2015年12月24日

リア充とコミュ障と三人称

思わぬところから、カメラ目線と二人称についての議論が広がった。
アクセス数が微妙だから、みんなついてきてないかも知れない(笑)。

しかし重要な話なので、続けます。

リア充とコミュ障と、
二人称と三人称。


「リア充は脚本を書かない」というのは僕の持論である。
リアルで充実している者が、
こんなにも莫大に時間がかかる、
孤独な作業をする意味がない。
創作世界を使って世界をかえるより、
リア充で身の回りの世界を変えていけるからだ。

我々は大なり小なりコミュ障だ。
だから莫大に孤独な暇があり、
自分や他人の作品に向き合う力を蓄える暇があるのである。

さて、
リア充、すなわちコミュニケーション能力とは、
二人称における能力だ。
キミを説得すること、口説き落とすこと、夢を見させること、
キミを理解し、楽しませること、
それが出来る能力である。
これは勿論カメラ目線である。
相手を直接見ることでこの能力は最大限に発揮される。
モテる奴は、100%「目が良い」と言われる。
目で殺す、目を見たらその魅力に逆らえない。

つまり、カメラ目線は、この世界なのである。

ブログ、ツイッターなどのコミュニケーションツール、
カメラ目線で歌って踊る映像、
カメラ目線の広告写真、センターコピー、
これらは、コミュニケーションの二人称なのだ。
(ちなみに、二人称小説というのがあるそうだ。
どういう形式かというと、「キミへ宛てた手紙」の形を取る)


僕はコミュ障気味なので、このきらびやかな世界は苦手だ。

僕は昔からカメラ目線で何かを喋るのが苦手だ。
記念写真でも上手く笑えない。
口説くのも下手だろう。
幼稚園のお遊戯も、何故笑って客側に向くのか分からなかった。
目と目を合わせて意志疎通することが苦手なのかも知れない。

その代わり、三人称の世界を見ていたのだろう。
誰かと誰かがコミュニケーションしていて、
自分に矢が飛んでこないところなら、
安心して観察していたに違いない。

箱男みたいなことかな。
覗き見専門なのである。

三人称の世界を構築するということは、
一人称でもなく二人称でもない、
覗き見の世界を構築するということなのだ。

あなたが出張ってはいけない。
誰かにカメラ目線でメッセージを伝えてもいけない。
観客と直接関わってはいけない。
あくまで、覗き見だけの世界を構築することだ。

おそらく、間違ってしまう初心者は、
普段からコミュニケーション慣れしていないから、
作品を作るときにコミュニケーション欲が出てしまうのだ。
俺を見てくれ、俺の普段言えないけど言いたいことを言わせてくれ、
そういう欲が、
三人称に一人称や二人称を混ぜこんでしまうのである。

あなたはコミュ障である。
だから、コミュ障を徹底しなければならない。
あなたの作品は、誰かと直接コミュニケーションを取るものではない。
あくまで、
他の誰かコミュ障と、
一緒に覗き見して共有するものである。
作品はコミュニケーション手段ではないのだ。

他人を覗き見しているうちに、
いつの間にかその主人公たちに自分が乗り移ったかのようになること、
それを楽しむのが覗き見という三人称の世界である。
その主人公が苦境に立たされ、何かを克服し、
勝利する様を見て、自分もそうであるかのようなカタルシスを覚えることが、
覗き見の醍醐味、感情移入である。
単なる覗き見ではこれは発生しない。
よく考えられた仕組みのあるもの、
すなわち三人称ストーリーだけが、
この機構をもつ。


もしあなたが主張があるなら、
二人称のメディアを使いたまえ。
デジタルの発達により、僕ですらここまで書くことが可能になった。
あるいは、セミナーやカウンセリングに通ったりして、
あるいは引き寄せの法則を使って、
あるいはある日突然、
リア充になり、
君の周りの世界を思い通りに変えていくといい。

それと、三人称は違うということだ。



歌には二種類あるという。
モテる奴の歌と、モテない奴の歌だ。

モテる奴の歌は、二人称だ。♪キミを守るため、その為に生まれてきたんだ、だ。
モテない奴の歌は、一人称的な二人称だ。♪俺の話を聞け、だ。
(そして僕はブルーハーツやサンボマスターのような、
モテない奴の歌が好きだ)

歌謡曲はどちらでもなく、三人称でさらりと感情移入を果たす。
モテる奴が作った三人称と、モテない奴が作った三人称は、
あるかもしれない。


あなたがリア充だろうが、コミュ障だろうが、
その間だろうがどうでもいい。

自分の性質や傾向を知り、
三人称(他人を覗き見しながら感情移入する)を、
一人称(自分だけの思い込み世界)や
二人称(カメラ目線であなたに伝える)と、
混同しないことである。
posted by おおおかとしひこ at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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