2015年12月20日

共感をつくるコツ

鈴木について書いてみた前記事の文章、
急にアクセスが集中していて、関心の高さを伺わせる。
アフィ仕込んどきゃ儲かったかなあ。
(本ブログは完全ボランティアで運営されています)

なかなか名文になったなあと冷静に観察したら、
脚本論に通じる技巧が無意識に凝らされていた。

解説してみよう。


共感をつくるコツ。

それは、観客が、
その人の事情をよく知り、
目的をよく知ることである。


何故彼はそれをしようと思うのか、
彼はそもそもどこから来たのか。

その事情を、受け手がよく分かることがまず大事だ。
(鈴木の場合、
風魔という傑作を知ってるから、
その事情をもう一度分かりやすく掘り起こすだけでいい。
オーディションの話をするだけで十分だ)

また、その事情は、単なる説明ではダメだ。
それが物語的に語られる必要がある。
(焦点とターニングポイントを持つとよい)
たとえ事実だとしても、物語のように語られなければならない。
すなわち、省略と強調が効果的に効いているということだ。
(鈴木の全てを語ったわけでなく、
彼の強調に足る話だけを抽出している)

事情と目的が分かると、
人はその人と仲良くなった気がするものである。

恋の場面の秘密の共有については、
ラプンツェルを例に過去に書いた。
鈴木に、
男は同志の仲間のような、
女は憧れの先輩の秘密を知ったような、
共感が生まれるのである。


共感のコツは、逆境を仕込むことである。
(鈴木の話では関西弁の話)

ただの順風満帆では人は共感しない。
人の本性が現れるのは、
順風満帆なときではなく、
逆境においてだ。
ピンチのとき、辛いとき、その人は何を決断したか、
ということが、その人を示すのである。
その人の本質がそれで示されることで、
ますます共感が進むのだ。

共感は正の感情だけでなく、負の感情においてもつくることができる。
悪役を例にとると、
悪役が調子に乗ってるときを描いても共感は起こらない。
悪役がピンチになったときが本性を描くチャンスだ。

たとえば、正義の味方に追いこまれたとき、
妻を盾にして自分だけ逃げる姿を描くとしよう。
その瞬間、我々はそいつを憎む。
負の共感、「こいつきらい」を上手く行かせた瞬間である。

風魔でいえば、陽炎が追いこまれた本性、
「ああめんどくさいめんどくさい!」こそが、
陽炎の本性であり、この台詞によって、
普段の陽炎の見せる姿とのギャップで、
陽炎は永遠のスターとなったのである。


また、逆境を仕込むとき、
その逆境をたっぷり語ってはいけない。
俺の苦労自慢になってしまうからだ。

サラリと抜けた結果だけを示し、
その苦労を想像させるほうが、
文章としては優秀だ。
(鈴木の話では、関西弁封印の苦労については触れず、
結果だけを示して、苦労を想像させている。
俺らスタッフの関西弁に対しての反応などは、
想像がしやすいエピソードだ)


さいごのコツ。
それをイコンにするとよい。

絵になる場面のことだ。
小道具がよく使われ、テーマの象徴にしやすい。
また、ラストは短く締めると、
記憶に残るイコンになる。
(鈴木の話では、
情熱という仮面を被る、という絵になるイコンで、
短く終わっている)



これらは、テクニックである。

テクニックだけを駆使しても、
それだけで共感が生まれる訳ではない。
しかしいい話をテクニックで纏めることで、
それは何倍にも「効く」話に昇華する。

あなたが何か共感出来る話を聞いたら、
それをそのまま書いたものと、
これらの技術で書き直したものを比較するといい。

どんな話でも核さえあれば共感出来るように書けるようになったら、
あなたの創作で出てくるどんな人物でも、
共感という作用が上手くいくだろう。
posted by おおおかとしひこ at 13:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック