作費を守るなら、
政治優先で中身のないブロックバスターをつくって、
とりあえず金を回す。
だがそれはもうばれはじめている。
面白くないものに、人は金を払わない。
進撃の巨人みたか?
あれを面白いと思って作ってるやつがいるんだぜ?
これまでの制作費を守れないなら、
もう単館系の映画すら作れない。
かける場所がなくなった。
映画の若者の町はもうない。
渋谷は、サッカー日本戦とハロウィンの時だけ騒ぐ町になった。
宮下公園も建て替えるらしいね。
恵比寿ガーデンプレイスも、銀座シネスイッチも、
銀座並木座も、昴座もみゆき座もない(みゆき座は微妙にある)。
銀座シネパトスも、池袋文芸座ももうないのだ。
映画は滅ぶのか?
単価の低い、huluやdビデオでペイするか?
多分しない。
その単価で作れるものは、やっぱ安い出来だ。
ビーTVとか見てみろよ。
NOTTVなんて気づいたら潰れてるし。
テレビはもうオワコンのような気がする。
映画はオワコンなのか?
単館系はオワコンか?
ブロックバスターはオワコンか?
サブカルはオワコンか?
分からない。
渋谷シネマライズ閉館のニュースを聞き、
とりあえずここまで考えた。
アスミックエースの映画は今後どこで見るんだ?
そもそもまだコンスタントに作ってるのか?
とHPを見たら、一応やってるっぽいが、
なんだか勢いを感じない。
勿論、日本がオワコンか?
という問いも成立するが、
海外進出するほど、僕はもう若くない。
さて。
僕は面白い映画を作りたいだけなのに。
その為に修行してきたのに。
映画業界がやばい。
配給の仕組みが。製作体制が。
現状を改良するには、ダメな部分が多すぎる。
全く新しい仕組みを作るには、僕にビジネスの才能がない。
僕に作れるのは、面白い話だけだ。
さて、どうしよう。
今回の記事は結論はない。
とりあえず新作書くのを、がんばる。
2015年12月13日
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