2015年12月14日

大ターニングポイントと、内的問題の関係

「キャプテンウルフ」を反面教師に、
大ターニングポイントと内的問題の関係について、
深く考えよう。


キャプテンウルフの、
第一、第二ターニングポイントはどこか。

第一ターニングポイントは、
スイス銀行でパスワードを求められ、
二三日で終わるはずだった子守りが、
いつまでかかるか分からなくなったところ。

第二ターニングポイントは、
同様に、スイス銀行でパスワードが分かり、
帰国が決定し、子守りが必要なくなったところ。

これらは、外的問題のターニングポイントである。
軍事任務→子守り任務→軍事任務
という大枠を決める大ターニングポイントだ。

外的問題のターニングポイントとしては正しく、
その意味で三色団子にストーリーを分割する、
境目になっている。教科書どおりだ。

ところで、
それだけが大ターニングポイントの役割だろうか?

映画は、事件と解決のことである。
それは、外的問題の解決のみでOKか?
否である。
内的問題の解決をも含めないと、
人間を描いたものではないし、カタルシスもないのである。

主人公シェーン(ヴィンディーゼル)に、
彼が抱える内的問題がないのが物語として問題だと、
前記事で指摘した。

たとえば、
父親というものを知らず、
軍隊式の接し方以外を知らない、
という内的問題を設定しよう。
(これは長女をなだめるシーンで語られることからの、推測だ)

これが一幕で語られるとしよう。
「私は物心ついた頃から軍隊にいます。
軍隊が父のようなものです」
「しかし、肉親に抱き締めらたり、本気で怒られたりすることは格別な体験だぞ」
「…軍隊でも、そうでした」
そしてその軍隊式では、子供を泣かせ、反発を食らうだけなのだ。

とすると、第一ターニングポイントでこうすればいい。
「いつまでかかるか分からないだって?
こんな子守り、いつまででも出来る訳ないだろうが!」
「何言ってるの?全ての親は毎日してるのよ?
簡単じゃないの!肉親を抱き締めたり、本気で怒ればいいのよ!
(ガチャン、ツーツーツー)」
「…こいつは、困ったことになった」

などのように。

外的問題の第一ターニングポイントが、
内的問題の解決の必要性をも含めることで、
センタークエスチョンの解決の必然性に、
彼自身の関わりを深くすれば良いのである。

たとえば現状のままだとすると、
シェーンは一人で子守り任務をする必然性がない。

「私一人では無理です。援軍を要請します。
母親経験者が適任だ。私は援護に回る」
とでも言えたはずだし、任務に忠実という点では、
その方が合理的なはずだ。

ところが、シェーンの内的問題の解決に、
センタークエスチョン
(子守り任務を続けて、
謎のプログラム「ゴースト」を敵より早く手に入れること)
が関係してくることで、
シェーンが二幕を、「自分の問題」として、
冒険出来るようになるはずだ。


例の子守唄にしたって、たとえば長女と、
「俺は子守唄なんてしたことがない。無理だ」
「子守唄、聞いたことない?」
「ない。俺は眠る前、明日の作戦の時刻を確認するだけだ」
「じゃあ見てて。こうするの。全ての親がやることよ?」
とでもすれば、
彼が無理矢理子守唄をすることに、
見た目のコメディ以上の意味が加わるはずだ。
現状イヤイヤやらされていることが、
出来ないけどやろうとする、
という面白味をさらに足したものになるのである。


つまり。
彼には外的動機がある。職業上の任務として。
さらに、彼には内的動機もある。親の気持ちを分かること。

彼は、「これが、親というものか」ということを知りたいのである。

だから、二幕も単なるドタバタではなく、
肉親を怒ったり抱き締めることとはどういうことかを、
「学習する」という過程でやるべきなのだ。

そうすれば、「おやすみパパ」のシーンで、
物凄く泣ける筈なのである。

しかも、第二ターニングポイント、
母親が帰ってくることが決定するところで、
この家族と別れなければならない、
という辛さが、さらにグッと来るはずだ。

(ついでに、ヒロインと結ばれるラストで、
家族をつくろうと早まって張り手をくらってもいい)



大ターニングポイントは、
外的ストーリーのターニングポイントだけではない。
センタークエスチョンを示すことで、
それが、
主人公の内的ストーリーにとっても大ターニングポイントである、
ということを意味するべきだ。


ということで、キャプテンウルフを見てみよう。
出来てない映画を見て、
何故出来てなくて、
どうすれば出来た映画になるかを考えることは、
映画が出来るとはどういうことかを、考えることになる。
posted by おおおかとしひこ at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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