そのようなスタンスに立って、
アイデアを出していくべきだ。
偉大なる漫画家たちの長期連載を見れば答えは明らかだ。
あなたがそれを凌駕する、
すなわち思いつきで展開させて、
見事に美しく風呂敷を畳める保証なんて、
どこにもないのだ。
僕は漫画家の長期連載のグダグダについては、
とてもよく知っている。
ドラゴンボールを出すまでもないか。
浦沢直樹なんて、前半神後半グダグダの典型だ。
で、連載小説でもそれがあるらしい。
僕が読んだのは幻魔の正編だけだが、
未完のグインやら妖星伝やら、色々あるそうだ。
凡そ人間のやることは、大体似ているらしい。
映画シナリオというものは、
連載ではない。
最初から二時間程度で完結することを前提に、
セットアップ、デベロップメント、ソリューションが構成される。
途中で脱線して元に戻らずに時間切れで未完、
なんて許されない。
(エヴァは許されたのか?
世代ではないので、新劇を追いかける気力がない。
ここで物凄い予測を言ってみるが、
新劇を追い続けている信者たちは、
綾波やアスカで抜いたことがある人ではないだろうか?
昔の女と、ちゃんと清算したいという思いが幻を追いかけさせているのではないか?)
前ふったことは回収しなければならないし、
回収しないものは前ふってはいけない。
使うものだけを弁当に広げ、
きれいに平らげなければならない。
よくよく考えてみれば、
そんな綺麗なの一発で書けるわけないのである。
映画シナリオは、リライトが前提である。
多分漫画や小説より、リライトする。
それは二時間程度で完結するからには、
徹底的に無駄を削ぎ、盛るところは盛る、
美しい形に整形するためである。
第一稿は大抵10%も最終稿に残ればいいくらいだ。
それぐらい全部に手を入れ、
最終稿に整形していく。
(ちなみに僕には40稿まで書いた脚本もある)
一度稿ごとに色を変えて、
全部の文字がどう積層しているか視覚化してみたいのだが、
一度執筆から離れると、なかなか思い出せなくてそれをやらなくなる。
人間の思いつきは、バラバラで、整合性がない。
だからこそ革命的なアイデアが生まれるのであるが。
脚本は、それらのバラバラなものを、
ひとつの整合性に基づいて整形することをいう。
継ぎ足しで、グダグダなアイデアを、
使えるものを拾い、不要なものを捨て、
首尾一貫した展開になるように、
上手く整列させることである。
その展開がいまいちなら、
良くなるまで練ることである。
あなたが脚本がうまく書けないとしたら、
自分のアイデアや思いつきが、
あまりにも場当たりで、バラバラで、グダグダで、
継ぎ足し的で、本筋から逃げがちである、
ということに、自覚的であるべきだ。
あなたが才能がないからそうなのではなく、
みんなそうなのだと、自覚するべきである。
その意味で、才能がないというのは、
その場でひとつも出てこないやつ、ということになる。
面白い面白くないはおいといてもひとつも出ないやつは、
才能がないと考えるべきだ。
とにかくアイデアを出すのだ。
頭を捻り、涙と鼻血を出しながら。
あとは冷静に、ハサミで切り、タモで拾い、
ホワイトボードに使えそうなやつを並べ立て、
ひとつの整合性に整形して行けばよいだけである。
ベテランほど、そこに時間をかけてなかなか書き出さない。
それは書くのが体力がいるからだ。
ちなみに僕は今、てんぐ探偵より前に書いた処女長編小説(未発表)を、
発表出来る形になるように、
前の稿を見ずに白紙から書き始めている。
これはキツイ。キツイけど、鍛練と思ってやっている。
小説に関しては僕は初心者だし、
結局脚本だってそうやって書いたほうが、
きちんと整合性がとれた稿になることを知っているからである。
大体11万字くらいなので、脚本の48000字なんて、楽なもんだよ。
継ぎ足しで書くと、完結しないものなら、
いかようにでもなる。
しかし完結する前提なら、そのやり方ではいつか破綻する。
(大抵の連載は、破綻より前に詰まらなくなって自然死する)
ラストまで作ってから書け、
と、殆どの入門書は警告する。
しかし、長編を最後まで書いたことないやつが、
どの程度の粒度で事前に作っておくべきなんか、
分かるわけがない。
ということで僕は5分を準備なしでいいから何本も書いて、
車巾感覚を養成せよと言っている。
30分は5分の6本ぶん、と体で予測できるからである。
何度か最後まで30分が書ければ、
2時間を書くために、
どの程度アイデアが整形されていればよいか、
予想がつくというものだ。
初心者は、アイデアが足りないか、多すぎるのである。
沢山出して整形する準備段階でどれだけ練られたかで、
脚本は決まる。
足りないアイデアでゴーすればスカスカになるし、
多すぎるアイデアでゴーすれば長すぎて疲れるホンになる。
小説ならば枚数制限はないのだが、
映画は二時間程度で終わる物語限定なのである。
それに最適なアイデアの整形こそが、
実は一番難しく、腕のいるところなのだ。
継ぎ足して継ぎ足して、色々アイデアを出すのは、
執筆前にはとても良いことだ。
その後の整形さえ経れば使えるからである。
あなたが書けないと言っているのは、
執筆途中で止まってしまったやつじゃないだろうか?
もうそうなったら二種類しかない。
継ぎ足したアイデアで延命し、結局未完に終わるか、
全部白紙に戻し、もう一度全体構造を見て、
足りないところや余計な所を整形して、
一からラストまで書くことである。
48000字なんて、一ヶ月もあれば書けるよ。
早い人なら一週間。
それまでのアイデアが、本当にきちんと出来てればね。
(小説や漫画の映画化がなぜ成功しないのか?
という理由のひとつがこれだ。
執筆前に、原作のアイデアを、二時間用に上手く整形しきれていないのである。
執筆前にその打ち合わせを綿密にせず、
とりあえず書いてみてと脚本を書かせ、
ああでもないこうでもないと、それから直し始めるから、
脚本家は疲弊し、結果グダグダになるのだ。
執筆は一回に限った方が、疲弊がないのであるが、
殆どのプロジェクトは複数人で進めるため、
アイデアの共有が、アイデアの整形レベルではなく、
脚本形式になってしまうのだ。
アイデア状態ならいくらでも出せて楽なのだが、
何故か形になっていないと皆不安がり、
定着した形式でしか判断できない。
もっとも、定着した形式をきちんと読み取れない素人が増えたけどね)
2015年12月25日
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