2016年01月07日

映画における、モチーフ、コンセプト、テーマの違い

詳細は過去記事にあるので検索してもらうとして。
簡単に書いてみると、

モチーフはポスターや売り文句で売れるもの、
コンセプトは予告編で売れるもの、
テーマは最後まで見てはじめて伝わるもの。

と言えるかもね。


モチーフは、
描かれるものやことの、ビジュアル的な売りになるものだ。
ロボットバトルとか、女子高生と魔法とか、
異世界の世界観とか、ボクシングとか、第二次大戦とか、
動物と少年とか、王宮独自の人間関係とか、
カメラで撮れる物体やビジュアルのことだ。

これらは、ポスターになるし、
○○を見よ!と宣伝できるし、
○○を見たい!と欲を書き立てられる。

「タイタニック」で言えば、
「有名な海難事故/沈む豪華客船」「そこに居合わせた二人のラブストーリー」
である。


コンセプトは、お楽しみポイントだ。
予告編で使われる、二幕前半に主に集中する面白いシーンのことだ。
この映画はこうやって楽しむ、という趣向のようなものだ。

「タイタニック」で言えば、
「沈没のリアルタイム時間で、映画が描かれている」ことである。
このコンセプトが、他のタイタニック沈没ものと違うオリジナリティであり、
その為にSFXが豪華に投入される。
沈没の克明な記録の再現をするステージを用意したのだ。
さあ沈没を体感しましょう、という趣向だ。

コメディは、比較的ここがメインになるものが多い。
「心の美醜が顔の美醜に見えてしまう催眠術をかけられた、
美人好きの男が、実は180キロの女が美人に見えてしまい恋をする」
(愛しのローズマリー)
「凄腕の軍人が与えられたミッションは、
なんと赤ちゃんのお守り?」
(キャプテンウルフ)

冒険ものなら、最初の危険な冒険は大抵ここのパートである。
ロマンティックな恋愛ものなら最初のデートシーンだ。
つまり、おおよそが分かったとき、
観客がそのシーンを楽しみにして来るシーンのことだ。

コメディならオリジナリティある笑いを、
ロマンティックならオリジナリティあるロマンティックを、
冒険ならオリジナリティある冒険を、
脱獄ものならオリジナリティある脱獄を。
対決ものならオリジナリティある対決を。
マイナースポーツものなら、
ここはそのスポーツの面白さの解説のシーンがあることも多い。

この映画はどういう映画だい?
○○ものです、という答えになるものが、コンセプトだ。
他の○○ものとどう違う?と聞かれたとき、
○○がオリジナリティです、と答えられるものだ。

それはビジュアルや言葉にしにくいから、
予告編で一部を見せるのである。



テーマは、
最終的にその話が、我々にどんな意味があったか、
という問いへの答えである。
(作者の主張ではない。テーマの過去記事は深いよ)

「タイタニック」だと、
「人は一生に一度だけ、命懸けの恋をする」かな。
パニック特撮と限定空間での恋をコンセプトにし、
豪華客船沈没をモチーフにした、
タイタニックはラブロマンである。



コンセプト、モチーフ、テーマは、
日本語で使い方がきちんと決まっていない。
どれも主題と訳されることもあるし、混同されている。

「人々の笑顔がテーマです」と言ったとき、
それはモチーフであることが殆どだ。
「笑顔を描くことで、平和への希求をテーマにしています」などと言うべきところなのだが。
逆に、
「笑顔を描くことで、偽善をテーマにしています」なことも、あるはずだ。

前者が平凡で、後者は非凡である。
まあ創作の世界では後者は平凡にすぎるけど。


あくまで映画というジャンルに限って、
僕はこのように明確に使い分けている。

わりとコンセプト、モチーフ、テーマの違いで検索してくる人が多いので、
書いてみた。


あなたは、
面白いモチーフを選んでいるか?
面白いコンセプトを思いついたか?
そして、
心に刺さる、深いテーマを最後に残したか?
そのトライアングルが出来てれば、
プロのシナリオとして合格だ。

(最近そこに至らないものも増えてきたが)


※追記。なにやらこの記事、
ツイッターで引用されているみたいです。
誤解されてる方がいるようなので追記しておきます。
これはあくまで日本の(東京の?)映像業界の話です。
他のジャンルでは使われ方が違うかもです。
僕がこの記事を書いた理由は、
映像業界でも、人によっても使われ方が混同されているからです。
この記事は、脚本を書く人間にとって、書かせる人間にとって、
面白さの芯を誤解したり混同したりしないことが、目的です。
それらを一度整理しようという試みです。
(観客にとっては面白ければなんでもいいからね。
でも三つを混同しながら現場が進むと、
最後までちぐはぐになるんだよね。
○○が面白い、といったとき、
それはコンセプト、モチーフ、テーマの面白さのどれのことをいっているのか、
人によってバラバラなのだよ。
そしてそれは、○○は出来ているが△△は出来ていない、
という分析や改良に、直接関わるのだ。
シャシンの面白さ=モチーフ、
シーン、シークエンスの面白さ=コンセプト、
読後感としての面白さ=テーマ、
といってもいいかも知れない)
posted by おおおかとしひこ at 11:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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