2016年01月05日

物語は一次元であり二次元ではない

前記事の続き。
以外と大事なところに入ったので、追加しておく。


グラフィック(ポスターや雑誌のメディア)的な企画のひとつに、
「全部並べる」というやり方がある。
最近だと、
軍隊(サバゲー?)の手信号を、
○○のサインみたいに読み替えるやつが流行ったかな。

大人たばこ講座とかも、
マナーの小ネタを並べる、というやり方である。

これは二次元の方法論だ。

セックスを示すのに、四十八手を並べる、というやり方だ。


後輩が、グラフィックの企画をムービーに撮る、
というショートフィルムを作っていた。
石鹸のCMで、
手のアップだけを延々とうつし、
ハンドサイン(お願いとか、オーケーとか、キツネとか)
をしながら洗う、
というのを並べる企画だった。

これは、グラフィックポスターになると中々醍醐味がある。
7かける7の49マスをそれらで埋め、
真ん中の1マスだけ商品を入れれば、
中々のデザインになるだろう。

グラフィック広告でよくあるのは、
寿司屋のネタの板のビジュアルで、
そこに商品特徴を並べる、というやつがある。

「何かを何か風に全部並べる」というのは、
グラフィック的なデザイン企画の定石である。


ところが。

この二次元は、ムービーにならない。

やってみよう。

ハンドサイン。
1. 手を洗っていると…「お願い」になる。
2. 手を洗っていると…「小指たて(女)」になる。
3. 手を洗っていると…「キツネ」になる。

さあ、もう三つ目で飽きてしまった。
何故か?

展開しないからである。

二次元で並べて面白いものを、
一次元に並べても面白くないのである。

一次元とは、「連関」だ。
1と2には連関がなければならず、
2と3には連関がなければならない。

あるいは、1と2は無関係で、3が1と2両方連関している、
というパターンもある。
「1とかけまして2と解きます。その心は3」
という謎かけは、江戸時代からある芸能である。
あるいは、1に起承を、2に転を、3に結を持ってくれば、
面白い4コマ漫画の作り方と殆ど同じである。


せめて、
ハンドサイン。
1. お願い。
2. 断る。
3. 一生のお願い。
4. オーケー。
5. セックス。
みたいに、連関しなければならないのである。
(これが面白いかどうかはおいといてね)

つまり、このグラフィック企画をムービーにするには、
一編のストーリーになるように、
注意深くハンドサインを抽出し、
起承転結を作らない限り、
面白くもなんともないのである。
(その後輩には、これらを説明して、
こういう解がハンドサインにはなさそうだから、
このショートフィルムは失敗するよと断言しておいた)



このブログを読んでいる諸君は、
スプレッドを思い出すだろう。
カードを相手に広げて見せる様が語源だ。
あるアイデアを中心に、
そのバリエーションを見せることをスプレッド展開という。
何故これが面白くないか、
何故これをついつい考えてしまうわりには面白くないか、
の答えが、上の議論である。

一言にまとめるならば、
物語は一次元であり、二次元ではない。


あるアイデアを元に、広げられ並べられたもの(二次元)は、
ひとつと他のひとつの連関があるわけではないので、
一次元の連関(一連)にならない。
従って、二次元で面白いものが、
一次元で面白いとは限らない。
限らないどころか、かなりの確率で別物だ。

(逆はどうだろう。一次元のものを二次元に並べることは?
一次元が沢山並んでいるだけで、二次元のものにはならないだろう)


つまり、逆にいうと、
二次元は、並べる順番が関係なく、
互いの連関が切れたものを、
自由に並べることができる。
この性質を一覧性と言ったりする。

新聞や雑誌などの紙媒体が優れているのは、
この一覧性(カタログ)である。
ケータイでニュースを見ていると、
どうしても重み付けがされていて、
一覧性のあるニュースにならなくて、
イライラするときがある。
ニュースは意図的に並べてはならず、バラバラに置くべきだ。
新聞を読まない世代は、このジャーナリズムを学ばない可能性が高く、
僕はちょっと心配している。
点しか知らない馬鹿が増え、バラバラの点と点を自分で線にする力が衰えたと思う。


さて。

物語の一次元と、
カタログの二次元は違うのだ。

物語は二次元ではない。
二次元の発想は物語にならない。
posted by おおおかとしひこ at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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