二人称の周辺の話、まだ続く。
カットのサイズに、アップ(ヨリ)とロング(ヒキ)
があることぐらいは皆さんご存知だろう。
アップの良さは何で決まるのか?
美男美女か?
いや、顔が人を語るから、必ずしも美男美女が最高ではない。
ライティングか?
いや、目力だ。
二人称に近ければ近いほど、絵は強くなる。
しかしカメラ目線はダメだ。
そういうわけで、
「レンズの端を目線にする」という現場的な手法が生まれるのだ。
これは恐らく日本映画独特の目線の決め方だ。
ハリウッドのマルチカメラなら、
会話してる二人を置き、イマジナリラインの外側から、
複数のカメラで盗み撮りする。
(三人称は覗き見であることを思いだそう)
ところが日本はシングルカメラだ。
俳優のアップを撮るとき、出演者は一人だ。
だから相手役はお休みである。
控え室に帰る大物もいるし(だから役者は待ちが多い→役者同士で付き合いやすい)、
熱心な役者なら、
カメラ脇で相手の台詞をやって、芝居を合わせてくれる。
カメラに写ってないときも出番だ、
という意識の高い役者でないと、
これは自主的にやってくれない。
(大物が控え室に帰りたいと言ったら誰も逆らえない)
たとえば樹木希林さんは、
そうじゃないと芝居がおかしくなるということを理解しているので、
常にカメラ脇にいてくれた。
で、カメラ前にはそのアップの役者がいるのだが、
空気に向かって芝居できないので、
目線をカメラレンズの脇に固定するのである。
(脇で芝居を合わせてくれる人は、声だけで合わせる)
そうするとギリギリカメラ目線でない、
最も目力を拾える角度になるのだ。
(目線が固定出来ると、目に星、キャッチライトを意図的に入れやすくなる)
例えば小津は、これを切り返しの時に徹底した。
殆どカメラ目線と区別がつかない、スレスレを拾うやり方だ。
ハリウッド映画では、ここまで目の角度に正面に入れない。
マルチカメラの限界だ。
入ろうと思うとどうしても相手役が邪魔になり、
肩ナメになってしまう。
(もちろん、エクストラクロースアップといって、
肩ナメ以上に寄るときもあるけど)
ということで、
日本の役者は顔芸が上手い。
ハリウッドの役者は顔芸よりも、全身で芝居する。
ハリウッド映画がストーリーが入ってくる感覚で、
日本映画が役者の力を味わう傾向にあるのは、
全体の作り方の違いによる、
役者の目力の拾い方の違いのような気がしている。
だから日本の監督は、役者に必要以上に注目されないために、
ヒキで語る、と僕は思っている。
歌舞伎の国だから、見得を切るのだね。
ところで、テレビはもっとアップにする。
つまり、よりタレント頼みのアップということになる。
日本で台本軽視なのは、
タレントに重きがおかれ過ぎているからかもね。
もしあなたがカット割りが出来るのなら、
自分の台本をカット割りしてみよう。
そのときのアップは、
あなたが思うより、目力が効くよ。
2015年12月25日
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