2016年01月05日

性格設定という陳腐さ

初心者の頃にありがちな、
人物の性格設定というものをつくることに、
基本僕は全否定だ。

人物の性格は、物語そのものへの寄与は少ない。
それよりも立場や境遇の方が自然な発想になるし、
何より形容詞から具体を産み出すことは難しいし
(「優しい男」という設定から、
この男は優しいなあ、と思えるすぐれたエピソードを書きたまえ。
それがスムーズに出来ないなら、形容詞の性格設定は無意味だ)、
物語そのものへの寄与は、
その人物の目的と行動だからである。

さて、ネットで拾った面白い例。


好きな女性のタイプ(2016年度版)というタイトル。

まず「年度版」で4月以降のことを指す、
ということすら分かってない阿呆の書くものだが、面白いので晒す。
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人間の内面に関する観察力や考察力、
人間とはどのような生き物であるかについて、考えが足りないとこうなる。
所詮、素人のつくる性格設定なんてこのレベルでしかないのだ。

「俺に依存している恋愛脳」と、「家庭的で常識人」は矛盾する。
この時点で二面性のある人格のはずだ。

ツンデレというか、
恋人に見せる面と、対社会に見せる面が違うからである。
家庭的で常識人ならば、対恋人にはそのように接するからである。

ということは、この女は二面性のある嘘つきか、
気分によって性格の変わる気まぐれである。
ということは浮気性で軽いはずである。
戒律でもない限り、一人に依存する事はない。
依存しているのは、嘘か、その時は本気でそう思うが次は別の事を本気で思う。


さて、それ以降も矛盾だらけだ。
「外で俺を立ててくれる」と「甘えただがしっかり者」は矛盾する。
両方出来るのは、三歩下がる事に利益があるときだけで、
つまりは功利主義だということである。
そのような人間の「甘えた」は、計算高くつくられたものになる筈だ。

「女友達が多く男友達が少ない」は、経験が少ないことへの願望だが、
リアルにこういう人は夢見がちすぎている為、リアルな男を見ると引くか、
耳年増すぎて色々な要求をしてくるバカかのどちらかである。


要するに、御都合主義だ。

その人の中の矛盾や首尾一貫性に気を配らず、
自分から見た願望を集成するから、
このような矛盾だらけになるのだ。

これを全て備えたひとつの人格を作り上げてみるとよい。
それはもはや精神分裂していなければうまく機能しないであろう。
何人ぶんかの人格があり、都合に応じて交代しないとうまく機能しないであろう。

つまり、御都合主義の性格設定なんてそんなものである。


このツイートは創作を目指す人のものではなく、
単なる素人の「俺の理想の嫁」にしか過ぎないから、
アホかと笑っていられる。

ところが、この鏡は、物語創作の初心者をも写し出すのである。

俺の理想の(都合のいい)性格設定であるか、
リアリティーのある、物語を生み出す性格設定であるか、
初心者がどうやって判別せよと言うのだろう。


だから初心者には性格設定はすすめない。
目的と立場と年齢だけあればいい。
(名前すらAとかBとかでいい)

そうしないと、ストーリーを書けずに、
キャラクターに飲まれて終わるだろう。



まずはストーリーをつくりあげること。

人物の性格なんて、ふりかけレベルでよい。
別の性格だから行動そのものも変わるか?
やり方が違うだけで、行動内容は大きくは同じはずだよ。
posted by おおおかとしひこ at 16:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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