突然初心者むけの話。
初心者に限らず、最後まで書くことは本当に難しい。
ということで、本質的に考えてみる。
話を最後まで書くには、何が必要なのか?
キャラクターではない。
設定でもない。
世界観でもない。
ビジュアルやオリジナリティーでもない。
ガジェット(小道具やマシン)でもない。
それは、あとに作ること。
それらを先に作ってしまうと、
それらより話が詰まらなくなってしまう。
それらが気に入り過ぎるからだ。
もしそれらが先に浮かんでしまったら、
それらのストックノートを沢山作りなさい。
それは最終的に大変魅力的なものになるだろうが、
今は「お話を作ること」だけに注力するために、
一端そのノートを閉じて、ストーリーを作り終えるまで開かないことだ。
キャラがストーリーを動かしたり、
設定がストーリーを動かすって?
全然違う。それは偏見による間違いである。
そう思っているから、あなたは最後まで書けないのである。
以下の方法を試してもダメだったら、
キャラにストーリーを動かさせて、
最後まで偶然書けたり書けなかったりを、永遠に繰り返すがよい。
主人公には何が必要か。
設定も名前もキャラもいらない。
ただひとつだけ決めなさい。
それは、「目的」である。
そして、もうひとつだけ決めなさい。
その「結末」をだ。
A. 目的が達成され、おしまい。
B. 目的が達成されず、おしまい。
C. 当初の目的は達成されなかったが、ひょんなことから、
これが本当の目的だったのだ、とわかることを果たして、おしまい。
D: 当初の目的は達成されなかったが、全然別の目的を見つけて、果たして、おしまい。
Aは理想的なハッピーエンド、
Bはバッドエンドだ。
ここまで分かりやすいものはあんまりないが、
短編ならあるかもね。
(世にも奇妙な物語は、バッドエンドの見本市である)
Cが、実は最もポピュラーな結末だ。
ロッキーという物語は、
ロッキーの当初の目的(世界チャンピオンになること)は果たされず、
その代わり、試合に負けても勝負に勝つことで、
俺は何者かを示せたこと(こっちのほうが本当の目的だったのだ)で、
おしまいになる物語だ。
現実を相手にすると、なかなか目的をストレートに実現出来ないと気づくものだ。
現実は、Dのような、妥協エンドが多い。
ところが、これを、本当の目的とはこうだったのだ、
と分かって終わることで、物語は深くなるのである。
まあ初心者のうちは、難しいことを考えないことだ。
シンプルに、AかBを目指せばいい。
そして、一番初心者にありがちなのが、
自分には書けないスケールの目的を設定することだ。
たとえば「世界征服」のような。
最後まで書ければ面白くなるだろうが、
壮大すぎて多分挫折する。
それは、世界征服に至るプロセスを、
詳細にかつ無理のないように書けなければ意味がないからだ。
あなたが書けそうな、目的と結末と、そこに至るプロセスを想像しよう。
その枠内で、マックス面白くすればいい。
たとえば、目的を「電車に間に合う」にして、
結末を「電車に間に合った」にするといい。
これで原稿用紙5枚ぐらいのショートなら、書けそうだろ?
これぐらいなら、すぐにバリエーションは思いつく。
結末を「電車に間に合わなかった」にする、などだ。
あるいはCのパターンを持ってきて、
「電車には間に合わなかったが、
一本あとの電車で可愛い子と出会えた」という結末にしても構わない。
そうすれば、当初の目的を、その電車に乗れば会える可愛い子に会う、
ということにしておいて、真の恋はもう一本あとだった、
という結末にしてしまえばよいだろう。
このように、
最後まで書けそうな、身近で短い話からはじめるといい。
目的は、完結の経験を積むこと。
僕が5分シナリオを勧めるのは、そういう理由がある。
さて、
目的と結末を定めたら、プロセスを考えよう。
ここはとても自由だ。
そろそろ世界観を考えたり、キャラクターを考えていいぞ。
ストックノートから持ってきてもいい。
電車に間に合うストーリーだって、
どこか感じのいい地方の、冬のホームに舞台を設定してもいいし、
近未来のリニアモーターカーだっていい。
異世界の電車でも、西部劇の大陸横断鉄道だっていい。
自由だ。
先に世界観を決めてしまうと、こういう自由度が失われる。
「電車に急ぎ、間に合う」というストーリーを決めたのだから、
それさえ守れば何をやったっていい。
世界観を決めればネタを作れるだろう。
冬のホームの缶コーヒーの自販機、
異世界の異生物を踏んで転ぶ、
インディアンの襲撃、などなどだ。
長さを想像しよう。
ここでは5分程度で考えるため、
プロセスは何段階もいらない。
(長い物語は、このプロセスの段階が多いだけだ)
たとえば、1→2→3と進むような、
三段階のプロセスを考えたとする。
1踏切をすっ飛ばす、2車掌の制止を振り切る、3ドアに片足突っ込む、
などだ。
これらを面白おかしく書けばいい。
さて、ここまで出来ると、ストーリーを分割出来る。
1 電車に間に合う目的で、踏切をすっ飛ばす結末のストーリー、
2 電車に間に合う目的で、車掌の制止を振り切るストーリー、
3 電車に間に合う目的で、ドアに片足突っ込むストーリー、
4 結末
1、2、3が、また目的と結末の構造になっているね。
あとは、ここをまたプロセスで埋めていけばいい。
(多分この短さなら、スタートして踏切をすっ飛ばすまでは、
勢いで書けちゃうだろうけど)
つまり、ストーリーを書くという行為は、
目的と結末を先に決め、
その間のプロセスを面白おかしく書くことだ。
一発で書けそうにない長さなら、
分割して書けばいいだけだ。
(その分割の仕方が色々あって、
三幕構造とか、序破急とか、起承転結とか、ハコガキとかある)
あなたが学ぶべきことは、
自分に書ける小分割がどの程度か、を知ることなのだ。
人によっては1分ぐらいかも知れないし、
剛の者なら30分もいるだろうね。
速筆の西尾維新は、2時間で5000字(12.5枚)を1日4セットらしいけど。
書けば書くほど伸びる人もいるし、
そうじゃない人もいるだろう。
お話を最後まで書くには、
目的と結末が決まっていること、
そのプロセスが、
書ける単位の小ブロックに分割されていることが必要だ。
もし挫折してしまうのなら、
目的を決めていないか、
結末を決めていないか、
自分が書けない規模のブロックに挑んでいるのである。
目的と結末を決め、
書ける大きさに小ブロックに分割する
(たとえばブロック1が書けてブロック2が書けないなら、
ブロック2-1、2-2などに分割する)ことをオススメする。
プロセスのネタの為に、ネタ帳をつくり、
そのたびに持ってくるのはとても良い手だ。
目的のことを焦点、
ブロックの尻がターニングポイント、
と呼ばれるものなのだが、
今はまだ知らなくていい。
自分の書ける範囲を学ぶことがとても大事だ。
範囲を広げたり、目的を大きく(プロセスを複雑に)していけば、
成長が見込めるだろう。
余談。
「電車に間に合う」だけで長編が作れるかって?
「3時10分、決断のとき」「スカーフェイス」「スラムドッグミリオネア」
などは全部そういう話だよ。
2016年01月09日
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