2016年01月09日

お話を最後まで書く方法

突然初心者むけの話。

初心者に限らず、最後まで書くことは本当に難しい。
ということで、本質的に考えてみる。

話を最後まで書くには、何が必要なのか?


キャラクターではない。
設定でもない。
世界観でもない。
ビジュアルやオリジナリティーでもない。
ガジェット(小道具やマシン)でもない。
それは、あとに作ること。

それらを先に作ってしまうと、
それらより話が詰まらなくなってしまう。
それらが気に入り過ぎるからだ。
もしそれらが先に浮かんでしまったら、
それらのストックノートを沢山作りなさい。
それは最終的に大変魅力的なものになるだろうが、
今は「お話を作ること」だけに注力するために、
一端そのノートを閉じて、ストーリーを作り終えるまで開かないことだ。

キャラがストーリーを動かしたり、
設定がストーリーを動かすって?
全然違う。それは偏見による間違いである。
そう思っているから、あなたは最後まで書けないのである。

以下の方法を試してもダメだったら、
キャラにストーリーを動かさせて、
最後まで偶然書けたり書けなかったりを、永遠に繰り返すがよい。



主人公には何が必要か。
設定も名前もキャラもいらない。
ただひとつだけ決めなさい。

それは、「目的」である。

そして、もうひとつだけ決めなさい。
その「結末」をだ。

A. 目的が達成され、おしまい。
B. 目的が達成されず、おしまい。
C. 当初の目的は達成されなかったが、ひょんなことから、
これが本当の目的だったのだ、とわかることを果たして、おしまい。
D: 当初の目的は達成されなかったが、全然別の目的を見つけて、果たして、おしまい。

Aは理想的なハッピーエンド、
Bはバッドエンドだ。
ここまで分かりやすいものはあんまりないが、
短編ならあるかもね。
(世にも奇妙な物語は、バッドエンドの見本市である)

Cが、実は最もポピュラーな結末だ。

ロッキーという物語は、
ロッキーの当初の目的(世界チャンピオンになること)は果たされず、
その代わり、試合に負けても勝負に勝つことで、
俺は何者かを示せたこと(こっちのほうが本当の目的だったのだ)で、
おしまいになる物語だ。

現実を相手にすると、なかなか目的をストレートに実現出来ないと気づくものだ。
現実は、Dのような、妥協エンドが多い。
ところが、これを、本当の目的とはこうだったのだ、
と分かって終わることで、物語は深くなるのである。


まあ初心者のうちは、難しいことを考えないことだ。
シンプルに、AかBを目指せばいい。


そして、一番初心者にありがちなのが、
自分には書けないスケールの目的を設定することだ。
たとえば「世界征服」のような。

最後まで書ければ面白くなるだろうが、
壮大すぎて多分挫折する。
それは、世界征服に至るプロセスを、
詳細にかつ無理のないように書けなければ意味がないからだ。

あなたが書けそうな、目的と結末と、そこに至るプロセスを想像しよう。
その枠内で、マックス面白くすればいい。

たとえば、目的を「電車に間に合う」にして、
結末を「電車に間に合った」にするといい。

これで原稿用紙5枚ぐらいのショートなら、書けそうだろ?


これぐらいなら、すぐにバリエーションは思いつく。
結末を「電車に間に合わなかった」にする、などだ。
あるいはCのパターンを持ってきて、
「電車には間に合わなかったが、
一本あとの電車で可愛い子と出会えた」という結末にしても構わない。
そうすれば、当初の目的を、その電車に乗れば会える可愛い子に会う、
ということにしておいて、真の恋はもう一本あとだった、
という結末にしてしまえばよいだろう。


このように、
最後まで書けそうな、身近で短い話からはじめるといい。
目的は、完結の経験を積むこと。
僕が5分シナリオを勧めるのは、そういう理由がある。

さて、
目的と結末を定めたら、プロセスを考えよう。
ここはとても自由だ。
そろそろ世界観を考えたり、キャラクターを考えていいぞ。
ストックノートから持ってきてもいい。

電車に間に合うストーリーだって、
どこか感じのいい地方の、冬のホームに舞台を設定してもいいし、
近未来のリニアモーターカーだっていい。
異世界の電車でも、西部劇の大陸横断鉄道だっていい。
自由だ。

先に世界観を決めてしまうと、こういう自由度が失われる。
「電車に急ぎ、間に合う」というストーリーを決めたのだから、
それさえ守れば何をやったっていい。

世界観を決めればネタを作れるだろう。
冬のホームの缶コーヒーの自販機、
異世界の異生物を踏んで転ぶ、
インディアンの襲撃、などなどだ。

長さを想像しよう。
ここでは5分程度で考えるため、
プロセスは何段階もいらない。
(長い物語は、このプロセスの段階が多いだけだ)
たとえば、1→2→3と進むような、
三段階のプロセスを考えたとする。
1踏切をすっ飛ばす、2車掌の制止を振り切る、3ドアに片足突っ込む、
などだ。
これらを面白おかしく書けばいい。

さて、ここまで出来ると、ストーリーを分割出来る。
1 電車に間に合う目的で、踏切をすっ飛ばす結末のストーリー、
2 電車に間に合う目的で、車掌の制止を振り切るストーリー、
3 電車に間に合う目的で、ドアに片足突っ込むストーリー、
4 結末

1、2、3が、また目的と結末の構造になっているね。
あとは、ここをまたプロセスで埋めていけばいい。
(多分この短さなら、スタートして踏切をすっ飛ばすまでは、
勢いで書けちゃうだろうけど)


つまり、ストーリーを書くという行為は、
目的と結末を先に決め、
その間のプロセスを面白おかしく書くことだ。
一発で書けそうにない長さなら、
分割して書けばいいだけだ。
(その分割の仕方が色々あって、
三幕構造とか、序破急とか、起承転結とか、ハコガキとかある)

あなたが学ぶべきことは、
自分に書ける小分割がどの程度か、を知ることなのだ。

人によっては1分ぐらいかも知れないし、
剛の者なら30分もいるだろうね。
速筆の西尾維新は、2時間で5000字(12.5枚)を1日4セットらしいけど。
書けば書くほど伸びる人もいるし、
そうじゃない人もいるだろう。


お話を最後まで書くには、
目的と結末が決まっていること、
そのプロセスが、
書ける単位の小ブロックに分割されていることが必要だ。

もし挫折してしまうのなら、
目的を決めていないか、
結末を決めていないか、
自分が書けない規模のブロックに挑んでいるのである。

目的と結末を決め、
書ける大きさに小ブロックに分割する
(たとえばブロック1が書けてブロック2が書けないなら、
ブロック2-1、2-2などに分割する)ことをオススメする。

プロセスのネタの為に、ネタ帳をつくり、
そのたびに持ってくるのはとても良い手だ。



目的のことを焦点、
ブロックの尻がターニングポイント、
と呼ばれるものなのだが、
今はまだ知らなくていい。
自分の書ける範囲を学ぶことがとても大事だ。

範囲を広げたり、目的を大きく(プロセスを複雑に)していけば、
成長が見込めるだろう。


余談。
「電車に間に合う」だけで長編が作れるかって?
「3時10分、決断のとき」「スカーフェイス」「スラムドッグミリオネア」
などは全部そういう話だよ。
posted by おおおかとしひこ at 16:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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